私は散りゆく花弁の一片。ちょっとした風が吹けば地面に叩きつけられてしまうような不安定な存在。
でも風に乗るからこそ美しく見える。
だから私はいつも風に乗ってしまう。そう周りの考えという木枯らしに。誰かに反抗するなんて何年ぶりだろう。そう思いながら殴って気絶してしまった上司に目をやってみる。この上司は別に殴ってしまっていいだろう。裏社会の人間だしあまり慕われたし知名度があるわけでも無いから。私は堅気ではなく裏社会での仕事を生業としている。昔から刀の稽古をつけられて忍刀で相手の首をスパッとやるのが私の仕事だ。
だからなのか幼いときはやたらと殴られて体に主従関係を刻み込まされた。だから私は基本的に雇い主及び上司に絶対服従である。だがしかし何事にも例外があるものだ。こんな上司なんて上司と認識していない。
ろくに仕事もしないし誰かにも慕われてないのに何かと人に文句を言ってくる小煩い輩だった。
今日だって雇い主の事を馬鹿に来たので少し身の丈を教えてやっただけなのだ。そう、決して私の私情などではない。あの上司のたるみきった腹まるでお餅のようだな。お餅か…。家に帰るついでに買うか。そう思うほど私は和菓子が好きだ。特に大福。いつも仕事着に携帯している。だから時間感覚が狂ってしまう裏社会にいても季節だけは細かく分かる。
桜餅が昨日売られていたということは先週から春が始まったということだ。
春といえば春の定義って花が咲いて暖かいことだろう?だから私はいつも血の華を咲かせて返り血で暖かいから年中春ということだなという鉄板ジョークがある。勿論この社会でも受けるどころかドン引きされているのが全部だ。
春という恋愛のシーズンでもあるこの時期を血に染めてしまうのはとても心苦しいのだが止めることはできない。桜の花は春爛漫。血の華も春爛漫である。
お題春爛漫
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
4/10/2024, 2:50:29 PM