半袖
あつーーい!!
最近は暑すぎる。雨でも暑い。
学校の帰り道なんて特に地獄。
「うぁー、とぉ~けぇ~るぅ~」
そう唸っているのは私。そんな私の横で、普通にキョトン顔でいるのは私の友達。こんなにも違う理由は周りからみれば一目瞭然。私の友達は涼しそうな半袖。それに対し私は長袖。
とけそうな日も長袖な理由は簡単、私は半袖が苦手なのだ。この文章だけを見ると私がとても悪いように思えるがそうではない。
私は小学生の頃いじめられていて、そのときの季節は夏。服装は半袖だった。だから高校生になった今でも、半袖を着るのには少し抵抗があり、買ってもすらもいない。
でも、こうして友達を見ていると本当に羨ましくなる。心情は着たいのに、身体が本能的な拒否をだす。同じ私の体だというのに、まるで意見が違う。
意味が分からない。
それでも、変わらないことにはかわりがないのだから、これからもとけそうな日を耐えなければならない。
「早く冬来て~」そう嘆きながら今日も長袖でとけそうな日を過ごす。
fin
月に願いを
僕は夜が好きだ。
誰にも邪魔されない、昼間のようにうるさくない、静かなこの刻が……
静かで何も考えない夜だからこそ、無意識にあの人のことを考えてしまう。どこに行ってしまったのだろうか。
あの人は、僕の胸と記憶に深く刻みを入れたあと、突然消えてしまった。
満月の日はあの人を思って手紙を書く。本人には届かない手紙を。手紙の内容は、その日その日にあの人に向けて思ったことを書く。そして、最後には
いつも決まって「ありがとう。」この5文字の感謝を書き、封をする。
あの人に会うことができたら1番に伝えたい言葉。
あの人に出会う前の僕の世界は黒白だった。僕のしている仕事にも誇りを持てなかった。でも、あの人に逢えて僕は、僕のしている仕事に誇りを持つことが出来た。世界だって様々な色を放った。あの人には感謝してもしきれないほどだ。
こんなに気持ちがあっても、あの人は僕の前に姿を表すことはなかった。以前より、仕事に誇りを持てるようにはなったが、あの人がいなくなってからの僕の世界はまた黒白の世界に戻ってしまった。
それほどまでにあの人の影響力は大きかった。
「もう1度逢いたい」
だから、満月の日に月に願いながら手紙を書く。
満月に願うと、どの日の月より願いを叶えてくれそうと、そう思ってしまうのだ。
僕の力では見つけ出すことが出来なかった。
僕は、あの人の何も知らなかった。力不足だった。
だから、皆が見えるであろう、月に願ってしまう。
あの人も見ることのできる月に向かって……。
「ここに帰ってきて」と、「逢いたい]と、
「あなたの居場所はここではないのか?」と、
願ってしまう。問いてしまう。あの人ではない月に…。
そして、あの人に会えた日の夜には
「今日は月が綺麗ですね。」とそう言いたい。
こんな膨大な想いや願いさえ受け止めてしまう月なら、僕の願いを叶えてくれると、そう錯覚してしまう。そう望んでしまう。そう願ってしまう……。
「逢いたいから」この理由だけで、がらでもないことをしてしまうほど人間は欲深い者なのか、と自分のことながら失笑してしまう。それでも願ってしまう。人間は真に大事にしたい者の為なら何でも出来てしまう。そういうものなのだと感じた。
「どこにいるの?」「逢いたいよ。」
「ここに帰ってきてよ。」「俺のいる場に……。」
そう願いながら眠りにつく。1粒の涙をこぼして…
fin
降り止まない雨
今日も雨か……当たり前のようになった光景に残念さと、不安さを覚える。(黒ちゃん元気かなぁ?)
あの夕刻の時間にあってから、学校のある平日以外でも会いにいくようになった。
でも最近は生憎の雨。雨が降る日は、あの子は顔を出してくれない。
だから、ここ一週間は会っていない。
今日もカレンダーにペンでバツをつける。
先月の22日、あの猫と会ってつけ始めた○と✕。
基準は簡単。会えたら○、会えなかったら✕だ。
ふと気になって先月のカレンダーを見ると○ばかりがついていた。(先月は○ばっかりだったんだ…)それに比較して今月は○と✕でよい争いをしている。
(明日は晴れたらいいのに…)その願って寝た日が何日あったことか……。
ついに雨が降っていない日がきた。そしてちょうど月曜日。みんなはしんどそうだが、私は舞い上がっていた。(やっと、あの子に会える!)
放課後に近づくほど高鳴る心臓、あたたかい暖色に染まっていく心情。私はこの上ないほどに浮かれれていた。
私は、終礼が終わると同時に教室から飛び足す勢いで歩き、ついに目的地に着いた。
ハァ、ハァ、「おーい。来たよー」こう言うと晴れの日は絶対来る。
だがおかしい。いつまでたってもいつものかわいい声はきこえない。
あれ?いない?場所変えた?飼い主さん来た?
数多くの疑問が私の体を駆け巡って脳を真っ白にした。
そのときふと視界の端にうつった倒れている黒いなにか。私は見たくなかった。認めたくなかった。でも、気になる。私は滲んだ視界の中央にうつした。はっきり見えた。黒い猫が倒れているところを。
私は膝から崩れてしまった。
なんで?どうして?私が悪い?誰が悪い?
そんな疑問が全身を巡る。誰も悪くない。
この世はこうなんだ。私は、初めて現実を直視したような感じがした。そこから私の心の中央にはぽっかり穴があいてしまった。気づけば梅雨なんてとっくの昔に過ぎていて、外ではせみがうるさく鳴いて、太陽はコンクリートをこれでもかと照らしているような季節になった。それなのに私の心にはずっと降り止まない悲しみの青の雨が降っている。
fin
あの頃の私へ(物語じゃないです)
小学校低学年までは自分がみんなを引っ張っていっていると思っていたね。自分が引っ張らないと…という気持ちは嫌ではなかったよね。
でも、ある時気づいたんだよね。引っ張っていたんじゃなくてみんな自分で歩いていて、その先頭付近に自分がいるだけだと。
あのときはショックだったよね。
自分の存在意義、存在価値が分からなくなって…
人との関わり方が分からなくなって…
いつしか無意識に仮面をつけるようになって…
それが当たり前になって…くるしくなくなって…
いつしか自分の本当が分からなくなって……
難しいよね人間関係って……
でもこれが自分なんだってこれでいんだって今では思える。
逃れられない
「今夜は、月がキレイですね」
その声に息が詰まった。なんで、どうして、そんな考えが全身を巡る。なんで、なんで、なんで………私逃げてきたのに……
私の彼氏は愛が重い。100人中100にんがそう言うほど、誰もが認める愛重彼氏だ。そんなことを知らなかった私は彼からの告白にふたつ返事で了承した。
たまに教室の関係ですれ違うことがあって、一瞬だったけど、気になってはいたし……。
そう思い、付き合って2年。
さすがにもう無理。そう思った私は彼から逃げることにした。彼氏が大学から帰ってくる前に友達の家に避難!準備もとっても入念にし、決行の日がきた。別れ理由や最後の挨拶もろもろはすべて手紙に書いて、テーブルの上に置いていた。
「じゃあね。さよなら。」
そう言い家の鍵をしめ、ポストに入れてマンションを出た。友達全面協力の元、友達の家まで車で送ってもらえることになった。
友達の家の物は貸して貰えるらしく、私は服だけ持っていった。ありがたい話だ。
その日の夜、私は夜風に当たりたくて、散歩に出かけた。「月がキレイ。」無意識そう口にしてしまうほど今日の月はキレイな三日月だった。彼が告白してきた夜もこんなキレイな三日月だったなぁと過去の思い出に想いをはせる。
それは終わったんだ。彼の思い出に蓋をする。そのときだった。
「今夜は、月がキレイですね」
私の隣にきた男が控えめに言った。
「なんで…」その声は震えていた。
「言ったじゃないか。」「ずっと君を離さないってね♡」の言葉に人工的な不快、恐怖感と本能の嬉しさがあった。
あぁ、やっぱり私は彼から逃れられないんだ。
やっぱり、私は彼にハマっているんだ♡
fin