本当に出来るわけがないのに、一度何もかもを投げ出してみたくなる。
思うだけ、考えるだけなら何度も壊して回れた。
もちろん「想像の中」で、の話なわけだが。
荒れた熱で浮かされていた思考がこもる。
今はただ、現実味だけが薄れて感じる。
この重たくて、うやむやとこんがらがった気持ちすらも、妙におかしくて笑ってしまう。
ひとは疲れると弱る生き物らしい。
ああもう。自分は、なんて。
【バカみたい】
降り立ったこの地に、僕らを知る人は居ない。
それくらいには故郷から遠く離れた場所へ来た。
がやがやと溢れる都会の音たちに、自ずと圧倒されそうだった。
すると、ケージの中に丸まる気まぐれな相棒から「どうかしたのか?」と声をかけられたような気がした。
どことなくだが、いつもより気の張ったままの一鳴きで、彼も落ち着かない様子なのが見て取れる。
今から用意しなきゃいけないことは山ほどある。
自分と彼の、二人分。
そんな考えを巡らせていると、肩にのしかかる強ばりすらも、ほんの少し解けた感覚があった。
どうせなら全てを楽しまなくては損だろう。
さて我が相棒よ、まずは何から始めようか。
【二人ぼっち】
ふわふわと、ぬるやかな世界が遠のく。
まばたき一つすらも今はひどく煩わしい。
もう少し、あと数分だけでいいから。
さっきまで間近にあった、あのまどろみの中に続けて浸れたらいいのに。
次に目覚める時は、多分その展開を覚えていないんだろうけど、もうどうでもよかった。
安らぎを願うまま、薄くなる意識を枕元に委ねた。
【夢が醒める前に】
以前作った私の「器」は、今どうなっているのか。
それを明日、やっと見られるとの連絡が入り、すでに心はワクワクと弾んでいる。
土をこね上げて、指を滑らせて。
ところどころが一部うねりながらも、どうにか満足のいく見た目には出来た。
模様を足した後で担当の職人さんに預けて終わり、そこから先の姿となると、もう自分たち素人では分からない。
ただ、最後にカタチを整えた段階のものと比べると、焼き上がった完成品たちはそれぞれが様々な色味へと変化するらしい。
友人たちと体験前の説明を受けていた時から、この作品が一体どんな色に変わって届くのか、それが私は何よりも楽しみだったのだ。
誰かと似た色がついたのか、それともまったく異なる別の光沢を放つのか。
ああ早く、この手に取って見てみたいな!
【胸が高鳴る】
必ずしも芽吹くとは限らない。
それでも、重ねてきた努力が何一つ報われないなんて、そんなの。
最後に残されるのが結果だとしても、苦しみの過程の上に成り立ってきたのだと胸を張れるように。
世界でたった一人、味方が自分の肯定感だけになってでも、心を貫き通せる人であり続けたいんだ。
【不条理】