いざ「嘘をつく」のを求められた時。
結構どんなコトを話せば良いのか、これで相手側も傷つかせないのかと地味に困ってしまう。
地域によっては、ついて問題ないのが午前中だけ?
迷えば迷うほど頭はこんがらがっていき、まだまだパンチが足りないと変に悩まされる。
たくさんの本当の中に、ほんの少しのウソを紛れ込ませる。
そんな手慣れた秘密を明かさないようにするには。
妙に気を使うのだから、正直面倒な一日となる。
どれもこれも、全部ウソなら良かったのに。
【エイプリルフール】
まるで自分のことのようで嬉しかった。
やっと、その道を選べたんだね。
これからも大きな壁が立ち塞がるだろうけれど、あなた達なら二人で手を取り合い、歩んでいけるよ。
この喜ばしい気持ちを伝えるように、照れくさそうな笑みを浮かべる彼らには気づかれぬ位置から、横並びする二つの背へと触れてみた。
──伸ばした指も手も、どちらの体にも当たらず、すり抜ける。
これで「私」の出番は終わり。
誰にも見えない姿のまま、声も知られぬまま、そっと静かに消えられる。
頭上高くの天から、終いの鐘が鳴り響く。
私達が見届けられるのは“いつも”此処までとなる。
最後に添えよう、一番強く願い込めた言葉を。
「……それじゃあ、お元気で」
【幸せに】
ずっと、見知らぬ素振りをし続けた。
長きにわたる葛藤の末、選んでしまった“先送り”。
その長きに渡る成果と代償が、今の据わりが悪い空間だ。
あの時どうすれば良かったのか?
何度考えてみようとも、分からない。
いつしか期待も後悔も凍りつき、密やかに飲み込んだ痛みは、とうの昔に消え去っている。
もう己の心へ対してですら、偽ることに慣れきって居た。
波風立たない関係で受け流せるのなら、それでいい、と。
【何気ないふり】
「めでたし、めでたし」
そんな言葉の括りで締められている話を読むと、否が応でも一つの喪失感に襲われる。
紙の上に紡がれていた物語を見届け、文字の中に生きる人物と迎える終幕。
晴れやかな結末か、後味の悪い離別か。
こればかりは個人的な趣向ともなるが、もし後者ならば、出来うる限り避けて通れたら良いなと読み進める心としては願っている。
何より、またひと味違うカタチで綴られる“自由さ”も描かれるとくれば、意外と気が抜けないのだが。
──ただ、等しく言えることも、ある。
誰かしらが苦しみに眠る様を見るのだけは、どうにも悲しくなるというもの。
彼らの「終わり」がそこに残るのだから、尚更だ。
【ハッピーエンド】
どこか変になっているところ、ないかな?
視界へ入る前髪が気になり続け、そっと直そうとする指先も落ち着かないままなのが凄く困る。
そわそわと揺れる不信感は、もうそろそろ爆発しそうだった。
どうしよう、気づいてもらえたら嬉しい。
でもね、あんまりジッとコチラを見ないでとも一緒に思っちゃうんだよ。
こんなにワガママな人間で、ごめんなさい。
それでも私は、あなたの笑顔を追うのをやめられないのです。
【見つめられると】