Ryu

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7/16/2025, 4:15:46 AM

二人だけの世界。
二人だけの電車。
混み合った車内で、身をくねらせてイチャつきあう二人。
何とも幸せそうだ。

こちらは、仕事帰りのサラリーマン。
目の前で繰り広げられる盲目的なラブ&タッチに、スマホに集中しつつ、意識が撹乱される。
耳にイヤフォンを突っ込み、お気に入りの曲を流して、こちらはこちらで一人だけの世界に入り込もうとするが、ぶつかってくるかと思われるほどに身を揺らしボディタッチを繰り返す二人に、言いたいことはひとつだけ。
場所をわきまえろ。

お前らの愛は祝福する。
だが、見せつけられる筋合いはない。
俺達の勝手だとか言うんなら、その自分勝手は自分達だけの場所でやれ。
誰も邪魔しない。

恥ずかしい、という感情は、人間にとって大切なんだな。
善悪とは違うところで、人の暴走を止めてくれる。
愛の深さと所構わずは比例しちゃいけない。
深い愛があればこそ、パートナーも含めて他人の中で生きていることを尊重して欲しい。
世界が滅んで、二人だけの世界に生きるなら話は別だが。

電車は走る。
二人は変わらず愛を深め合う。
これがもし我が娘だったら、と考える。
人の恋路に説教するつもりはないが、遺伝子の存在に疑問を持つだろう。
世の中は変わってゆく。
それは仕方のないこととして、理性の薄れてゆく世界の行く末を思う。
暑かったら全裸になるか?人前で排泄するか?
それを望むなら、人として生まれて来なければ良かったのに。

今日も我が家の猫は、全裸でトイレを済ませた後、身をくねらせてイチャつきあっている。
何とも幸せそうだ。

…二匹ともオスだが。

7/15/2025, 3:48:09 AM

もうなんか、夏については書き尽くした気分。
書いても書いても涼しくはならないし。
めっちゃ怖いホラーでも書ければ、自家発電で涼しくなれそうな気もするけど、そんな才能は持ち合わせていない。
なので、ちょっと怖いホラーに挑戦。
あくまで、ちょっと、だ。

夏。
寝苦しさに目を覚ますと、閉めたはずの寝室のドアが開いていることに気付く。
そこから廊下が伸び、その奥にキッチンがあるが、そこに置かれたダイニングテーブルに、誰かが座っているようなシルエットが見えた。
「お、おい、あそこに誰かいるように見えないか?」
「うん、いるね」
部屋は暗く、外からの街明かりでうっすらと見えるのみ。
怯えながらも、泥棒の可能性も考え、近くにあったハンガーを手にしてゆっくりとベッドを出る。
シルエットは微動だにしない。
だが、間違いなく何かがイスに座っている。
廊下を慎重に歩いてキッチンに辿り着き、そっと照明のスイッチを手探りし、意を決して明かりをつけた。

果たして、そこには、テーブルを前にイスに座る大きなクマのヌイグルミ。
…そうだ。
今夜は妻が友達の家に泊まると言って、一人の夜は寂しいでしょ?とからかって、このクマのヌイグルミをこの席に座らせたんだった。
夕飯時は目の前のクマを見ながら苦笑していたが、今はすっかり忘れていた。
なんだ、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ってやつか。
イイ年した大人が、こんなもんにビビってハンガー片手に構えてしまうなんて、恥ずかしい。
さっさと寝室に戻って…と考えたところであることに気付き、もう私は、あの部屋には戻れそうにない。

…うん、いるよ。

ホラーというより怪談話か。
もちろん、まるで涼しくはならない。
最後のオチセリフは、無い方がいいと思ったんだけど、誰にも気付いてもらえないのも寂しくて。
あ、いや、決して皆さんの読解力をバカにしてるわけではないです。
自分の文章力の問題ですね。

あ、そろそろ、Ryuが戻ってきますので、私は消えることにします。
それでは皆様、快適な夏をお過ごしくださいませ。

7/13/2025, 3:13:39 PM

「ほら、あのデッカイ家。新しい家族が引っ越してきただろ。昨夜、挨拶に来たよ」
「へえ、ずっと空き家だったのにな。やっと人が入ったんだ」
「なんか、ヤバイ事件があったんじゃなかったっけ、あの家」
「強盗が入って、家族全員が殺されたんだよ。ニュースでもやってたから、よく覚えてる」
「そうだ、それだ。そんな家によく入ろうと思ったよな。事故物件じゃないか」
「どんな家族だった?挨拶に来たんだろ?」
「どんなって…まあそー言われてみると、なんか訳ありそうで、陰気なムードが漂っていたような…」
「いや、そんなんじゃなくてさ、裕福そうな一家だったか?」
「え?いや、そんなの分かんないよ。玄関で父親に挨拶されただけだし」
「父親はどんな感じだった?子供は息子?娘?」
「何だそれ。父親は…まあ普通の優しげなパパって感じかな。娘が一人いるそうだよ」
「…そうか。いや、あんな家に住もうと思うくらいだから、相当変わってる家族なんじゃないかと思ったけど、普通っぽいな」
「まあ…そうだな。そーいえば、過去にあの家に住んでいた家族も、似たような家族構成じゃなかったか?」
「ああ、そうだよ。父親は大企業の社長でさ、タンス預金の額が半端なかったんだ。それに、猫も飼ってたな。気性が荒くて、捕まえるのも大変だったけど、高額で取引される種類の猫だった」
「…おい、待てよ。なんでそんな…」
「と言っても、三毛猫のオスじゃないぜ。アシェラとかいって、日本ではあんまり取引されてない品種だとか言ってたな」
「…誰が?」
「そりゃもちろん取引業者が…」
「…ふーん。あ、そういや、家族構成は似てたけど、昨夜挨拶に来た父親は筋肉隆々でさ、なんか格闘技の有段者だって言ってたな」
「…マジか」
「ああ。だから娘にも格闘技を習わせてて、奥さんも含めて格闘技一家だって」
「さっき、陰気なムードが漂ってたって言ってなかったか?」
「だから怖いなーって。何考えてるか分かんないだろ」
「うん…まあ、別にもういいんだけどさ。じゃあ、そろそろ行くわ」
「ああ、じゃあな」

…友達の縁を切ることになりそうだ。
まさか、あいつに先を越されていたとは。
通りであいつ、近頃羽振りが良さそうだったもんな。
今度の獲物は渡すわけにはいかない。
あの、メガネの貧弱そうな父親なら、俺一人で何とかなる。

よし、今夜、決行しよう。

7/12/2025, 11:39:19 PM

風鈴。
あんなもので、この夏の暑さをしのげるわけもない。
見た目や音は綺麗だが、何の冷却装置もないんだから。
当時は、あんなんで涼が取れていたんだろうか。
それは羨ましい。
その当時に生きていた自分が羨ましい。

夏は嫌いじゃなかった。
カブトムシの季節だった。
市民プールは学校のプールより深さがあって、不安と冒険心が疼いた。
毎朝のラジオ体操は嫌だったけど、学校以外で会えるクラスメート達が新鮮だった。
すべて今は遠い昔。
夏は変わってしまった。

…いや、変わったのは自分の方か。
今も子供達はカブトムシを探し、市民プールで泳ぎ、ラジオ体操に通っているのだろうか。
いや、我が子達にはなかったな、そんな夏休み。
そして、風鈴なんて、もう何年も見ていない。
風鈴の音…案外、今聞いてみたら、心が涼んだりして。
その澄んだ音色。軽やかな佇まい。
そんな風情が満載だった、あの頃の夏。

チリリン、ってね。
物悲しく、夏の儚さでもある、風鈴の音。
今は、ガンガン働くエアコンと扇風機の音。
そして、時折鳴るスマホの着信音。
ピコリン、ってね。

7/11/2025, 11:25:17 PM

逃げたくなる気持ち、分かるだろ?
この狂った夏の暑さ、もう嫌なんだよ。
命が削られていく気がしてる。
それでも日々、この炎天下に立って、たくさんの人達をお出迎えだ。
ここが私の職場だから。
離れるわけにはいかない。

60歳にもなって、こんな試練が待っていたとは。
事業には成功したはずだが、この暑さは想定外だった。
スーツの上着くらい脱ぎたいもんだが、これが私のトレードマークでもあるから、このスタイルを変えるわけにもいかないんだ。
こうなると、もはやお客様の笑顔だけが心の支え。
ご満足いただけましたか?

私の名前は、ハーランド・デイヴィッド・サンダーズ。
皆には、もうひとつの名前の方が知られているのかな。
いずれにせよ、この姿をたくさんの人に認知され、ここに私がいなくちゃおかしい、という状況を作り上げた。
だから、ここを離れるわけにはいかない。
白いスーツを着て、杖を腕にかけて、直立不動で耐えるしかない。

苦肉の策で、心だけ、逃避行。
いつかの記憶で、道頓堀。
何故か皆に祝福されて、冷たい川の水の中へ。
その後しばらく職場には戻ってこれなかったけど、今なら川に飛び込むのも悪くないな。
それほどの暑さだよ。この国の夏。
こんな暑さの中でこそ、レッドホットチキンはいかがですか?

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