Ryu

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7/15/2025, 3:48:09 AM

もうなんか、夏については書き尽くした気分。
書いても書いても涼しくはならないし。
めっちゃ怖いホラーでも書ければ、自家発電で涼しくなれそうな気もするけど、そんな才能は持ち合わせていない。
なので、ちょっと怖いホラーに挑戦。
あくまで、ちょっと、だ。

夏。
寝苦しさに目を覚ますと、閉めたはずの寝室のドアが開いていることに気付く。
そこから廊下が伸び、その奥にキッチンがあるが、そこに置かれたダイニングテーブルに、誰かが座っているようなシルエットが見えた。
「お、おい、あそこに誰かいるように見えないか?」
「うん、いるね」
部屋は暗く、外からの街明かりでうっすらと見えるのみ。
怯えながらも、泥棒の可能性も考え、近くにあったハンガーを手にしてゆっくりとベッドを出る。
シルエットは微動だにしない。
だが、間違いなく何かがイスに座っている。
廊下を慎重に歩いてキッチンに辿り着き、そっと照明のスイッチを手探りし、意を決して明かりをつけた。

果たして、そこには、テーブルを前にイスに座る大きなクマのヌイグルミ。
…そうだ。
今夜は妻が友達の家に泊まると言って、一人の夜は寂しいでしょ?とからかって、このクマのヌイグルミをこの席に座らせたんだった。
夕飯時は目の前のクマを見ながら苦笑していたが、今はすっかり忘れていた。
なんだ、「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ってやつか。
イイ年した大人が、こんなもんにビビってハンガー片手に構えてしまうなんて、恥ずかしい。
さっさと寝室に戻って…と考えたところであることに気付き、もう私は、あの部屋には戻れそうにない。

…うん、いるよ。

ホラーというより怪談話か。
もちろん、まるで涼しくはならない。
最後のオチセリフは、無い方がいいと思ったんだけど、誰にも気付いてもらえないのも寂しくて。
あ、いや、決して皆さんの読解力をバカにしてるわけではないです。
自分の文章力の問題ですね。

あ、そろそろ、Ryuが戻ってきますので、私は消えることにします。
それでは皆様、快適な夏をお過ごしくださいませ。

7/13/2025, 3:13:39 PM

「ほら、あのデッカイ家。新しい家族が引っ越してきただろ。昨夜、挨拶に来たよ」
「へえ、ずっと空き家だったのにな。やっと人が入ったんだ」
「なんか、ヤバイ事件があったんじゃなかったっけ、あの家」
「強盗が入って、家族全員が殺されたんだよ。ニュースでもやってたから、よく覚えてる」
「そうだ、それだ。そんな家によく入ろうと思ったよな。事故物件じゃないか」
「どんな家族だった?挨拶に来たんだろ?」
「どんなって…まあそー言われてみると、なんか訳ありそうで、陰気なムードが漂っていたような…」
「いや、そんなんじゃなくてさ、裕福そうな一家だったか?」
「え?いや、そんなの分かんないよ。玄関で父親に挨拶されただけだし」
「父親はどんな感じだった?子供は息子?娘?」
「何だそれ。父親は…まあ普通の優しげなパパって感じかな。娘が一人いるそうだよ」
「…そうか。いや、あんな家に住もうと思うくらいだから、相当変わってる家族なんじゃないかと思ったけど、普通っぽいな」
「まあ…そうだな。そーいえば、過去にあの家に住んでいた家族も、似たような家族構成じゃなかったか?」
「ああ、そうだよ。父親は大企業の社長でさ、タンス預金の額が半端なかったんだ。それに、猫も飼ってたな。気性が荒くて、捕まえるのも大変だったけど、高額で取引される種類の猫だった」
「…おい、待てよ。なんでそんな…」
「と言っても、三毛猫のオスじゃないぜ。アシェラとかいって、日本ではあんまり取引されてない品種だとか言ってたな」
「…誰が?」
「そりゃもちろん取引業者が…」
「…ふーん。あ、そういや、家族構成は似てたけど、昨夜挨拶に来た父親は筋肉隆々でさ、なんか格闘技の有段者だって言ってたな」
「…マジか」
「ああ。だから娘にも格闘技を習わせてて、奥さんも含めて格闘技一家だって」
「さっき、陰気なムードが漂ってたって言ってなかったか?」
「だから怖いなーって。何考えてるか分かんないだろ」
「うん…まあ、別にもういいんだけどさ。じゃあ、そろそろ行くわ」
「ああ、じゃあな」

…友達の縁を切ることになりそうだ。
まさか、あいつに先を越されていたとは。
通りであいつ、近頃羽振りが良さそうだったもんな。
今度の獲物は渡すわけにはいかない。
あの、メガネの貧弱そうな父親なら、俺一人で何とかなる。

よし、今夜、決行しよう。

7/12/2025, 11:39:19 PM

風鈴。
あんなもので、この夏の暑さをしのげるわけもない。
見た目や音は綺麗だが、何の冷却装置もないんだから。
当時は、あんなんで涼が取れていたんだろうか。
それは羨ましい。
その当時に生きていた自分が羨ましい。

夏は嫌いじゃなかった。
カブトムシの季節だった。
市民プールは学校のプールより深さがあって、不安と冒険心が疼いた。
毎朝のラジオ体操は嫌だったけど、学校以外で会えるクラスメート達が新鮮だった。
すべて今は遠い昔。
夏は変わってしまった。

…いや、変わったのは自分の方か。
今も子供達はカブトムシを探し、市民プールで泳ぎ、ラジオ体操に通っているのだろうか。
いや、我が子達にはなかったな、そんな夏休み。
そして、風鈴なんて、もう何年も見ていない。
風鈴の音…案外、今聞いてみたら、心が涼んだりして。
その澄んだ音色。軽やかな佇まい。
そんな風情が満載だった、あの頃の夏。

チリリン、ってね。
物悲しく、夏の儚さでもある、風鈴の音。
今は、ガンガン働くエアコンと扇風機の音。
そして、時折鳴るスマホの着信音。
ピコリン、ってね。

7/11/2025, 11:25:17 PM

逃げたくなる気持ち、分かるだろ?
この狂った夏の暑さ、もう嫌なんだよ。
命が削られていく気がしてる。
それでも日々、この炎天下に立って、たくさんの人達をお出迎えだ。
ここが私の職場だから。
離れるわけにはいかない。

60歳にもなって、こんな試練が待っていたとは。
事業には成功したはずだが、この暑さは想定外だった。
スーツの上着くらい脱ぎたいもんだが、これが私のトレードマークでもあるから、このスタイルを変えるわけにもいかないんだ。
こうなると、もはやお客様の笑顔だけが心の支え。
ご満足いただけましたか?

私の名前は、ハーランド・デイヴィッド・サンダーズ。
皆には、もうひとつの名前の方が知られているのかな。
いずれにせよ、この姿をたくさんの人に認知され、ここに私がいなくちゃおかしい、という状況を作り上げた。
だから、ここを離れるわけにはいかない。
白いスーツを着て、杖を腕にかけて、直立不動で耐えるしかない。

苦肉の策で、心だけ、逃避行。
いつかの記憶で、道頓堀。
何故か皆に祝福されて、冷たい川の水の中へ。
その後しばらく職場には戻ってこれなかったけど、今なら川に飛び込むのも悪くないな。
それほどの暑さだよ。この国の夏。
こんな暑さの中でこそ、レッドホットチキンはいかがですか?

7/10/2025, 9:49:36 PM

今までこうやって生きてきた
波風立てずに冒険もせずに
そのおかげで無事に大人になって
なんの変哲も無い ただの男を生きてる

命懸けのスリルなんていらない
願わくば健康に長生きしたい
その願いは叶って大きなケガも無く
メタボだけ気にしてる そんな俺の毎日

一歩踏み出すトライアル
臆せずに進め 喜びはそこにある

自分を好きになるために
人生をカラフルに変えるために
いつだってトライアル ここがその一歩

世界はそんなに複雑じゃない
道なき未知は成長のためにある
だからトライアル 喜びはそこにある

そして明日は 今日とは違う自分になる

一歩踏み出せトライアル
波風立てて 海原を突き進め

心の中の羅針盤で
地図は持たずに方角だけ決めて
今日もトライアル 向かい合うスリル

世界は冒険のためのステージ
自分で作り出してゆくアトラクション
そうさトライアル 喜びはそこにある

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