ゆかぽんたす

Open App
4/4/2024, 8:07:31 AM

「じゃあな」
「おー。向こう着いたら教えてくれや」
そう言って、俺達は固く握手を交わした。もしかしたらこれが最後になるかもしれない。離すのが名残惜しい。でもそれを感じさせないようなやり取りだった。
「向こうは暑いの?寒いの?」
「どうだろう……基本的にはこっちと大して変わらないって聞いてるんだけど」
「食いもんは?」
「それに関してもあまり情報が無くてさ」
「じゃーもしかしたらカエルとかが主食かもしれねぇんだな、ヒヒヒ」
「おいおいやめてくれよ」
こういうバカな会話をしてくれるのがコイツらしいなと思う。わざと、湿っぽくならないように接してくれてる。
「1つだけ、約束してくれ」
「ん?」
「絶対に、死ぬな」
「……任せとけ」
ありがとな。約束したからには絶対に守ってみせるさ。男同士なのに最後は強く肩を抱き合った。最高の友を持って良かったと心底思った。

4/2/2024, 11:33:48 PM

大切なものはたった1つだけでいい。
それだけを考えて、命をかけて守ればいいのだから。

なのに、そう思っていた僕から君は離れていってしまった。突然大切なものが消えた。僕には守るものがなくなった。
なくなった途端急に虚しくなって。生きてる意味とか考えだしたらキリがなくなった。泣いたし、叫んだ。
僕はそこで学んだ。
大切なものは沢山あったほうがいいんだ。
人でも物でも、見えないものでも。僕が僕でいられるような存在を。

片っぱしから探したら数え切れないほど見つけた。それらは、昔からそこにあったのに気づいてないだけだった。今までは彼女に固執しているだけで見えなかっただけだった。

大切なものは沢山あったほうがいい。1つだけに絞れない。あれもこれも僕にとっては必要不可欠。君を失ったことでそれを知れた。だから失恋とは思わない。おかげで僕が成長できたのだから、君との別れは無駄だとは思わないよ。
大切な時間をありがとう。
これも僕の大切な思い出。

4/2/2024, 3:47:28 AM

「今日は君に大事な話がある」
「なに?」
「僕たち別れよう」
「オッケー」
「え?」
「じゃあね、元気でね」
「ちょちょちょちょちょちょちょ、待ってよねぇっ」
「なに?」
「その、なんでよとか嫌だよって言わないの?反論一切ナシ?」
「反論してもねぇ」
「へっ?」
「あなたがそうしたいのであればそれを尊重するしかないし」
「え、なんでよ」
「そもそもこちらに非があったのであれば、しっかりとお詫びをせねばなりませんね。この度は大変申し訳ございませんでした」
「ねぇ待ってよ何。ていうか誰」
「今後このようなことがないように、今回のことをしかと受け止めて、今まで以上に邁進してゆきたいと思います故」
「ねぇなんでそんな難しい言葉使うの。いつも“うんち”とかいう君がそんな敬語知らないはずだよ」
「つきましては今回の件を全面的に認め、あなたとお別れすることで責任を取る形とさせていただきます」
「え、やだ」
「それでは」
「ねぇ!エイプリルフールだから!別れない!」
「……申し訳ございませんがもうこれは決定事項ですので」
「やだよ!何それ認めない!取り消してくれ!」
「と、おっしゃいましても」
「じゃないと僕は首をくくるぞ。死ぬぞ」
「左様でございますか」
「え」
「それではこれよりお別れの挨拶を」
「ねぇーーーーっ、嘘だから。別れたくないし死にたくないの。大好きなの君のこと」
「……あんたエイプリルフール向いてないよ」
「ダメだよ?僕と別れたらダメだからね?」
「えーどうしよかな」
「んもーバカぁあ」

4/1/2024, 5:16:17 AM

珍しいこともあるもんだ。アイツから「時間がある時会えますか?」なんて連絡がきた。最後にあったのはいつだったか。互いに仕事が忙しくて、たまにメールをするくらいの仲になってしまった。だから直接会うのはかなり久しぶり。俺に会いたいということは仕事のほうで何か嬉しいことでもあったのだろうか。わざわざ呼びつけて報告するなんてよっぽどのことに違いない。まさか海外赴任が決まったのか?だとすると、全力で喜んでくれてやれるかは自身が無い。また簡単には会えなくなってしまうことが確定してしまうから。もしそうなったとしたら、俺は今日、いよいよ彼女に告白すべきなのか。いつまでもこんな適当な関係じゃよくないとは思っている。けれど彼女の仕事の邪魔にはなりたくない。そう思っていたから今まで好きだと告げなかった。でもそれは都合の良い言い訳だったと自覚している。今の関係を下手に壊したくないから言いたくなかった。ただの意気地なしなのだ。
「ごめん、待った?」
「いや全然」
久々に見る彼女は想像以上に綺麗になっていた。肩くらいの長さだった髪は長く伸びてゆるいパーマがかけられていた。服装も、上品さがあるセットアップを着こなしていた。同い年なはずなのに、俺よりもずっと年上に見えた。
「久しぶりだね。元気してた?」
「それなりに」
「えーなにそれ」
他愛のない会話をして、互いの近況報告をした。思ったとおり、彼女は今、自分の会社の上層支部の秘書という大役を勤めているらしい。やってることはオジサンのスケジュール管理ばっかでつまんないよー、と笑いながら言う。海外に行くわけではないことに俺は内心ほっとする。だが彼女がコーヒーカップに手を伸ばした時に違和感を覚えた。左手の薬指に細いリングがはめられていた。気づいたら最後、彼女がカップを持つたびやたらと目についてしまう。俺は我慢ができなくて聞いた。
「それ」
「え?」
「その、指輪ってさ」
「あ、これ?実は結婚したんだ。半年前に」
その時は、自分らがいるこのカフェの喧騒が一気に静まり返ったふうに感じた。時が止まったかとさえ思えた。彼女の言葉の意味を理解するまでに数秒かかった。そしてようやく、意味が俺の脳味噌に浸透した。そうだったのか。だから、俺を呼んだのか。
「久しぶりだからどうしてるかなーって思ったのもあるけど、このことを伝えたかったのもあって連絡したんだよ」
「成る程。結婚したことを俺にひけらかしたかったわけだな?」
「別にそんなつもりじゃないよ!」
嘘つけ。ワタシ今、すごい幸せですって顔してるんだよ。綺麗になったのも髪を伸ばしたのもきっと、相手のためなんだろうな。俺は残っていたコーヒーを飲み干す。すっかり冷めてあまり美味しくなかった。数分前までは美味いと感じられたのに。今はただの苦いだけの液体になってしまった。それはまるで自分の感情のようだった。彼女の結婚報告を聞く前まではあれほど浮かれていた気持ちが今はもう、目も当てられないくらいになっている。
「おめでとう」
「ありがとう」
良かったな。幸せになれよ。どんなに複雑な感情を抱えていようが祝福の気持ちはある。今の言葉に嘘はない。
だが。もっと早くに、自分の気持ちをお前に伝えていたなら。何かが変わっていたのかもしれないな。こんなことなら海外赴任の話のほうがずっと良かった。そんな、馬鹿馬鹿しいことを思うのも、きっと今日で最後だろうな。

3/31/2024, 5:21:31 AM

遅くまでお仕事大変だから、たまにこうして掃除しに来てるけど。何気ないふりして今日もここへ来たわけだけど。もうそろそろ限界かもしれないな。掃除が、じゃなくて私の心が。
女物の靴下、見慣れない化粧品のゴミ、なんとなく部屋中に漂うムスクみたいな香り。私以外にこの部屋に出入りしてる人がいる。こんなにその痕跡隠さないってことはつまり、このことを私にバレたいのかな。暗に“もうここへは来るな”ってことを示しているのかな。今まで気づかないふりをしていたけど、そろそろもう限界みたい。こんなにあからさまに見せつけられちゃ貴方のこともう好きでいられない。ずっと一途に思っていたのに。どんな冷たいこと言われても許してきたのに。こんなに尽くした私を見捨てるっていうんだね。ズルい。酷い。許せない。
それなら私だって考えがあるから。浮気したこと後悔させてあげる。今日貴方がここへ帰ってきたら、さぞかしびっくりすると思うよ。そんな“イタズラ”を仕掛けといてあげるね。私が命をかけて仕掛けるイタズラ。下手したら貴方が犯人だと思われちゃうかもね。遺書にはたっぷり貴方へのことを綴っておくから。

Next