Noir

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降り止まない雨

今日も雨か……当たり前のようになった光景に残念さと、不安さを覚える。(黒ちゃん元気かなぁ?)

あの夕刻の時間にあってから、学校のある平日以外でも会いにいくようになった。
でも最近は生憎の雨。雨が降る日は、あの子は顔を出してくれない。
だから、ここ一週間は会っていない。
今日もカレンダーにペンでバツをつける。
先月の22日、あの猫と会ってつけ始めた○と✕。
基準は簡単。会えたら○、会えなかったら✕だ。
ふと気になって先月のカレンダーを見ると○ばかりがついていた。(先月は○ばっかりだったんだ…)それに比較して今月は○と✕でよい争いをしている。
(明日は晴れたらいいのに…)その願って寝た日が何日あったことか……。
ついに雨が降っていない日がきた。そしてちょうど月曜日。みんなはしんどそうだが、私は舞い上がっていた。(やっと、あの子に会える!)
放課後に近づくほど高鳴る心臓、あたたかい暖色に染まっていく心情。私はこの上ないほどに浮かれれていた。
私は、終礼が終わると同時に教室から飛び足す勢いで歩き、ついに目的地に着いた。
ハァ、ハァ、「おーい。来たよー」こう言うと晴れの日は絶対来る。
だがおかしい。いつまでたってもいつものかわいい声はきこえない。
あれ?いない?場所変えた?飼い主さん来た?
数多くの疑問が私の体を駆け巡って脳を真っ白にした。
そのときふと視界の端にうつった倒れている黒いなにか。私は見たくなかった。認めたくなかった。でも、気になる。私は滲んだ視界の中央にうつした。はっきり見えた。黒い猫が倒れているところを。
私は膝から崩れてしまった。
なんで?どうして?私が悪い?誰が悪い?
そんな疑問が全身を巡る。誰も悪くない。
この世はこうなんだ。私は、初めて現実を直視したような感じがした。そこから私の心の中央にはぽっかり穴があいてしまった。気づけば梅雨なんてとっくの昔に過ぎていて、外ではせみがうるさく鳴いて、太陽はコンクリートをこれでもかと照らしているような季節になった。それなのに私の心にはずっと降り止まない悲しみの青の雨が降っている。

fin

5/25/2024, 12:46:58 PM