NoName

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降り立ったこの地に、僕らを知る人は居ない。
それくらいには故郷から遠く離れた場所へ来た。
がやがやと溢れる都会の音たちに、自ずと圧倒されそうだった。

すると、ケージの中に丸まる気まぐれな相棒から「どうかしたのか?」と声をかけられたような気がした。
どことなくだが、いつもより気の張ったままの一鳴きで、彼も落ち着かない様子なのが見て取れる。

今から用意しなきゃいけないことは山ほどある。
自分と彼の、二人分。
そんな考えを巡らせていると、肩にのしかかる強ばりすらも、ほんの少し解けた感覚があった。

どうせなら全てを楽しまなくては損だろう。
さて我が相棒よ、まずは何から始めようか。

【二人ぼっち】

3/21/2024, 1:33:20 PM