世界の終わりに君と
「ねぇ、世界が終わる日なにして過ごしたい?」
「なに、急に」
「よくあるじゃん!あと数時間で世界が終わるなら 何しますかー的な?」
「まぁ、あるけど、」
「あるよね!だから何がしたい?」
「あるけど、それからそこまでとんでいくのは意味 が分からん」
「まぁまぁまぁ、そんなケチなことは言わずに…」
「じゃあ、いつも通り過ごしていたい。」
「えっ!もっと何かないの?!」
「なんかー……贅沢したい!とか学校サボりたい!
とか…ない?」
「ないよ。ただいつも通り過ごしていたい。」
「ちぇっ、つまんないの、」
そう、ただいつも通り、貴女と喋りながら過ごせたら…ただ、それだけを望む。
出来ることなら、この世界が終わる終期まで、貴女と喋っていたい。
貴女といるこの時間が宝物だから…
「ねぇ、なんで突っ立ってんの?」
「はやくしないと置いていくよ!」
「ちょっと待って、すぐ行く!」
やっぱり、貴女は私の太陽だ……
バックを背負って、セーラー服を着ている2人組。
1人は楽しいそうに喋ってて、1人は分かりにくいがきっと嬉しそうに相づちをうっている。
そんな2人は夕陽に背を向けて歩いていった……。
fin
失恋
高校生の僕はいわば陽キャだ。
正確に言えば高校生デビューをした陽キャだ。
始めはどうなるかとことかとひやひやしていたが、高一の秋になった今ではそんなことは少しも思わなくなった。
そんな高校生デビューした僕にも好きな人ができた。僕は自分の良いところをさりげなくアピールしたくて、とにかく人あたりの良い優しい人なった。
おかげで雑務を任されるようになってしまったが仕方がない。僕も好きでこれをやっている訳ではないのだから……。
そうして過ごしているうちに一学期が終わりそうな季節になっていた。
そして、修了式の今日、あの人に告白しようと思う。僕は今まで、人当たりの良い優しい人を始めとし、さまざまな仮面を被ってきた。すべてはあの人と付き合うため。
正直とても苦しいこともあった。それでもがんばれた。それで、彼女の彼氏になれる可能性が上がるのならば………。
「好きです。付き合って下さい。」
王道のセリフを放課後、体育館裏で言った。
「ごめんなさい。今の君とは付き合いたくない。」
あぁ、呆気なく終わってしまった一年間の恋…
「そう、ですよね。高校デビューした僕なんてまだあなたには相応しくないですよ…ね、」
徐々に自分で言ってることが苦しくなって、語尾が濁る。
さっさとこの場から立ち去りたくて、早足に言った。「返事を返してくれただけでも、嬉しいです。」「ありがとうございました。」
「あっ、ちょっとまって。」
「私は仮面を被った君が付き合えないの……。」
「だから、仮面を全部外せた時、まだ好きでいてくれたら、告白しにきてくれないか…な?」
えっ、まさかの言葉に頭が真っ白になるが、すぐに嬉しさの色にそまる。
「はい!絶対行きます。」「待っててください。」
まさか、好いてもらおうと被ったものが逆な結果をうむなんて…やっぱり、自分らしくいたほうがいいよね。
fin
梅雨
「今日から、梅雨のシーズンとなるでしょう」
テレビから聞こえてくるその言葉に僕はテンションが上がった。「やったー!梅雨だ!」
僕は雨が好き。だって、雨の日に外に出ると雨が大合唱してるから。晴れは人がいっぱいいてそれも、それで大合唱だけど、なんだか居心地が悪い。
でも、雨の日には人も少ない。最高だ。
みんなは梅雨が嫌いらしいけど、僕にはなぜ嫌いなのか分からない。
今日もいつもの長靴を履いて、傘を持って、外に出る。「わぁ」いつもより、多い雨に僕は感動する。
あちらこちらから止むことなく音が聞こえてきて、大合唱より大大大合唱のほうが合ってるぐらいだ。
僕は、傘をさして、道路に出る。傘が水をはじいて音が出る。それもまた、楽しい!自分が下にいるから、まさに特等席で、大合唱を聞く。
今度は、長靴で歩く。すると、地面の水が「ピチャピチャ」鳴る。大袈裟に歩くともっと大きな音が鳴る。水溜まりに入ると、1番おおきな音がする。
これで、僕も大大大合唱の仲間入りだ。
普段友達が苦手だから、この友達はとても大切となる。だから僕は雨が好き。
fin
終わりなき旅
俺はある人を探している。その人がどこにいるのか何をしているのかは一切分からない。
ただ、見た目と名前、性格だけを知っている。
だから、行くところどころで聞き込みをしている。
目撃情報がなかったら次の町、都市へ…またなかったら次の所へ…を繰り返している。
今現在、俺はほとんどすべての町、都市を巡った。
彼女はエルフだ。そう見た目が変わるわけではない。訳ではないはずなのになぜこんなに見つからない!一向に兆しが見えないのだ。でも、諦める訳には行かない。なぜなら、彼女と追いかけっこをしているからだ!
絶対に見つけ出してみせる!こんな些細な戦いにここまで燃えれるものなのかと不思議に思う。
でも、きっと心のどこかでは気づいているのだ。
自分が旅好きなことは…
「まったく…俺も師匠に似ちまったもんだ…」
そう言いながら空を見上げる。
師匠も同じ空みてんのかな……?
「まぁ、いいや!さぁ、聞き込み聞き込み!」
そう思い空から視線を反らしたときにある1人の女性とぶつかってしまった。
「すいません、大丈夫ですか?…………え?」
ぶつかった相手は僕がずっと探していた彼女だった。
「おぉ、久しぶり!大きくなったなぁ!」
そう言いながら僕の頭をなでる。
(そういうところはほんと変わんないよね。)
さぁ、俺たちの追いかけっこは終わり!これからどうやって、のんびり過ごそうか……
「そういやお前さん色々な所に行ったらしいな!」
「あぁ、ほとんどの所は回ったさ。」
「じゃあ、これからは一緒に旅をしよう!
その案内役をお前に任せる!」
「えっ、なにそのムチャ振り…」
「さぁ、そうと決まったら行くぞー!」
「あぁ、はいはいしゅぱーつ(棒)」
乗る気でなさそうな返事をしながらも内心嬉しくなっている自分が悔しい。
これからの俺の…嫌、俺たちの旅にはどんな試練が待ち受けているのだろうか……。
そう思い太陽を見上げる。旅立ち日和な快晴。
いいスタートだ!「おぉーい!置いてくぞー」
「えっ!まてよ!」
さぁ、俺たちの終わりなき旅の幕開けだ!
fin
「ごめんね」
私の母は物事が悪い方向に向かっていくと決まって
「ごめんね」と口にした。
たとえ、自分が悪くなくとも……。
その言葉に本来の意味は込められていなくとも、
物事をおさめるために使っていたその言葉は無意識に母の心の中に塵積もっていたのだと今なら思う。そして、その言葉は自分が悪くない立場のときほど、自分の中で無意識に不の言葉と変換されて、塵積もっていく。
その結果私の母は「他者承認欲求」になってしまった。なにかあるたびに「私は必要?」「私、役に立ててる?」と聞いてくるようになった。
そして、適当にあしらってしまったあかつきには、
「私は必要なかったの?私はあなた達にとって邪魔だったってこと?」
「じゃあ○んだほうがいいわよね」
と包丁を自分の首に当てるようになった。
だから、なるべくいつも頑張って返事をしている。
母をこのようにしてしまったのは自分達の失態なんだから…と言い聞かせて……。
でも、あのときはなるべく時短で済ませたかった。
なんてったってあの日は母の日だったからだ。
私の家は母の日をしっかりする家で、私も小さい頃から手紙を書いていた。母が他者承認欲求になってからもなんとか合間をぬって毎年書いていた。
その手紙を渡すとどんなときの母もとても喜んでくれて、その顔を見ると私も嬉しくなるほどだった。
だからあの日はなるべく話かけないでほしかった。
だが、そんな思いが届くはずもなく、なんならついもより多く話かけてきたほどだ。
始めの方はしっかり対応していたが、だんだん時間が迫ってきて、あまり母の方に意識が回らずつい
軽くあしらってしまった。
(よしっ!できた!)「お母さん!出来たよ!」
そう言い振り向いたときはもう手遅れで、私の母は自分の首に包丁を当てようとしていた。
「私、邪魔になってるんだね……」
私は必死で弁解をし、やめるように頼んだ。
それと同時に私がしてしまった事への重大さを身をもって実感した。
なんとか止めないと、自分がしてしまったんだ、自分でなんとかしないと………。
そんな膨大な思いを体は処理出来なくて、ついに私は、泣き出してしまった。
そんなこともお構い無しにどんどん包丁を首に当ててゆく母。
それを見ているのが本当に苦しくて、悔しくて、
どんな手をつかってでも止めたかった。
私が撒いてしまった種なのだから。
だから私は、自分の片手を母と包丁の間に入れ、もう片手で手紙 を持った。そして泣きながら言った。
「ねぇ、○ないで!!手紙、今年も書いたよ。」
その声はあまりにも細くて、とても震えていた。
私の目から溢れる涙は、手紙の上にぽたぽたとおちていて、そのところの色は濃くなっていて、水玉模様のようだった。
床には赤い液体がぽたぽたと音をたてて水溜まりをつくっていた。
母はやっと、正気に戻ったようで、包丁を手放し、膝から崩れおちて言った。
「ごめんね。こんな母でごめんなね。」
ここ数年は聞いていなかった口癖になんだか、昔にもどったような気がして、私の涙腺はもっと緩んだ。「私もごめんなさい。」
fin