ゆかぽんたす

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9/3/2023, 7:53:16 AM

さあ、笑えよ見下せよ。僕のことをとことん詰ればいい。それで気が済むのならいくらでも受けてやるさ。言うだけ言ってそれでお前が満足できるなら易いものさ。喜んで罵声を浴びるとしよう。

僕はね。
絶対に譲れないものがあるんだ。
自分の命を天秤にかけても、これだけは譲れないというものが僕にはある。だからお前の怨み言なんかどうだっていいのさ。なんと言われようが一向に構わない。
お前にはまだ分からないだろうな。命を賭けるって、そういうことじゃないか。守りたいものがあるから何だって受けとめられる。信念みたいなものだと思う。それは時として自分に物凄い力を与えてくれる。勇気とか希望とか、そういう言葉をお前は嫌うだろうけど、目に見えないからこそ凄いものなんだっていつか分かる日が来るさ。

現に見えるよ。何だかんだ文句を並べるお前の心にもちゃんと心の灯火がある。本当は現状に満足していないんだろう?だったらどうするか、答えは簡単じゃないのか。やり直すのはいつでもいい。やり直したいって思った時こそ、動くべきだ。
お前は勇気をふりしぼれるか?それともそこでいつまでも突っ立ったままか?

9/2/2023, 8:48:24 AM

電話を何十回かけても出てくれない。仕方ないからLINEを送った。これから私たちどうなっちゃうの?、って。クエスチョンで終わらせれば返事を返さなきゃならないでしょう。だから質問したの。でもその答えは分かってる。キミは私じゃなくて、あの子のことを選ぶ。本当は知ってたんだ。私に隠れてたつもりでも、あの子はキミのことが好きで、キミもあの子に惹かれていたって。それでも私は知らないふりしてたの。キミの一時的な気の迷いだろうって、そう思いたかったから。でも結局それは無駄な行いだった。私が何も言わないのをいいことにキミとあの子はどんどん親密になっていった。もう、後戻りできないほどに。


たっぷり2週間経ってようやくキミからのLINEを受信した。あんなに返事を待っていたのに、いざとなると怖くてキミの返事が見れないや。きっと、私のことなんてどうも思っちゃいないだろうに。どうしてこんなに胸がざわざわしてるんだろう。ずっと心臓がどくどく言ってる。そんなに緊張しなくても、もう何の希望も無いんだってば。自分に言い聞かせてもまるで効果なしだ。
このLINEを開けば今度こそキミとの関係は終わる。それが怖くて開けられずにいる。ならいっそ、開けないまま削除してしまおうか。どちらの選択もこんなにも勇気がいるだなんて。どうしたらいいの。どっちが正解なの。分からないよ。私の何がいけなかったのかも、キミがいつから私に愛想尽かしてたのかも。分からなさすぎて苦しいよ。もう傷つきたくないよ。私は静かに泣いた。でも、いくら泣いたってこの涙を拭ってくれる人はいない。LINEのグリーンのアイコンがこんなにも目障りだと思ったことは初めてだ。震える手でトーク画面を呼び出した。大きな深呼吸をひとつして。じゃあ今から、キミの名前をタップするよ。

(さようなら。)


8/31/2023, 1:16:18 PM

無意識にキミの番号をタップしていた。
『もしもし?』
コール3回目でキミが出た。それだけでこんなにも安心するなんて。思っていた以上に僕は疲れていたらしい。
「やぁ。こんばんは」
『どしたのこんな時間に』
ていうかこんばんは、って。そう言いながら電話の向こうでくすくす笑うキミ。あぁ、落ち着く。その証拠に長い長い溜息が出た。
『……ほんとに、どしたの?なんかあった?』
「あった、のかな。良くわかんないな」
『なぁに、それ』
こんな非常識な時間にかけても怒るような人じゃない。それが分かってて電話するなんて僕は狡い男だよね。でもどうにも耐えられそうになかったんだ。そろそろ心が限界だった。だからキミの声をどうしても聞きたくて。
「ごめんね。眠かったでしょ」
『んーん、別に平気だよ?なんか寝れなくてTV見てた』
「そうなの?めずらしいね」
『そろそろ、電話が来る頃かなぁって思ってたからね』
「……僕から?」
『うん』
キミはすごいな。もう、声だけじゃなくて今すぐ会いたいよ。そんな困らせるようなことさえ今なら言ってしまいそう。それくらい弱っていたのだと改めて思い知る。
『完全な人間なんていないんだから。寂しい時は寂しいって言っていいんだよ』
その言葉がすとんと僕の心に落ちてきて。すごくすごく満たされる気持ちになった。キミの前では不完全な僕でいていいのだ。それが分かって、ようやく僕は笑えた。

キミがいつも僕のそばにいる。たとえ離れていたって、心はいつも、僕のそばに。

8/31/2023, 6:03:01 AM

「お前はちっとも変わらねぇな」
こういう時、どっちのほうが嬉しいんだろう。“変わったね”のほうがいいのか、“変わらないね”のほうがいいのか。とりあえず、7年ぶりに再会してみて、彼の目に映る私は変わってないほうだったらしい。喜ぶべきか落胆すべきかいつまでも悩んでいたら変な顔になっていたらしく額を軽く小突かれた。ちっとも痛くないけど額を押さえながら痛いよと抗議した。だってそうしなきゃうまく取り繕えそうになくて。
「それで?お前は今何をしてるんだ?」
「別に。ごく普通の一般企業に就職して毎日サービス残業してるよ」
「そいつは御苦労なこった」
高校3年時のクラスの同窓会。当時の学級委員だった子が動いて皆に連絡を取り今日が実現した。その中でも今、私の隣でグラスを持つ彼には最後まで連絡が取れなかったらしい。なんでも彼は、誰もが知る大手企業に勤めており日夜忙しくしているようだった。海外出張なんてざらにあるから、連絡がつかなかったのも当然だ。
だが、再び昨日誰かがダメ元でメールを送ってみたらしい。そうしたらたまたま昨日から日本に戻っていたようで、当日の今日、奇跡的に時間が取れたため顔を出してくれた。
彼が来た時すぐに分かった。そして、彼も私の存在にすぐ気がついた。約7年という月日が経っていても何故か「久しぶり」とはならなかった。
「私なんかよりずっと忙しいんでしょ?休みなんてないんじゃないの?」
「そうだな。この集まりがお開きになったらまた、仕事に戻る」
「えぇ……」
あと2時間そこらで日付が変わると言うのに。昼も夜も関係なく働いてられるなんて。よっぽど好きじゃないと出来ないな、と思った。でも彼らしいとも思える。昔から向上心の塊のような人だった。どこまでも自分の可能性を信じているような人。だから私にはちょっと、眩しすぎた。
「体には気をつけてね。あんまり仕事に忙殺されてると彼女に愛想尽かされちゃうよ」
「そういう存在がないからその心配は必要ねぇな」
「あ、そうなんだ」
今だって変わらず格好良いのに。いやむしろ、大人になった彼は格好良いの言葉で表現しきれないくらい。高校時代からすでに周りと比べて大人っぽかった。それでも、歳を重ねた今の彼は、あの時には無かった色気とか妖しさみたいなものを纏っている。
そういう、雰囲気の変化はあれど、“変わった”か“変わらない”かでは、彼も私と同じで“変わらない”の方だと思う。さっきからずっと感じていた。彼からふわりと香る香水が、高校時代のものと同じものだということ。懐かしいこの香りに私は抱き締められたことがある。あの頃の記憶を一瞬にして思い出させる。このままずっと嗅いでいると、お酒の効果もあって頭がぐらりとしてしまいそう。
「この後戻るようだから、飲まないようにしている」
彼が持っていたグラスの中身はノンアルコールだった。不意に彼が私の手からカクテルグラスを奪い取る。名前は忘れた、琥珀色の液体が入っているそれを見て目を細めた。
「だが、これを飲んで仕事を放棄して、今夜お前と過ごそうかとも考えている」
ニヤリと彼が笑う。私の心の内を読み当てたぜと言わんばかりに、クククと妖しく笑うのだった。どうせバレバレだったのだ。再会した瞬間に彼には私の気持ちが見抜かれてしまっていた。どんなに平生気取っても、やっぱり彼には隠せやしない。
「お前がこの手を止めないと、俺はこれを飲んじまうぜ?」
私は試されている。でも、彼を止めるなんて選択は脳裏によぎることすらなかった。彼は静かに琥珀色の液体を飲み干す。この空間には私達以外にも居るはずなのに、もう他の誰の声も耳に入っては来なかった。彼はテーブルに空になったグラスを置くと私に顔を近付けてくる。懐かしい香りが私を包む。
「このカクテルの名前を知ってるか」
唇が触れ合う直前聞かれた。知らないし、そんな事を考える頭の余裕はもはやなかった。黙ったままの私に彼が囁いた。
「ビトウィーン・ザ・シーツ」
直後交わしたキスは、甘くほろ苦い味がした。

8/30/2023, 2:37:27 AM

「え、そう……なの?」
好きだと伝えたら、彼女の第一声はこれだった。表情もびっくりしていた。いつもの柔らかな瞳は今はこんなに真ん丸く見開かれている。まるで僕を何か違うものを見るような目で見ている。そんなに驚くことだろうか。これまで僕はキミを何よりも第一に考えて行動してきたつもりだ。キミを差し置いて優先すべきものは無いから。いつ何時もキミが1番だった。なのに当の本人にはそれが伝わってなかったらしい。キミのその驚いた顔を見て、それが分からされた瞬間だった。
「その、正直そーゆうふうに見てなかったから」
「なら、どーゆうふうに見てたっていうの?」
「それは、」
言葉を切って彼女は考え込む。考えてしまうような位置づけなのか、キミにとっての僕の存在は。キミの人生のなかで僕は居ても居なくてもさして困らない人間だということなのか。あまりにもショックだ。見返りを欲しがるつもりはないけれど、これはあまりにも酷いんじゃないか?そう思ってしまった時は既に、キミへの愛が盲目になっている証拠だった。一歩彼女へ近づいた、のち、その腕を掴み引っ張りこむ。小さな悲鳴が聞こえた。でも、それも全て抱き締めてしまおう。今まで我慢してきたけど、キミの態度がそんなんじゃもう我慢する必要ないだろう?
相変わらず抵抗する彼女を強く腕の中に閉じ込めた。これでもう身動きはとれない。
「……どうして、こんなこと」
「どうして?」
何てことを聞くんだろうか。これでも僕の愛は伝わらない。それどころか逃げようとするなんて。
でも本当はなんとなく感じていた。好きだと言っても抱き締めても、キミは僕のほうを振り向いてくれないんじゃないかって。だから僕は今日までずっと言わなかった。終わってしまうのが怖かった。そもそも始まってすらいなかったのに。
こんなことしてキミを怖がらせた以上もうキミには会えなくなるだろう。それを思うとこの腕を放したくない。キミに愛されたい、と思ってしまった僕のエゴを、キミごとこのまま腕の中に隠してしまいたい。もう二度と、好きだなんて言わないから。キミを困らせる言葉を発さない代わりに、あと少しこのままでいさせてくれないか。

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