Ryu

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6/9/2025, 3:10:31 AM

河原の土手。
遠くにスカイツリー。
河川敷では、草野球の試合が白熱しているようだ。
それを見下ろしながら、歩く。

「野球、興味あったっけ?」
「いや、別に…暑いのに、よくやるなと思って」
「ひでえ感想だな。少年達が頑張ってんのに」
「俺も、あれくらいの頃は頑張ってたよ」
「…野球、やってないだろ?」
「うん。野球じゃなくて、頑張って生きてた。ボール遊びしてる暇なんてなかったしさ」
「彼らだって、遊びじゃなくて勝負してるんだよ」
「負けても生きていけるだろ。命がけでやるもんでもない」
「お前…どんな少年時代過ごしたんだよ」
「そりゃ、玉や矢羽根の雨あられの中を掻い潜ってだな…」
「ウソつけ」

あながち、嘘ではないのかも。
彼の生きる世界では、こちらの常識は意味を持たない。

「なあ、あのでっかいタワー、登れんのか?」
「スカイツリー?展望台まで登れるよ。俺は登ったことないけど」
「今度来た時は、案内してくれよ。あれに登ったら、昔の俺の家も見つけられるかも」
「無理だって。都内にどんだけビルがあると思ってんだよ」
「空襲で焼けたんじゃなかったのか?」
「いつの話だよ」

鉄橋の下を歩く。
くぐり抜けて、振り返ると彼はいなかった。
自分の世界へ帰ったのだろう。
神出鬼没な彼は、時折こうして俺の散歩中に現れる。
誰なのかも知らない。どこから来たのかも。
別の世界線。
こちらの世界より、少しだけ不遇な状況らしい。

「昔の俺の家…か。まだまだあいつは、謎が多すぎるな」
だけど、深く追求する気にはならない。
こうして、散歩の時の話し相手になってくれるだけで、そして、ちょっと興味深い話を聞かせてくれるだけで、それ以上は知らなくてもいいと思ってる。
たぶん、俺の人生にどこかで関わっている存在なのだろう。
何故かそんな気がする。

河原の土手の上から、遠くに見える東京スカイツリーを眺めた。
あいつの住む街にも、いつかあんなタワーが建って、あいつの思い出を見つけられたらいいな、と思った。

6/7/2025, 7:15:49 PM

あたかも、夢見る少女のように、その中年のおっさんは、ショーウィンドウの向こうを見つめていた。
新車が並んでいるカーディーラーのショールーム。
それは、汚れや傷ひとつないボディを自慢気に輝かせて、最新モデルであることに誇りさえ感じさせるような佇まいで。

単なる鉄の箱なのにな…いや、走る鉄の箱、か。
…いやいや、走って、いろんな場所に連れて行ってくれて、たくさんの思い出を作る手助けをしてくれる、カッコよく作られた鉄の箱、だ。
これを人は、マイホームの次くらいに高いお金を差し出して、手に入れる。

まさに、夢見る少女が憧れる男性のような、手に入れ難いが諦めることの出来ない、そんな存在が新車だ。
そーいえば昨今、ガソリン代も高騰していて、高額な買い物だけに、消費税の減税の行く末も気になる。
そんな現状に抗ってでも、あの神々しい鉄の箱を我が物にしたい。

いっそのこと、夢は夢で終わらせて、23年乗り続けている今の車が、完全に沈黙するまで付き合っていこうか。
それこそ、いろんな場所に連れて行ってくれて、たくさんの思い出を作る手助けをしてくれた、私の愛車だ。
まだまだ走れるのなら、手放したくはない。

夢見る少女だっていつかは、憧れを憧れのままで終わらせても、現実の暮らしの中で、自分に合ったパートナーを見つけて幸せを手に入れるはずだ。
そのパートナーと、永遠の愛を誓い添い遂げる…そーか、「死が二人を分かつまで」…か。

ならばやはり、今の車が動かなくなるまで、付き合っていくべきか。
その中年のおっさんは、ショーウィンドウの前で夢見た挙句、結局一番現実的な結論へと辿り着いた。
こんなもん、単なる鉄の箱じゃないか。
そりゃ、最新システムの安全性能たるや、今後認知が衰え始めるおっさんには魅力だが…。

もしくは、夢見る少女だって、場合によっては妥協するかもな。
もう少しランクを落として…現実的に手が届くところで交渉する。
いや…現実的といったところですでに夢見てないな。
ああ、もうやめよう。
なんで私は、自分の車選びの苦悩をこんなところに書いているのか。

夜も更けて、帰宅した中年のおっさんは、浅い眠りの中で新車購入の夢など見ながら、就寝。
その寝顔は、まるで夢見る少女のように…。

6/7/2025, 2:56:36 AM

さあ行こう てっぺんはまだまだ
さあ行こう サボるのはまた今度
さあ行こう 人生は思うより長い
さあ行こう 今は波に乗って Take-Off

さあ行こう うまくやれなくたっていい
気持ちが晴れ渡るような あっけらかんで行こう
さあ飛ぼう 羽が無いなら階段で
天空のビルを駆け上がって 屋上からスカイダイビング

風に乗って 風に流されて
波に乗って 波に流されて
自由気ままに どうとでもなれの気持ちで
ほんの少し舵を取って ゴールだけは見誤らずに

さあ行こう てっぺんはこれから
さあ行こう サボタージュ無しで
さあ行くよ 人生は思うより短い
さあ行くぞ 今は風に乗って Take-Off

行きたくない朝は 少しグズってもいいから
とりあえず一歩 外に足を踏み出す
思いのほか街は優しくて 案ずるより人は穏やかで
だから大丈夫 外に足を踏み出そう

さあ行こう 最高の一日にはならなくても
気持ちが揺れ動くような あっと驚く出会いがあって
さあ行くぞ 最悪な出来事に見舞われても
きっと誰かが支えてくれる きっと自分がそうするように

Let's Go, Towards Our Trivial Daily Lives
さあ行こう 他愛ない日常に向かって
これが僕達の冒険譚 勇気の一歩を踏み出す物語

6/6/2025, 2:56:25 AM

水たまりに映る空なんて、どうせ濁った灰色だ。
…と思っていたけど、それは澄んだ青色だった。
灰色の空なんか見つめずに、本物の空を見上げなよ、そう励まそうかと思っていたのに、これじゃ俯いたままの君を元気づけることも出来ない。

水たまりに映る空はキラキラ輝いて、風が立てるさざ波に揺れている。
フェイクなんだけどな。ニセモノなんだけどな。
でも君は少し微笑んで、
「こんな道端にも、綺麗な空があるんだね」
そう言って、僕の顔を見上げた。

それは、泣き腫らした後の笑顔だったけど、きっと本当の気持ちを僕に伝えてくれた。
「ツライけど、もう少し頑張ってみるよ。だって、雨は上がって、空は青くて、私はまだココにいるんだから」
その意味はイマイチよく分からなかったけど、君が笑ってくれるんなら別にいいや。

涙はさっきまでの雨が、綺麗に洗い流してくれたんだと思いたい。
君の悩みがそんな簡単なものじゃないことは分かってるけど、雨が上がって、傘を閉じて、君と二人歩く歩道の水たまりに映る空は青く、それを見たら何となく、無理に元気を出して上を向いて歩く必要もないんだな、と思えた。

足元にだって喜びは転がってる。
靴を濡らすだけの水たまりも、時にこうして、俯くことしか出来ない誰かを勇気づける。
「…さて、じゃあ、お腹も空いたし、ご飯でも食べに行こうか」
食欲、あるの?
そうツッコミたかったけど、君の笑顔を曇らせそうで、やめた。

だってほら、足元の水たまりには、今の君の笑顔がキラキラと輝いている。
澄んだ本物の青空を背景にして。

6/5/2025, 3:07:16 AM

恋か、愛か、それともエロか。
男なら、これじゃないだろうか。
時折思う。
神様がいるのなら、どうして男という生き物をこんな風に作ったのか。
恋や愛に対する興味は同じでも、エロに対する興味は、男と女で差がありすぎはしないか。
だから、いろんな場面でトラブルが発生する。
一方的な独走が悲劇を生む。

その類の犯罪を許せはしないが、個人的な意見としては、「男とは、本能に抗わなければそーゆー生き物だ」と思ってる。
だって、物心ついた時には、そんな感情が芽生えていた。
欲望と言った方が正解か。
それを責められても、その感情を完全に失くすことなど出来はしない。
男って、そーゆー生き物だと思う。

まあ、男女お互いにそーゆー気持ちがなかったら人類は滅亡するし、そう考えれば、エロは人類存続の鍵とも言える。
恋や愛、それだけじゃこの世界は終わりを迎えていたかもしれないのだ。
願わくば、エロを単なる悪者にしないで欲しい。
いや、悪用する者も確かにいるが、純粋なエロは、まともな男である証なんじゃないかと勝手に思い込んでいる。

昨今、エロが過ぎて失脚する男性芸能人が後を絶たない。
本当なら、「仕方ないじゃん、男ってそーゆー生き物なんだから」と言いたいところだが、被害者が存在する限り決してそれは認められない。
秩序が守られなければ、男だ女だ恋だ愛だの問題じゃなくなるから。
合法な範囲で、生まれ持っての性であるエロを楽しもう。
それを咎められる理由はないはずだ。

この世界には、男と女という生き物しかいなくて、お互いが求め合うから人類は存続してきた。
もちろん、いろんな愛の形があることも事実だが、この構図には誰かの意思が絡んでいる気がしてならない。
どっちかと言うと無神論者だが、まあ、うまいこと作ったなーというのが素直な感想だ。
恋か、愛か、それともエロか。
このどれもが、我々の人間たる所以だと思ってる。

恋をして、愛し合って、エロいこと考えて。
…うん、まともな人間だ。

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