Noir

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逃れられない

「今夜は、月がキレイですね」
その声に息が詰まった。なんで、どうして、そんな考えが全身を巡る。なんで、なんで、なんで………私逃げてきたのに……

私の彼氏は愛が重い。100人中100にんがそう言うほど、誰もが認める愛重彼氏だ。そんなことを知らなかった私は彼からの告白にふたつ返事で了承した。
たまに教室の関係ですれ違うことがあって、一瞬だったけど、気になってはいたし……。
そう思い、付き合って2年。
さすがにもう無理。そう思った私は彼から逃げることにした。彼氏が大学から帰ってくる前に友達の家に避難!準備もとっても入念にし、決行の日がきた。別れ理由や最後の挨拶もろもろはすべて手紙に書いて、テーブルの上に置いていた。
「じゃあね。さよなら。」
そう言い家の鍵をしめ、ポストに入れてマンションを出た。友達全面協力の元、友達の家まで車で送ってもらえることになった。
友達の家の物は貸して貰えるらしく、私は服だけ持っていった。ありがたい話だ。
その日の夜、私は夜風に当たりたくて、散歩に出かけた。「月がキレイ。」無意識そう口にしてしまうほど今日の月はキレイな三日月だった。彼が告白してきた夜もこんなキレイな三日月だったなぁと過去の思い出に想いをはせる。
それは終わったんだ。彼の思い出に蓋をする。そのときだった。
「今夜は、月がキレイですね」
私の隣にきた男が控えめに言った。
「なんで…」その声は震えていた。
「言ったじゃないか。」「ずっと君を離さないってね♡」の言葉に人工的な不快、恐怖感と本能の嬉しさがあった。
あぁ、やっぱり私は彼から逃れられないんだ。
やっぱり、私は彼にハマっているんだ♡

fin

5/23/2024, 12:22:00 PM