やまめ

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3/28/2024, 12:41:20 PM

 涙が頬を伝った。泣くな。今は泣くな。そう言い聞かせても、もう遅い。
 喉が、痛い。グッ、と、変な音が鳴った。唇をかみしめて、何もかもを堪える。
 だって、君が見ているのだから。1番泣きたいのは、1番悲しくて悔しくて堪らないのは、君なのに。
「ありがとね。…私のおばあちゃんの為に泣いてくれて」
 いつもより穏やかで優しくて温かい君の声が、僕をまたしっとりと濡らす。
 腹に力を込めて、君を見つめた。君も、じっと僕を見つめていた。
 君の真っ黒い瞳のその奥が、落ち着きはらって僕の瞳を見つめ返していた。
 どれくらいの時間が経ったのだろう。君はおもむろに言った。
「私、泣かないから」
 笑うから、と。
 思わず泣き笑いのような声をあげる。
 もうやめてくれよ。
 君のその強い後ろ姿に、僕は涙が止まらないんだ。

3/27/2024, 12:04:05 PM

あの景色が、音が、匂いが、温もりが、
あの場所で、あの時の中で得た愛と祈りが、
「私の心臓」。
私こそ命。

3/26/2024, 1:10:26 PM

 玄関の鍵が開く音に身を強張らせる。一挙一動、相手の都合のいいように振る舞う。声音や表情を窺って、自分の心と相手の機嫌を天秤にかける。
 そうやって気を張り続けることのない生活を求めるのは、全部ないものねだりなんでしょうか。
毎晩怯え続けなくてはならないことに、ほとほと疲れました。こわいなあと呟いてしまわないように、どこか遠くを見つめ続ける日々です。
 「上京」という言葉に、希望を見出して生きています。頑張って、頑張って、どうにかここまで漕ぎつけた。あと1週間で、2度とここで暮らさなくていい。ようやく本当の社会的自立へと、一歩踏み出せる。それがどれだけ安定剤となるのか。きっとわからないでしょう。
 平穏な暮らしをください。心の安寧をください。そう神様に祈る。求めてはいけないものだっただろうか。
 そんなはずはない。だから、あと少し。
 大丈夫。今の自分には、ないものだけれど、絶対に手にいれるから。

3/24/2024, 1:52:13 PM

 元気?今日は朝から雨が降ってるよ。見えてる?
 君の住んでるところは、ずっと晴れているのかい?それとも、もうそんな概念自体、存在しないのかな。

 君の顔を最後に見たあの日は、ほんとにすごい雨だった。君との別れが延びるかもしれないなんて、見せかけの希望が頭をよぎったけれど、そんなことはなかった。額縁に収まったいつかの君は笑っていて、同じ空間に生きていたはずの君は澄ました顔で目を閉じていて、思わず蹴っ飛ばしたくなったよ。
 ざーざーしとしと、うるさかった。僕の涙が流れない分、雨はずっと降り続いた。

 …ねえ、夕方には止むらしいよ。虹が出たらいいな。そしてそれが、君からも見えたらいいな。

 あれ?おかしいな。なんか、雨で溺れちゃったみたいに視界がぼやけてる。頬が濡れてべたべたするよ。
 君にあげようと思ってた花束に、僕から溢れた雨粒が落ちちゃった。花びらに雫、綺麗だよ。

 ごめんね、挨拶しに行くの遅れちゃって。今から行くから。

 傘は、もうささないよ。

3/23/2024, 4:50:38 PM

僕が関わりたいと思う人たちは、どうでもいいと思えない人たちは、そりゃ皆、好きだよ。だけどね、どうしても、あの人だけは違うんだよ。
世界で一番、大好きだと思ってしまうんだよ。
だけど、願う愛の形は、他の人と一緒なんだ。幸せでいてほしい。ただそれだけ。僕はそれを、見ていたいだけ。
そりゃ、思ったよ。僕があの人を幸せにできたら、って。だけど、あの人はもう十分幸せそうで、じゃなくてももう十分1人で立ってて、僕はあの人と同じ世界でたまたま生きている(だけかもしれない)というひとりとしてしか、たぶんあの人を幸せにできない。いや、もうそれで十分なんだけどね。
僕自身があの人を特別に思う気持ちは、ただ単に愛なんだ。僕にとって特別なだけなんだよ。
いいんだな、僕はこれでいいと、本当にそう思ってるんだ。
だけどね、生きててほしい。曲がりなりにも、僕はかなり深くあの人を愛してる。そんな人、また会いたいなって思うに決まってる。また会いたいじゃないか。

だからさ、誰にも死ぬなんて言って欲しかないよ。躊躇うってことはさ、躊躇うくらいには人の中で生きてきたんでしょう。なら、あの人を想う僕みたいに、あなたを想ってる人、いたっておかしくないんだよ。それが、あなたが生きている、そして生きていた、証拠品だよ。一ミリでも大切に思われてるって思うなら、そう思ってる人たちをあまり傷つけたくないって、思うなら、どうか、その人たちの世界から消えないで。ありきたりな人たちの中から、ありきたりなひとりが消えることは、僕にとってはありきたりな出来事じゃないんだと思う。
これを読んでくれた人は、もう僕にとってはどうでもいい人じゃないからさ。ありがとう。

ところでさ、僕ごなんでやまめって名前にしたかっていうとね、あの人が僕のシャツにプリントされてたやまめを見て、「やーまーめ。」って読み上げたことが、なんとなーく忘れられないからなんだ。自分の存在って、思っても見ないところで生きてたりするよね。

詭弁かな。諭してるみたいだね。そんなつもりはないんだけどさ。

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