そのストレートな物言いに憧れる。
たった一言の声援を伝えたくて、張り切る想いに突き動かされるまま此処へと来た。
なのに──いざ本物を目の前にしたら、どうしてか近づくための足だけが立ち止まった。
全てをひっくるめるなら、多分緊張だ。
こんなとき、お前の声を聴かせて欲しくなる。
今この場にある弱気な背中を、容赦なく蹴り出してもらいたいんだ。
頼るのが内なる自分ならば、他力本願ではないはずだろう?
【My Heart】
買ってまで欲しいものは、案外昔から少なかった。
自らの手で触れて、時には仕組みに驚き、遊んだ最後には売り場の中だけで割と満足するからだ。
喉から手が出るほど求め、心奪われるほど執着できるものを、これから先に出会えるのだろうか?
熱意のままに語れる人が、いっそ羨ましい。
【ないものねだり】
上手いこと乗せられて、おだてられていたのは分かっている。
一応それなりに自分の立ち位置的なものとかを弁えてきたつもりなのだし。
だからこそ、今みたいに楽しくなってきてしまったのは予想外であった。
本音と見栄と、建前。
まあ、その……なんだ?
こういうのも、案外悪くないじゃないか。
【好きじゃないのに】
ああ、悔しい、悔しい!
こんなにも熱く、本気になれていただなんて。
自分でも気づかぬうちに、ちゃんと「負けたくない」と思えていたんだ。
とはいえ、あんなのを見せられてはダメだろう。
ああやって真っ直ぐ前を見据える姿は、ひねくれ者の己からするとちょっぴり眩しすぎる。
そう感じる故に、この結果が出るまで自らの何かを見誤っていたのが惜しくもなった。
なにか、まだ出来ることがあったのだろうか。
込み上げる“もしも”に視界の揺らぎを得て、慌てて天を仰いだ。
憎らしいほど澄んだ青空が、目の奥にしみる。
こういう時くらい、少しは曇ってくれていたっていいじゃないか。
穏やかな風で移ろいでいく白を見つけて、今さら抱いた恨めしさをぶつけるようにキッと睨みつけた。
──それなのに、何故。
こうも完膚なきまでの敗北だったはずが、どうして心は晴れやかで、ぽっかりと抉れた喪失感を等しく悲しんでいるのだろう。
【ところにより雨】
どれほど素敵な相手なのだろう。
まだ見ぬ“あなた”に、私はいつ出会えるのかな?
自分でもちょっぴり惚れがち寄りな体質かなとも思うけれど、ふわふわと心惹かれる「想い」が昔から変わらないのも事実。
だからこそ、たった一度の時を逃さないためにも、私は今の私自身の手で出来ることを怠らずに磨いておきたいのよ。
その日を焦がれ、ずっと夢を見ている。
意外とそれすらもね、私にとっては楽しい時間なの。
【特別な存在】