思えば、あまり凝らした人形遊びなど、それほどして来なかった。
そう自分自身では思う。
けれども、どうだろう?
放課後には遊び場や友人宅へ一緒に向かったり、おままごとのように食卓の一席を共にした記憶にも案外覚えがある。
そんな子供の頃のあれこれを思い返すと、自ずとあたたかな気持ちが胸の内側にじんわり蘇ってくるのが分かった。
棚の手前側に見つけたホコリをそっと拭き取る。
今日一日は散々だったが、また明日も頑張ろうと気合いを入れ直した。
こうも落ち込み凹んだままの姿を見せられないし、君に見せたくないと思えば、私は結構やる気が湧いて復活するのである。
だから、あなたも「そこ」から見守っていてね。
【君の目を見つめると】
人工的な光に邪魔されない、自然界の尊き輝き。
それが観られるというのも、田舎住まいを選んだ身からすると良いところの一つだと主張したい。
仰ぐ天の中でも一等強く視える彼……その名には「焼き焦がすもの」と言う意味もあるらしい。
分厚い図鑑や検索欄から続くスクロール上での知識ではあるが、一応予習もバッチリだ。
暗闇で置き場や諸々に手間取りながらも、慣れない重みのカメラを構え、ふうと深呼吸をする。
初めから上手く行くとは思っていない。
だからこそ、初心者向けの指南書たちを信じよう。
幼い頃から憧れていた景色を、いつか自分の手でも収めてみたかった。
生い茂る木々に囲まれつつ、障害物の少ない平原っぽい環境を調べて訪れた理由……これは誰にも秘密だ。
【星空の下で】
振り返らずに進め。
悔いも恐れも、すべてを踏み抜き、超えて征け。
成り行きで共に歩んできた旅路だが、随分と奇妙な縁や繋がりを結んでいた。
……残る未練など、すでに飲み込んである。
しかし友の気紛れに思い出す姿が、今こうやって自ら胸を張れたものとなれるのならば。
それこそが一番の報酬だろうよ。
激励を込めて送り出した背が、遠くで細い影へと変わっていく。
ひと仕事の終わりを見届け、満足感に身を任せた。
【それでいい】
テンプレートが量産され、僅かな隙間もなく敷き詰められた商品棚。
色違いだけで個性を表わす集団の中から、その日の私は思わぬ出会いを果たす。
どの角度にも光沢感など持たないシルエット。
なのにそれは、私の視線を鷲掴むような力で、確かに「キラリ」と光って見えていたのだ。
万能を切り捨て、ただ限られた機能だけを売りにする潔さ。
それ故か、日に日に好感は増し、自然と使い込む程に愛着も湧いた。
今も長年愛用する、お気に入りの逸品である。
【1つだけ】
葛藤は確かにあった。
だが迷い続けた末の「決断」を下してしまった瞬間には、いっそ奇妙な開放感すら生まれていた。
秤にかかるのは、己が護りたい“あの人”。
追い詰められていた自覚は、多分ある。
そうと分かっていても、これから先の選択を他のヤツに譲れるわけが無いのだ。
これまで自分たちの旅は、障害となった壁を容赦なく排除してきた。
道を違えた者と対話を失って、悲痛をこらえる手に武器を取り、正しき刃を向けて来る。
馬鹿な奴だと笑えよ?
こちらも負ける気は無いが、まさかこんな歪なカタチで再度手合わせするとは流石に思わなかったんだ。
だからこそ……本気で勝ちを奪いに行く。
──例え、この身が最期の刻を迎えようとも。
【大切なもの】