Noir

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6/30/2024, 7:23:57 AM

入道雲

今日はこの季節を象徴するかのような晴れ。
そんな季節とは裏腹に僕のいるところは偽造の悲しみで満ち溢れていた。
鼻をすする音、涙をハンカチで拭う音、悲しいと言い合う人、すべてが嘘で、居るだけで吐き気がするこの空間。
(お前らは何もしらないくせに………)
僕は親族ではない。幼なじみで恋人でもあった。
唯一信頼できる関係性、周りからは親友同士だと思われていた。

世間ではまだ受け入れられていない同性カップルになり、いざこざもたくさんあった。
だが、その時間でさえ、僕たちにとっては嬉しい時間だった。ただ、貴方といられるだけで嬉しかった。だって、貴方には病気があったから。
完治できる確立も低く、そんなに長くはなかったから。
だから、1分でも、1秒でも長く一緒にいたかった。嬉しいことに貴方も同じ考えだった。だから僕たちはいつも一緒にいた。

最近では病の進行も緩やかだったのに、なんで、
来年の大学進学を機に同棲しようね。って、部屋は各自分の部屋あったほうがいいよね。って未来を語り合ったのになんで、なんで、なんで、
「先にいっちまったんだよ。」そんな本心が弱々しく口から出た。誰も僕のことは気にかけない。そりゃそうだ。
向こうの家系からしたら、病弱が亡くなっただけ。
むしろ、メリットなんだろう。
香水臭いおばさんたちが遠くで雑談。おじさんたちは軽く商談の話。
ほら、誰もあいつを気にかけたことがない。
昔からそうだった。あいつを気にかけるやつなんていなかった。

空を見上げればいまだ成長している入道雲。
そんな入道雲は僕の悲しみと怒りを表しているようだった。

fin

6/26/2024, 8:26:13 AM

繊細な花

6/20/2024, 10:12:38 AM

あなたがいたから

「ねぇー、これ分かんない助けて!」
「えっ、また?」
「うーん、だって分かんないんだもん。」
そう嘆くのは保育園からの幼なじみだ。
保育園~高校までずっと一緒だったため、今では
家族ぐるみで仲良しだ。

スポーツ万能の幼なじみ。そんな彼女の弱点は勉強だ。なぜ私と同じ高校に行けたのか不思議になるぐらいに出来ない。
「ねぇ、ここは?」「ここは、…………………だよ。」
「おぉ!なるほど。」「じゃあ、ここは?」
「ここは、……………………だよ。」「なるほどね!」
この会話がもう2、30分は続いている。

そんな彼女は、保育園の頃から私が困っていたら、1番に助けにきてくれた。だから彼女は私のヒーローだ。
そして、現在高校生になった今も私のヒーローとして、困ったことがあれば助けてくれる。
どんなに勉強が出来なくても、彼女はヒーローで
幼なじみで憧れの存在だ。

いつもと変わらない彼女を家まで送った帰り道。
私の家の庭には、紫色のフリージアが咲いていた。
(誕生日にプレゼントしよう。)
中学1年生のときから続く誕生日プレゼントの1つ
紫のフリージア。





紫のフリージアの花言葉「憧れ」

6/20/2024, 10:00:39 AM

相合傘

靴箱から出る
朝は晴れだったのに今は「ザーザー」となる大雨。
この時期特有の天気の変わりようには心底呆れるものがある。やっぱり天気予報を見ることは大事よな。うんうん。そんな自問自答に似た会話を頭の中で繰り広げながら1本の折り畳み傘を出す。
深呼吸をして大雨に飛び込む覚悟が出来たとき、視界の右端にうつったのは困り顔をする好きな人。
(傘持ち合わせてないのかな)
(傘がある自分+傘がない好きな人=相合傘できるチャンス!?)
そんな思考が頭の中に飛び込んでくる。
「良かったら途中まで一緒に帰らない?」
「傘!あ…る……し」語尾に近づくほど小さくなる声に頭の中の自分が怒っているのが分かった。
「どう…かな?」
「いいの?じゃあその言葉に甘えさせてもらおうかな」
「もちろん!全然大丈夫だよ!」思ってもいなかった返答に日本語がおかしくなっていたかもしれない。
でもそんなことが気にならないほど嬉しかった。

大粒の雨が傘に落ちる音がいつもより大きく聞こえる。
君と僕が2人きりで帰れるのは最初で最後かもしれない。そう思うだけで僕の心臓は周りの音よりも大きくなっている気がした。
君にとっては365日の中のある1日の一時。
僕にとっては一生の中で1番大切な一時。
そんな対比が頭の中を駆け巡った。
「家、ここ」そんな彼女の声がして、思考から手を離す。
どうやら彼女の家の前についたらしい。
「じゃあね。」
「うん!傘ありがと!」
「ううん。気にしないで。」「バイバイ。」
「うん!バイバイー!」明るい彼女の声の後に聞こえたのはガチャンと玄関扉がしまる音。

マップを頼りに自分の家に帰る途中、視界のはしにまばらな白色をとらえた。顔をあげるとたくさんの白いサクラソウが咲いていた。そんな所で僕は一粒の涙を流していた。自分でも驚いたが、どうやら自分の体は我慢の限界だったらしい。
「バイバイ、僕の…………。」
最後に言った言葉は声が小さすぎたのと大雨によってかき消された。ただ、唇が震えていたことだけが分かった。




サクラソウの花言葉「叶わぬ初恋」

6/18/2024, 12:12:26 PM

落下

「っは……はぁはぁ」
またこの夢だ。階段から落ちる夢。
身体がビクッって動いて、良くも悪くも目が覚める感覚。正直心臓に悪いからもう止めてほしい。
そう思ってもまた同じ事を繰り返す。
だから、毎日毎日夢のことしか考えられなかった。
(怖い。どうしてこんな夢ばっかりなんだろう。
はやく終わってほしい。)
だが、そんな思いとは反対にやむことのない夢。
そんな現状にもだんだん慣れてきて、恐怖が疑問へと変わっていった。
(なんで、こんな夢ばかりなんだろう。)
(なにか理由があるのだろうか。)
「🔍️階段から落ちる夢 なぜ?」
「それは失敗や挫折の暗示です。」(諸説あります。)

「失敗と挫折の暗示………か……」
正直そんなものは思いつかなかった。
だってまだ未成年。乗り越える壁も低いし、なりより挑戦をしていない。
そう思っていても夢から解放される訳はなかった。
(はぁ……もう、無理なのかな、、、)
(もう、いっそ諦めてみようか……)
(うん、そうしよう。)
そこから夢に関して考えることをやめた。
すると不思議に夢も徐々に減っていった。

案外考えてないほうが上手くいく場合もあるもんだ!大きなことを新しく学んだ1日となった。

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