入道雲
今日はこの季節を象徴するかのような晴れ。
そんな季節とは裏腹に僕のいるところは偽造の悲しみで満ち溢れていた。
鼻をすする音、涙をハンカチで拭う音、悲しいと言い合う人、すべてが嘘で、居るだけで吐き気がするこの空間。
(お前らは何もしらないくせに………)
僕は親族ではない。幼なじみで恋人でもあった。
唯一信頼できる関係性、周りからは親友同士だと思われていた。
世間ではまだ受け入れられていない同性カップルになり、いざこざもたくさんあった。
だが、その時間でさえ、僕たちにとっては嬉しい時間だった。ただ、貴方といられるだけで嬉しかった。だって、相手には病気があったから。
そんなに長くはなかったから。
だから、1分でも長く、1秒でも長く一緒にいたかった。嬉しいことに相手も同じ考えで、僕たちはいつも一緒にいた。
最近では病の進行も緩やかだったのに、なんで、
将来は同棲しようね。って、未来を語り合ったのになんで、なんで、なんで、
「先にいっちまったんだよ。」そんな本心が口から出た。誰も僕のことは気にかけない。そりゃそうだ。
向こうの家系からしたら、病弱が亡くなっただけ。
むしろ、メリットなんだろう。
香水臭いおばさんたちが遠くで雑談。おじさんたちは軽く商談の話。
ほら、誰もあいつを気にかけたことがない。
昔からそうだった。あいつを気にかけるやつなんていなかった。
空を見上げればいまだ成長している入道雲。
そんな入道雲は僕の悲しみと怒りを表しているようだった。
fin
6/30/2024, 7:23:57 AM