昔から冒険に憧れていた。息が詰まる様なコンクリートジャングルにとらわれないで大海の中を自由気ままに動き見たことのない美しいものを見に行くのだ。
そう思って今僕たちはここに居る。サファイアの様な美しい海を渡るのは艶々と輝く黒漆の海賊船。
燦々と輝く太陽の下で僕たちは一日だけの冒険をした。小学校6年生の夏休み前日、重たい荷物を背負いながら気を紛らわすため親友である彼(ここでは彼と呼ぶが名前はちゃんとある)と話していた。朝ごはんはパン派かご飯派かやたけのこの里とキノコの里どっちがいいかなどのくだらない話題で馬鹿笑いしていた。
話のネタも無くなって石蹴りをしていると黒いボロボロのローブをきた怪しげな婆さんに当たってしまった。最初はその浮ついた雰囲気に唖然としてしまったがすぐに謝ると老婆はキヒヒと笑うと小さな船のストラップを渡してから「これは海賊になることができる魔法の船です。でも夕日が沈む頃に沈んでしまいます。使い方は簡単。水に浮かせるだけです。ああ、お金は入りません。それでは」と早口で怪しげな雰囲気を醸し出しながらフッと幻影の様に消えてしまった。
そして今に至るわけだ。船の中にはご丁寧に宝の地図がありそこに今向かっているわけだ。そろそろ島が見えてくる時に、大砲の音が聞こえた。その方向を向くとそこには僕らと同じような船。つまり海賊船があった。船長はジョン・シルバーと名乗った。
船を奪うという彼はマスケット銃とレイピアを取り出した。僕は衣装にあったカトラスと拳銃を持って戦った。どうしてだろう。カトラスも拳銃も握ったことのないのに導かれる様に使うことができる。レイピアが来るところを弾く。好きができたところに
ーーーーーーーーーーー『閃』ーーーーーーーーーー
ジョン・シルバーは斃れた。殺しても何も情は湧かなかった。このコートのおかげかも知れない。或いはここが幻だからかも知れない。けどとにかく島にたどり着いて僕らは宝を手に入れた。一つのコインをポケットに仕舞い込んで宝箱を開けると眩い光が溢れて海岸に帰ってきた。夕日が沈んだ。すると船と宝島はアトランティスのように海底に沈んでいった。
このことは幻ではない。そう確信できるのはあの日ポケットに入れたコインだった。
お題沈む夕日
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
4/8/2024, 9:44:57 AM