そして、無数の星空の下で王子はお姫様に永遠の愛を誓ったのでした。
めでたしめでたし。
「ほんとに?」
「え?」
「ほんとに、それでおわりなの?」
「そうよ。これで2人は平和に暮らすのよ」
「……ふぅん」
じゃあなんで、このオヒメサマはかなしいカオしてるんだろ。エホンのなかのふたりはみつめあってるけど、あきらかにふたりのヒョウジョウがちがっていた。オウジはカタヒザをついてオヒメサマにバラを1りんさしだしていた。カオはほほえんでいる。なのにオヒメサマは――
「……こまったカオしてる」
わたしのスイリはこうだ。
きっと、オヒメサマはこのオウジのことすきじゃないんだ。べつにすきなヒトがいるんだ。だけどこのオウジとケッコンしなくちゃいけない。おとながきめた、“セイリャクケッコン”ってやつ。
かわいそうに。ほんとにすきなヒトとむすばれたいのに、このオウジでガマンしなくちゃいけないなんて。
「ほら、もう寝なさい」
「はあい」
わたしのへやのマドからもホシのそらがみえる。こんなホシゾラのしたでプロポーズされたらすっごくロマンチックだ。なのに、それでもオヒメサマはよろこべなかったんだな。
「……おほしさまは、かなえてくれなかったのかな」
わたしは“ホシにねがいを”といううたをおもいだした。
かがやくホシにこころのユメをいのればいつかかなうでしょう。
いのればかなうって、うたはいってるのに。
オヒメサマのおいのりがたりなかったのかな。それとも、オウジの“ワルヂエ”のきもちのほうがつよくておほしさまはそっちをかなえてあげたのかな。
「むずかしいなあ」
わたしはそっとエホンをまくらのしたにしまった。
どっちかのねがいがかなうと、どっちかがかなわないなんて。セチガライよのなかよね。
それでいいよ。
迷ったっていいし立ち止まってもいいんだよ。
君だけの人生。君だけの足跡だから。
悩まない人間なんていないから。
失敗しないなんて無理だから。
だからそのまま、そのペースでやってけばいいよ。
そのうち向こうから光がさすから。
「じゃあな」
「おー。向こう着いたら教えてくれや」
そう言って、俺達は固く握手を交わした。もしかしたらこれが最後になるかもしれない。離すのが名残惜しい。でもそれを感じさせないようなやり取りだった。
「向こうは暑いの?寒いの?」
「どうだろう……基本的にはこっちと大して変わらないって聞いてるんだけど」
「食いもんは?」
「それに関してもあまり情報が無くてさ」
「じゃーもしかしたらカエルとかが主食かもしれねぇんだな、ヒヒヒ」
「おいおいやめてくれよ」
こういうバカな会話をしてくれるのがコイツらしいなと思う。わざと、湿っぽくならないように接してくれてる。
「1つだけ、約束してくれ」
「ん?」
「絶対に、死ぬな」
「……任せとけ」
ありがとな。約束したからには絶対に守ってみせるさ。男同士なのに最後は強く肩を抱き合った。最高の友を持って良かったと心底思った。
大切なものはたった1つだけでいい。
それだけを考えて、命をかけて守ればいいのだから。
なのに、そう思っていた僕から君は離れていってしまった。突然大切なものが消えた。僕には守るものがなくなった。
なくなった途端急に虚しくなって。生きてる意味とか考えだしたらキリがなくなった。泣いたし、叫んだ。
僕はそこで学んだ。
大切なものは沢山あったほうがいいんだ。
人でも物でも、見えないものでも。僕が僕でいられるような存在を。
片っぱしから探したら数え切れないほど見つけた。それらは、昔からそこにあったのに気づいてないだけだった。今までは彼女に固執しているだけで見えなかっただけだった。
大切なものは沢山あったほうがいい。1つだけに絞れない。あれもこれも僕にとっては必要不可欠。君を失ったことでそれを知れた。だから失恋とは思わない。おかげで僕が成長できたのだから、君との別れは無駄だとは思わないよ。
大切な時間をありがとう。
これも僕の大切な思い出。
「今日は君に大事な話がある」
「なに?」
「僕たち別れよう」
「オッケー」
「え?」
「じゃあね、元気でね」
「ちょちょちょちょちょちょちょ、待ってよねぇっ」
「なに?」
「その、なんでよとか嫌だよって言わないの?反論一切ナシ?」
「反論してもねぇ」
「へっ?」
「あなたがそうしたいのであればそれを尊重するしかないし」
「え、なんでよ」
「そもそもこちらに非があったのであれば、しっかりとお詫びをせねばなりませんね。この度は大変申し訳ございませんでした」
「ねぇ待ってよ何。ていうか誰」
「今後このようなことがないように、今回のことをしかと受け止めて、今まで以上に邁進してゆきたいと思います故」
「ねぇなんでそんな難しい言葉使うの。いつも“うんち”とかいう君がそんな敬語知らないはずだよ」
「つきましては今回の件を全面的に認め、あなたとお別れすることで責任を取る形とさせていただきます」
「え、やだ」
「それでは」
「ねぇ!エイプリルフールだから!別れない!」
「……申し訳ございませんがもうこれは決定事項ですので」
「やだよ!何それ認めない!取り消してくれ!」
「と、おっしゃいましても」
「じゃないと僕は首をくくるぞ。死ぬぞ」
「左様でございますか」
「え」
「それではこれよりお別れの挨拶を」
「ねぇーーーーっ、嘘だから。別れたくないし死にたくないの。大好きなの君のこと」
「……あんたエイプリルフール向いてないよ」
「ダメだよ?僕と別れたらダメだからね?」
「えーどうしよかな」
「んもーバカぁあ」