「私とあなたじゃ住む世界が違う 第二十五話」
次の日、志那は道場に居ました。
「スカイさん、昨日言ってた技を教えて下さい!」
「本当に約束通り来るなんて、エラいね。じゃあ、メタルセンスショットから行くね」
スカイはそう言うと、メタルセンスショットを実演しました。
「メタルショットを扇状に放つだけだから、簡単だと思うよ?」
「扇状…やってみます」
志那は、メタルショットを扇状に放ちました。
「こんな感じですか?」
「この調子!筋は良いと思うよ」
「もう一度!」
志那は、メタルショットを扇状に放つと、メタルセンスショットが完成しました。
「やった!完成ですか?」
「完成で良いかな?おめでとう!」
「次は、鋼吹雪を教えて下さい」
「良いよ。ちょっと難しいから、よく見ててね」
スカイは、鋼吹雪を実演しました。金属片が発生して、標的目掛けて突き刺して行きました。
「す…スゴイですね。私に出来るかな…?」
「この技、金属片を出現させる工程があるから、ちょっと鍛錬が必要かな?」
「やってみます…」
志那は、鋼吹雪をやろうとしましたが、金属片が上手く出現させる事が出来ません。
「あれ…?おかしいな…」
「志那ちゃん、何事も練習あるのみ」
「もう一回!」
志那が鋼吹雪の練習をしていると、敷地の外から大勢の子供の声が聞こえて来ました。
「ココ、有名な漫画の道場じゃね?」
「それっぽい、それっぽい!」
「さっさとお題クリアしようぜ!」
「行こうぜ!」
「入ろう!」
子供達はゲームプレイヤーらしく、パズルの拠点の道場を有名な漫画の建物だと勘違いして、入って行きました。
「おじゃましまーす!」
「だ、ダメだよ!勝手に入っちゃ!」
志那は、子供達を止めようとしました。
「有名な漫画だよな?ココ」
「物を壊しまくっても、勝手に直るから好き勝手やっても良いんじゃね?」
「じゃ、やりますか!」
子供達は、道場で暴れ始めました。
「皆、物壊しちゃダメでしょ!」
志那は、子供達を止めようとしましたが、子供達は物凄い人数なので止める事が出来ません。
「みんな、そんなに暴れられると困るんだけどな…」
スカイは、いつもの如く温和で平和的に子供達を止めようとしましたが、子供達は言う事を聞きません。
「このお姉さん、主人公の妹じゃね?」
「オレ、主人公の妹大好き!」
「襲っちまおうぜ!」
子供の何人かは、志那に襲い掛かろうとしました。
「キャッ、やめて!」
志那は、子供達に抱きつかれて動けなくなってしまいました。それを見たスカイは、別人の表情をしていました。
「止めろ、ガキ共」
堪忍袋の尾が切れて、表情を変えたスカイは、凄惨な気を漂わせていました。
スカイは、
「ワイドトルネード」
と、大技を繰り出すと、子供達は全員、空中に浮き上がりました。
「うわっ、何だよ?!」
子供達は、そのまま現実世界に飛ばされました。
「た、助かった…」
志那は、スカイの方を見ると、
「志那ちゃん、大丈夫だった?」
と、いつものスカイに戻っていました。
「安心して?子供達は皆、元の世界に返したからね」
「(スカイさんって、二重人格か何かかな…?)」
志那は、スカイの一面を見て、状況が飲み込めずに目が点になっていました。
「(ココ、ストリート系が住む所だから、いつも見てるスカイさんだけの人格じゃ暮らせないよね…何か納得)」
「志那ちゃん、練習再開!」
「あ!すみません」
志那は、練習を再開しました。
「私とあなたじゃ住む世界が違う 第二十四話」
「じゃあ、志那ちゃん。武器を使った事が無いって事は…」
「一度も戦った事がありません」
「あ…どうしよう」
志那とスカイは、黙ってしまいました。
「武器の使い方から、教えてもらえないでしょうか…?」
「初歩の初歩からね」
スカイは、志那に武器の使い方を教える事にしました。
「志那ちゃん、まずは武器を持ってみて?」
「武器を持つ…ですか?」
志那は、メイデンソードを持ちました。
「武器は…持てるみたいだね。次は、藁の標的を切ってみて?」
「やってみます!」
志那は、藁を切ろうとしましたが、立体映像みたいにすり抜けて、斬る事は出来ません。
「あれ…?切れない…」
「集中力が足りないかな?もう少し、思いを込めるように武器に力を込めて見て?」
「もう一回!」
志那は、思いを込めるように武器に集中して切ってみると、藁に切り傷が付きました。
「やった!」
「間合い斬り出来るようにもっと!」
志那は、何回も繰り返すうちに、ようやく藁の標的を半分に斬る事が出来ました。
「出来た!」
「よく出来たね!この調子」
「コレで、他の物も斬れるのかな…?」
志那は、竹の棒を切ってみました。
「えいっ!」
竹は横に真っ二つに切れました。
「藁よりは硬かったけど…竹でも切れた!」
「武器の使い方はこの辺で良いかな?次は、技を教えるね」
「技?」
「その武器はメイデンソードだから鋼属性かな?僕達は基本はどんな属性の技や術でも使えるけど、武器の属性の技や術は威力が強くなるんだよ」
「じゃあ、鋼属性の技や術で戦って行けば良いんですか?」
「うーん、相性の問題もあるからね…相手が水で自分が火だったら、不利な戦いになるからね。他の属性の技や術も習得する必要があるんだよ」
「じゃあ、色々覚えないと…」
「まずは、鋼属性の技からね。僕は風属性だけど…」
スカイは、鋼属性の魔術書を持って来ました。
「皆、何で魔術書無しで教えようとしてるんだろ?まずは、簡単なメタルショットから行くね」
スカイは、メタルショットを繰り出しました。
「金属片が伸びて、突き刺す技ですね」
「志那ちゃんもやってみて」
「メタルショット!」
志那は、メタルショットを繰り出すと、スカイの見本までとは行かないけど、金属片が現れて、標的目指して伸びました。
「この調子!応用でメタルセンスショットや鋼吹雪も出来るようになるんだよ」
「メタルセンスショット?鋼吹雪?」
「メタルセンスショットは扇状にメタルショットを放つ技、鋼吹雪は金属片を相手目掛けて飛ばす技!」
「スゴい!教えて下さい!」
「まずは、メタルショットを習得しなきゃ」
志那は、何度かメタルショットを放つうちにコツを掴めて来ました。
「メタルショット!」
志那のメタルショットは、遂に標的に届きました。
「やったー!」
「志那ちゃん、おめでとう。遂にメタルショット習得だね」
「何だか、魔法を使ってるみたい…」
「あはは、僕達にしてみればいつもの事なんだけどね」
スカイが見た志那の表情は、希望に溢れたかのように輝いていました。
「何だか、新鮮な気持ちです。コレで私もカインドみたいに戦えるんだなって」
「志那ちゃん、今日覚えた技で、どんどん戦っちゃって!」
スカイは、慈悲深い感情で志那を見ていました。
「他の技も教えてくれるんですか?」
「勿論、明日も教えるよ」
「ありがとうございます!」
「今日はココまで!また明日」
「私とあなたじゃ住む世界が違う 二十三話」
「それじゃ、カインド!ヨロシクな!」
「オウ!ヨロシクお願いします!」
カインドは、ノアールの勢いに飲まれて少し緊張していました。
「カインドは、見た所闇使いっぽいけど、合ってるか?」
「そうです!見ただけで見抜くってスゴイですね…」
「まぁ、着てる服がソレっぽいからな!俺も闇使いや!」
「やっぱ、着てる服からか…」
カインドは、自分の服装を見ながら呆れていました。
「お互い、闇使い同士なら話は早い。まずは、ポルターガイストって術、知っとるか?」
「じゅ、術ですか…?!俺、技しか習得してないんスけど…」
「技や術の好き嫌いはイカンぞ?ポルターガイストはいざって時に役に立つからな!じゃ、見とけ…」
ノアールは、ポルターガイストの見本を見せました。
「闇フィールドを全体に展開させて、フィールド内の物を操って攻撃する術だな」
カインドは、術を分析しました。
「どうだ、カインドもやってみろ!」
カインドは、ポルターガイストを見様見真似でやりました。
「ポルターガイスト!」
「…うーん、筋は良いが、少し操りが足りんな」
「スノーさん、よろしくおねがいします」
「スモーク、ヨロシクな。…?スモークって何使いや?」
「えーと、僕、分かりづらいですよね…一応、霧使いかな?」
「あのな、属性の話しとんねん…」
スノーは、頭を抱えました。
「僕、石使いなんですよ」
「だったら、それ言えや!」
スノーは、ツッコミました。
「オレは氷使いだから、氷技ばっかになるかも知れんが、覚悟はエエか?」
「よろしくお願いします!」
「ほな、凝固術ならどうや?石使いのスモークでも応用は可能やろ?」
「凝固術?」
「なら、やって見せるで」
スノーは、スモークに凝固術を見せました。
「スゴイ!バケツの水が一瞬で凍った!」
「スモークは、砂か土で試してみ?」
「マゼンタさん!よろしくお願いします!」
「スプライト、勢いはエエな。コッチもヨロシクな」
マゼンタとスプライトは、握手をしました。
「スプライト、属性は何や?」
「雷使いです!」
「あ…俺は念使いやから、ちょっと、ジャンルがちゃうな。教える技や術、念物やけど付いて来てくれんか?」
「俺は、例えどんな属性の師匠でも付いて行くぜ!」
スプライトは、勢いを見せました。
「やったら、機械召喚やって見るか?召喚した機械は、自分の意のままや」
「何か、スゲー!」
「ほな、やって見るで?よう見とき」
マゼンタは、機械召喚の手本を見せました。
「おおー!カッケー!」
マゼンタとスプライトの前に、大きな機械が現れました。
「あとは、こうやって自分の思い通りに操るんや。やってみ?」
「オーシャンさん、よろしくお願いします」
「名前、ロードやったな?コッチかて、よろしくな」
二人は、お辞儀をしました。
「属性は、多分水で合ってるな?」
「その通りです。オーシャンさんも水ですね?」
「流石やな。話は早い。マリンフロア、ロードに教えたるわ」
「いきなり、そんな大技を俺に教えて大丈夫ですか?」
ロードは、戸惑いました。
「マリンフロアはそんな大技ちゃう。自分で限界を作ったら最後や。何事も挑戦が大事やで?」
ロードは、自信に満ちた目でオーシャンを見つめました。
「じゃ、マリンフロアやるから、よう見とき」
オーシャンは、マリンフロアを繰り出しました。
「…水と念の合体術だな」
ロードは、術を分析していました。
「ロード、やってみ?」
「私とあなたじゃ住む世界が違う 第二十二話」
「今日は、もう遅いから休んでてくれ。誰か、空き部屋に案内頼む」
「マゼンタ、俺がやるわ。お前ら、着いて来い」
オーシャンは、マンションの空き部屋まで案内しました。
「丁度、3部屋あるな。部屋は喧嘩せんように決めや」
「志那は僕と一緒の部屋にしよ」
「あ!ズルいぞ!志那は俺と同じ部屋だ!」
スモークとスプライトは、喧嘩を始めました。
「オイ、志那は俺のクラスメートだから、俺に権利がある」
「あ、言い忘れとったけど、女子は一人部屋な」
オーシャンは、口を挟みました。
「ちなみに、大浴場は地下一階、トイレは階段の側、食堂は二階な。ほな、おやすみ」
オーシャンは、説明が終わると階段を降りて行きました。
「みんな、どの部屋にする?私は、左の部屋が良いな」
「俺とカインドで真ん中にするか」
ロードは真ん中の部屋を見ました。
「じゃ、僕達は右の部屋だね…」
志那達は、部屋に入りました。
そして、次の日の朝、食堂にて。
「おはよー。えーと、君は…」
スカイは、志那の方を見ました。
「斎藤志那です」
「じゃあ、志那ちゃんで良い?朝ご飯出来てるから食べてね」
「あ、ありがとうございます」
志那は、朝食を食べました。
「ごちそうさま!美味しかったです!」
「良かったー!僕の料理、口に合わなかったらどうしようかと思った…」
スカイは、笑顔になりました。
「あれ?カインド達はもう起きてるんですか?」
「うん、大浴場の掃除してもらってるよ」
「え…?」
「ココで暮らす以上、調理場、大浴場、トイレの掃除や、食材調達や調理、洗濯はやらないとね。志那ちゃんは洗濯お願いね」
「は、はい」
志那は、洗濯機が置いてある部屋に行き、洗濯を始めました。
「流石に、人様の家に暮らさせてもらってるから、これくらいはやらないとね」
志那は足元を見ると、ゴキブリを見つけました。
「コレって…どこもかしこも掃除しなきゃいけないんじゃ…」
「志那ちゃーん!当番決めるよ…アレ?」
スカイは、志那を呼ぶと、
「はーい!」
志那は、洗濯部屋の掃除をしていました。
「志那ちゃん!ソコ、掃除してくれてありがとー」
スカイは、感激していました。
志那達が、マンションで暮らす様になって一週間が経過しました。
「おー、志那。今日はトイレ掃除か?」
カインドは、食材の入った袋を持っていました。
「うん、そうだけど…いつになったら、技とか術を教えてもらえるんだろう…?」
志那は、つぶやきました。
「そうだよな…単に良いように使われてるだけに見えるような…?」
「炊事、掃除、洗濯も修行のウチやで?」
スノーは、二人の背後から現れました。
「スノーさん!」
「驚かさないで下さいよ…」
「えーと、二人…名前何て言うたかな…?」
二人は、自己紹介しました。
「志那、カインド。技や術教えたるからコッチ来い」
スノーは、二人を道場に案内しました。
「うわぁ!デッカい!」
道場は学校の体育館を10棟程並べた様な大きさで、最新の設備を整えた立派な物でした。
「コレぞ、俺達の稼ぎの力やな!」
スノーは、自慢気でした。
「スノー!連れて来たよー!」
スカーレットは、スモークとスプライトを連れて来ました。
「コッチも、連れて来たよ」
スカイは、ロードを連れて来ました。
「じゃ、始めるか。ノアールはカインドを、スノーはスモークを、俺はスプライトを、ロードはオーシャンが担当や」
マゼンタは、配置を決めました。
「あの…私はどうなるんですか?」
志那はマゼンタに聞きました。
「せやな…志那は武器の使い方からやから…スカイかスカーレットが担当してくれんか?」
「あ!僕がやります」
「じゃあ、スカイに任せた。スカーレットはアメジストと一緒に雑用やっといてや」
「うん、分かった!」
スカーレットは道場を出て、残りは各々の配置に着きました。
「志那ちゃん、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくおねがいします」
「私とあなたじゃ住む世界が違う 第二十一話」
「アンタはアメジストやな?林檎は有名やからアンタ知らん奴は殆ど居らへん」
「コッチだって、パズルのメンバー位知っていますよ。貴方は、マゼンタですね?」
「お!それ位、有名になったって事か!俺らも出世したなー!」
褐色っぽいベージュの肌、黒目で黒いロングのウェーブヘア、筋肉質でロック系ストリートファッションのピアスを付けた頼れるアニキの男は、笑顔になりました。
「ノアール、今は黙っといてくれ。それと、聞きたい事がある。ココに来たの…偵察か?」
マゼンタは、アメジストに術をかけようとしました。
「止めて下さい!アメジストさんは、自分のメンバー達に攻撃されて、グループを離れる事になったんです!アメジストさんは、今は林檎王子とは関係がありません!」
志那は、とっさにマゼンタを止めました。
「今の、ホンマやろな?お嬢ちゃん…」
マゼンタが志那の方を見て、にらみつけると、
「マゼンタ、信じてあげよーよ。その女の子、悪い子には見えないよ?」
と、ベージュの肌、赤い目、赤いセミロングヘアでカチューシャで前髪を上げていて、中肉中背だけどやや筋肉質で、ストリートファッションで幼気なヤンキーの男はマゼンタを止めました。
「スカーレットが言うなら…仕方無いな」
「た、助かった…」
志那は、安堵しました。
「ん…?」
カインドは、目を覚ましました。
「…!俺達、捕まったんか?!」
「お前も、暴れへん方がエエんとちゃう?」
スノーは、カインドに武器を突き付けようとしました。
「スノーさん、マゼンタさん、カインドも私も技や術が殆ど無くて、戦う術が分からなくて困っているんです。アメジストさんのグループは、今は危険だから行けないし、ココを頼るしか選択肢が無かったんです…!お願いします、技や術を教えて下さい!」
志那は、必死になってパズルのメンバー達に頼みました。
「マゼンタ、どうする?」
スカイはマゼンタに聞きました。
「…お嬢ちゃんの話は、信用出来そうだし…良しとするか!」
マゼンタは快く承諾しました。
「…ん…あれ?何があったの?」
スモーク達も目を覚ましました。
「俺達、パズル達に技や術を教えて貰えるようになったぞ」
「カインド、マジかよ!やったじゃん!」
スプライトは、大喜びでした。
「俺が寝ている間に、こんなに話が進むなんて…」
ロードは、呆れていました。
「ねぇねぇ、住む場所どうするの?それとも、家とかあるの?」
スカーレットは、カインド達に聞きました。
「あ…俺達は旅人みたいな者だから、住む場所は無いな」
カインドは、スカーレットに申し訳無さそうに言いました。
「じゃあ、ここに住みなよ!ちょうど、マンションに空き部屋もあるし。良いでしょ、マゼンタ」
スカーレットはマゼンタの方を見ました。
「スカーレットの頼みだからな…良いよ」
「じゃあ、衣食住も保証って事で良いの?」
「スカイ、余計な口挟まんでも…」
「衣服は余計だけど、食事と住む場所は保証で良いと思う!」
「スカーレットの頼みならな…良いよ」
「マゼンタ、スカーレットに甘すぎ!」
アメジストは、全体の様子を見ていました。
「以前は、敵も同然でしたが、今は味方と言う事ですね」
「あ、アメジスト!林檎の情報、教えて貰えへんか?今は、俺達仲間やしな」
オーシャンは、アメジストに頼みました。
「今は仲間ですか…良いですよ」
アメジストは、笑顔になりました。