ゆかぽんたす

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10/2/2023, 12:31:09 PM

神様なんて居ないだとか

どうせ世の中優劣がついてるとか

今まで散々なこと言ってきたの、悪かったと思ってる

やっぱり神様は居る

信じます



最後の最後は神頼みだなんて

調子がいいにもほどがある

そんなの分かってる

けどもう、それくらいしか出来ることはなくて

ひたすら泣いて喚いて祈るしかできない

自分は無力だと知った

だからどうかあの子を助けてください

それ以外は何も要らないから

奇跡をもう一度起こしてください

10/2/2023, 4:58:12 AM

幼馴染みのマイちゃんは、時々変わったことをする。みんなで遊んでる時、急にその場に座り込んだり、おしゃべりしてると思ったらどこか遠い方向をじっと見つめていたりする。優しくて大人しい子なんだけど、他の子はそんなマイちゃんの奇妙な行動に不信がって最近じゃあまり遊びに誘わない。
ナナミもあんま関わらないほうがいいよ、と、いつも一緒にいるグループの1人の子に言われた。みんなそうやって次第にマイちゃんから距離を置くようになった。私はというと、すすんで離れたり無視をするようなことはしなかった。だって私たちは幼馴染みだし、お母さん同士も仲が良いから。たとえ離れたいと思っても、そういう事情があるから無闇に変な行動に移せないのだ。

そう、私だって本当はマイちゃんから距離を置きたいと思っている。近頃の彼女の行動は更に過激さを増している。帰り道、急に立ち止まってぶつぶつ何かを言い出したり、信号待ちしている交差点で向かい側にいる男の人を指差して「あの人は明後日死んじゃう」と私に言ってきたりするのだ。気味が悪いどころじゃなかった。人が死ぬ、とか簡単に言えてしまうマイちゃんに私は嫌悪感を抱くようになった。知らず知らずのうちに、私は彼女のことを嫌なものを見るような目で見つめていた。

でも、そんなふうになってもまだ一緒に帰っている。学校から家までほとんど同じ方向。最後に曲がる道が違うだけ。そこまでは、とにかく我慢して、マイちゃんを居ないものだと考えるようにして歩くのだった。けっこう速足で歩く私に、マイちゃんは一生懸命ついてくる。意地悪をしたいんじゃなくて、一刻も早く帰りたいのだ。そんな私の胸の内を知ってか知らずか、「ナナミ待って」と、呼び止めてきた。振り向くとマイちゃんがのんびりとした速度で歩いてくる。おいてかれたくないのなら少しは急いでよ。
「……マイちゃん私、今日早く帰りたいんだ。悪いけど先行くね」
「だめ、待って」
「なんで――」
そんなワガママ言うの。いよいよ頭にきてそう叫ぼうとした時、右から左に物凄い勢いでダンプカーが走り去った。ここは一時停止標識がある道路なのに、そんな気配はつゆほども見せず猛スピードで行ってしまった。もし、あのまま道を横断していたら。私は間違いなく今のダンプカーに轢かれていた。
「ね?言ったでしょ」
にこりと微笑んでマイちゃんが言った。私は何も声が出なかった。どうして分かったの。聞きたいのに、何かがぞくりと背中に走る感覚を覚えた。夕陽を背負ったマイちゃんが口を綺麗に弓なりに曲げる。黄昏時は、みんな自然と死に吸い寄せられちゃうのよ、と。わけの分からない解説をしてくれたけど、私の耳には全く入ってこなかった。理解できるのは、今の夕日が痛いくらいに眩しいということだけだった。

10/1/2023, 5:15:11 AM

このままじゃいけないんだって、頭の中では分かっている。でも行動に移せなくて、結局今日も変わらずその場凌ぎみたいな生き方をしている。こんなぬるま湯の中にいるような日々を過ごしていて無駄じゃないのか?答えはYESだ。分かっている。それでも僕は動けない。しょせんただの臆病者なのだ。
これでは明日も明後日も、下手したら数十年先も今と変わらずの日々になるんだろうな。
「じゃ、行動にうつせば?」
「無茶言うなよ」
ソファに寝そべりながら彼女が言う。人の家だというのに随分と寛いでいるな。まぁ、今に始まったことじゃないからいいけど。でもそんな簡単に言うなよ。それが出来てりゃこんなにも思い悩んだりしないって。
「だってそれって、理由つけて逃げてるだけでしょユウちゃんは」
のほほんとしながら彼女は口を開く。ただし、言ってることはかなり攻撃的な言葉だけど。知らず知らずのうちに、その真っ当な発言が僕の胸をちくちく刺している。
「いけないと思ってるなら、自分の直感を信じてみたらいいんじゃなくて?」
「そりゃそうだけど」
「けど?」
「僕1人の問題じゃないだろ。社会の中で生きるって、集団行動を重んじないといけないんだ」
決してそんなことはない。まだ学生時分の彼女に向けた言い逃れだ。言い逃れてるという時点で、はなから僕は自信がないのだ。怖気づいている。社会というワードを盾にして現状から目を逸らそうとしている。勿論、その狡さも自覚している。
「でもさぁ、そんなんじゃユウちゃんきっと明日もそんな顔してるよ。それって、つまんなくない?」
「つまんない、とか、そーゆう問題じゃないんだよ」
「じゃあ、どーゆう問題?」
彼女はむくりと体を起こした。正面から見つめられて虚をつかれる。たかが2、3歳年が違うだけでも、彼女のほうがずっと“自分”を持っている。それも充分分かっている。何の行動も起こさないで文句だけ垂らす僕はかなりの小心者だ。やりもしないのに諦めて、悲観するなんておかしい話なんだ。
「何が足りないの?勇気?自信?決断力?」
「……全部だよ」
「全部かぁ」
彼女が少し笑って仰向く。これじゃ、どっちが歳上なのか分からないな。分かってるさ。今挙げられた3つとも、自分で手に入れなきゃ意味ないんだ。誰かから与えられた勇気や自信を振りかざしても自分のためにはならない。
「自信とか、はい、って言って簡単にあげられないけどさぁ」
おもむろに、彼女は立ち上がると僕の目の前までやって来た。
「“味方”なら、すぐあげられるよ」
はい、と。言いながら自らの右手を僕に向かって差し出す。すぐに言葉が出なかった。
「あたし、社会がどうとか分かんないし集団行動とかイミフだけど。けどユウちゃんが何か動き出そうとするなら全力で応援する。何があってもユウちゃんのサポーターする」
にっこりと、何の混じり気のない笑顔を見せながら彼女が言った。じわじわと、僕の中の奥深くに浸透してゆくのが分かる。そっか、そうだよな。1人じゃないって、こういうことなんだ。あんなに思い悩み悲観していたのが途端にバカらしくなってくる。明日もこんな顔見せたら、やっぱりお前は心配するよな。
「ごめん。……ありがとな」
「明日は笑えそ?」
「ああ」

大丈夫だ。明日は、きっと。それを全身で伝えるために、彼女をぎゅっと抱きしめた。

9/30/2023, 7:50:03 AM

「ただいま」
返事はない。住人は私のみなのだから当然か。上着をハンガーに掛けてコップに冷たいミルクを注いで飲み干す。その間に風呂の湯を沸かしつつ簡単な部屋着に着替える。いつものルーティン。それはいつからだろう、気づいたらこの流れになっていた。もう体に染み付いてしまっている。無意識のうちにその動きをしてしまう。だから気を抜くとつい、やってしまうことがある。
「あ……」
並べるカトラリーは1つだけでいいのに。2組ぶん食器棚から出している。今日は疲れているのかな。早めに寝るとしよう。そしてリビングの小さな仏壇に飾られた写真に向かって笑いかけた。こんな間抜けなところを見ていたであろう貴方に。
「流石に今日は疲れたよ。でも、なんとか間に合いそうなんだ、今のプロジェクト」
今の仕事の進捗状況を一方的に報告する。これもいつものルーティン。貴方はただ黙って聞いてくれている。そう思うと私のおしゃべりは止まらない。もっと色々知ってほしくて、今日あったことを共有したくて。写真に向かって毎晩喋り倒すのだ。
「今日は疲れたからさきお風呂入ろ」
これも、独り言なんだか宣言なんだか良く分からない。大きめの独り言、みたいな位置づけになるのか。タオルと着替えを胸に抱きバスルームへ移動した。そこはまだ電気が点いていない薄暗い空間。辺りの空間に静寂が蔓延している。自分の家なのに、少しでも暗くて静かな場所に入るとこんなにも心が乱れてしまう。だから私は暗闇が怖くなってしまった。貴方を失ったあの日から。
裸になって熱いシャワーを頭からかぶる。ザアア、という音が不思議と安心させてくれた。何でもいいから音が欲しかった。少し頭痛が和らいだ気がする。なるべく音のない空間には居たくない。本当は静かな夜が大好きだったのに。貴方と過ごしたあの夜たちが、好きだった。けれど、貴方が抱き締めてくれた夜を思い出すのさえ、今は苦しい。

9/28/2023, 12:38:39 PM

「じゃあ俺とデートしようよ」
にこりと笑ってお兄ちゃんが言った。“お兄ちゃん”、と呼んでるけど、別に血が繋がった本当の兄ではない。家が近くて、小さい頃よく遊んでくれた1つ年上の人。いわゆる幼なじみという間柄だと思う。
そのお兄ちゃんと学校からの帰り、駅でばったりあって一緒に帰ることになった。何のきっかけか忘れたけど、話の流れで私の女友達のことを話した。いつも仲が良くて土日のどっちかは一緒に遊びに行く子。なのだが、その子にこの間めでたく彼氏ができた。その途端、休日は土日どちらとも彼氏と過ごすようになってしまい私のことを構ってくれなくなったのだ。その文句と寂しさを話したら、
「じゃあ俺とデートしようよ」
「へ」
「嫌?」
お兄ちゃんはぽかんとしている私の顔を覗き込んできた。嫌、とかそんなんじゃなくて。なんで私がお兄ちゃんとデートすることになるの?そんな疑問をぶつけるより早く、じゃあ明日の9時に迎えに行くね、と話を進めてゆく。
「どこに行く?お前の行きたいとこでいいよ」
「別に、そーゆうの考えてなかったからすぐ浮かばない」
「じゃあ遊園地にしよう。定番だし」
「それはいいけど……いいよ?別に、無理しなくて」
「何が?」
きっとお兄ちゃんは私の機嫌を直すためにデートに行こうだなんて提案をしたんだ。そこまでしてもらう義理なんてない。貴重な休日を潰してしまったら申し訳ない。
「別に私そこまで気にしてないからさ。だから大丈夫だよ。気にかけてくれてありがとね」
「そうなの?」
「うん」
夕暮れ時の住宅街はどこからともなく美味しそうな匂いがする。私達の家まであともう数十メートルの距離だった。今日の夕飯なんだろな。呑気にそんなことを考えていた。
「気にかけてない、って言ったら嘘だけど、普通にお前とデートしたいって思ったんだけどなぁ」
「え……」
「だから行こうよ。遊園地」
夕陽を背負ってお兄ちゃんが笑いかける。いつから、こんなに格好良くなってしまったんだろう。高校生になったら話すことはめっきり減ったけど、会えばこうして構ってくれる。普通は、これくらいの歳の男の子は無愛想になったりするもんかと思ってたのに。お兄ちゃんはいつだって優しい。だから何でも許せてしまう。
「うん。じゃあ、明日よろしくお願いします」
「こちらこそ」
家の前についた。じゃあね、と言って玄関門を開けるところで、待って、と呼び止められる。振り向いた私の頭にお兄ちゃんの手が乗った。大きくて暖かいその手が私の前髪をすくう。そして、露わになった私の額にそっと何かが触れた。お兄ちゃんの唇だった。
「また明日」
去っていく後ろ姿に何も言えず、自宅の前で間抜けに立ち尽くす。やがて我に返ってまず初めに思ったこと。明日どうしよう。もしかして、もしかしなくともこれって。
「本当のデート……になるよね」



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