「なんとなく、クリスタル」
「ダーククリスタル」
「クリスタルキング」
この辺を知ってる人達とは、話が合いそう。
とゆーか、世代が窺われる。
クリスタルは、なんかキラキラした水晶みたいなモノ?
あんまり縁がないな。
割れ物恐怖症かもしんない。
小学生の頃、職員室で先生に「このフラスコを教室に持って行って」と頼まれて移動中、階段の手前で「俺、ここで転んで割っちゃうんじゃないかな?」とか考えながら階段を上ったら、見事に転んで粉々に割った。
言霊ってやつだ。
それからは、ガラスのハートならぬ、クリスタルハート❤でやらせてもらってる私です。
夕方、妻がパートから帰ってきて、しばらくするとキッチンから漂ってくるトウモロコシの匂い。
何だかワクワクする。
夏の風物詩じゃないだろうか、トウモロコシ。
美味いしね、あれ。
トウモロコシ嫌いな人なんていないんじゃないか?って思ってたら、自分の娘がトウモロコシ苦手な人だった。
まあ、おかげで彼女の分も私がいただく。
茹で上がり、テーブルに置かれ、漂う夏の匂い。
夏祭りの夜を思い出す、と言いたいところだが、屋台のトウモロコシは、茹でるより焼く方がメジャーだよな。
焼きトウモロコシ。あれもまた美味い。
でも、久しく夏祭りなんて行ってないな。
あの雰囲気は好きなんだけど、いかんせん最近の夏は暑すぎて。
行ったとしても、かき氷食べて終わっちゃいそう。
まあそれも、夏の風物詩だったりするが。
その季節季節に合うものがある。
特に食材や料理には旬ってものがあるから、必然的に一番合う季節が限定される。
夏なら、トウモロコシ、かき氷、スイカ、そうめん、冷やし中華、等々。
まあ、一年中食べたいものだらけだが。
でも、夏の匂い。
これを感じるための旬ってやつだろう。
幼い頃の夏特有の空気感、好きだったな。
故郷は雷の多い地域で、夕立ちとともに遠く雷鳴を聞いていた、実家の縁側。
世界に自分一人になったような空想を働かせて、静かに暗雲立ち込める空を見ていた。
何か、恐ろしいモノが迫りくる雰囲気。
だけど、安全な場所に守られている感覚。
少年時代の夏休み。
…そんな情緒はどこ行った?
縁側にはエアコンの風が行き届かなくて、長時間はいられない。
夕立ちというよりゲリラ豪雨。
情緒が…いや、自分が年を取ったということか。
なんせ、五十何度目かの夏。
もう、夏の匂いを嗅ぎすぎて、鼻が麻痺してるんだ。
今の私をあの頃に引き戻してくれるのは、夕刻のトウモロコシの匂いくらいのもんだしな。
そよ風がカーテンを揺らす。
その向こうに、会いたかった君がいる。
おぼろげな記憶を頼りに、ここまで来た。
本当だろうか。
風に揺れるカーテンはボロボロだ。
その病室も荒れ果て、病院自体が廃虚と化している。
こんなところに君が?
僕の憧れだった君がいるというのか。
僕はゆっくりと、揺れるカーテンの端をつかんで、そっと横にスライドさせた。
白いベッドに、横たわる君。
確かに君だった。
だけどそれは、緻密に描かれた、絵だった。
部屋の片隅に大きなキャンバスが置かれ、そこに、天使のように眠る君の姿が描かれていた。
これは、僕が描いたもの。
かつて、この病院に僕が入院していた頃に。
愛しかった君を想い、毎晩のようにベッドに腰掛け、筆を執り続けた。
いつか退院して、君にまた出会うことを夢見て。
願いは叶わず、こんなに時は過ぎた。
そして僕は、この絵の存在すら忘れていた。
退院して、君ではない誰かと家庭を持ち、僕の空想でしかなかった君にサヨナラを告げて。
いくつも失いまた一人になり、君を探してここまで来た。
おぼろげな記憶を頼りに。
薄汚れたベッドに座り、目覚めることのない君を見つめる。
もう、一緒になることを願うこともない。
ただ、この場所で君と過ごした日々を思い出したかっただけ。
病に苦しんでいた僕の心の糧となり、僕の行く末を導いてくれた君のことを。
白いカーテンの向こうから、君の声が聞こえる。
「さあ、そろそろいきましょうか」
僕は、ベッドから立ち上がり、キャンバスを抱えてカーテンを開ける。
「見つけたよ。君の絵」
「持って行くの?」
「うん。本当は、ここに入院していた頃に、そのつもりだったんだけど」
「そっか。幸せな時間が増えて良かったね」
「そうだね。もう、思い残すことはないよ」
朽ち果てた病室の片隅でカーテンが揺れていた。
もう、その部屋には誰もいない。
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」という言葉を思い出した。
何だか怖い。
人間の根源的な恐怖を言い表わしているような気がする。
青く深い深淵。
そこには、得体のしれない恐怖が潜んでいる。
そして、こちらがその姿を見ようと深淵を覗き込む時、すでにその存在は、こちらをじっと見つめているのだ、と。
自分はすでに標的、あるいは捕食されようとしているのかもしれない。
…なんて、勝手に不気味な展開を思い描いてしまう。
そーいえば、その名の通り、「ディープ・ブルー」って映画があったな。
巨大ザメが襲ってくる映画。
まさに、深淵から虎視眈々とこちらを狙っている生物のイメージだ。
それにしても、巨大ザメの映画、多いよな。
全部見てるわけじゃないが、友好的な巨大ザメの映画なんて見たことがない。
異星人や幽霊なら、「E.T.」や「キャスパー」なんてのもあるが、そんな風には描けない恐怖の存在なんだろう、サメは。
あ…「ファインディング・ニモ」…。
ま、まあ、どんな生き物にも個性はあるってことか。
まさに青く深く、計り知れず、無限の可能性が秘められている。
…え?無理やり過ぎる?
いや、深海の生物なんて、見た目から個性だらけだと思うし。
とにもかくにも、得体の知れない存在をイメージしてしまうことには違いない。
青く深く。
これをお題にした理由も計り知れず、その深淵にいる中の人の真意も聞いてみたい。
早くも、夏の気配は訪れて、ベランダで猫がセミを追いかけ回す。
勘弁してくれ。
エアコンフル回転の夏。冷感グッズ漁りまくりの夏。
これ以上、夏を嫌いにさせないでくれ。
チューブやサザン、山下達郎が聴きたくなる夏。
心地良い夏の空気を、もう一度我が人生に。
蒸した鶏は美味いが、蒸したオッサンなど犬も食わない。
食う犬も暑さで道端にへたばってる。
まったく、この国はどうなってしまうのか。
もはや、夏の気配なんてレベルじゃなく、夏そのものが押し寄せてきてる。
まだ早いよ。初夏はどこ行った。
真夏の熱風に煽られる季節はまだ早い。
かき氷でも食べに行こう。
こうなったらもう、腹の中から冷やしていくしかない。
気温が変わらないなら、自分自身を変えていくしかない。
夏の気配なんかぶっ壊れてしまってもいい。
冷やしすぎてお腹がぶっ壊れるのは困るが。
そういえば、トイレの暑さはどうすればいいんだろう?
トイレ用のエアコンなんてあるのかな?
扇風機なんて、昭和の夏の冷房器具と成り果てた。
それだけじゃ、屋内での汗すら止めることは出来ない。
真夏。
もしエアコンが止まったら、それは我が家の死活問題となる。
日々、エアコンの設置された壁の下で跪き、今年の夏も壊れませんように、と祈るばかり。
…嘘だけど。
真夏の気配に浮かされて、ダラダラと無意味な戯言を書き続ける。
暑さを理由に仕事とか学校とかがお休みになる日は来るのかな。
外に出ちゃ危険なレベルとかになって。
そしたら、家でのんびり、エアコンの涼風の下で、もう少しまともな短編のひとつでも…ああ、休日の今が、まさにその状態だった。
何でもかんでも、夏のせいにしちゃいかんね。