Ryu

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水たまりに映る空なんて、どうせ濁った灰色だ。
…と思っていたけど、それは澄んだ青色だった。
灰色の空なんか見つめずに、本物の空を見上げなよ、そう励まそうかと思っていたのに、これじゃ俯いたままの君を元気づけることも出来ない。

水たまりに映る空はキラキラ輝いて、風が立てるさざ波に揺れている。
フェイクなんだけどな。ニセモノなんだけどな。
でも君は少し微笑んで、
「こんな道端にも、綺麗な空があるんだね」
そう言って、僕の顔を見上げた。

それは、泣き腫らした後の笑顔だったけど、きっと本当の気持ちを僕に伝えてくれた。
「ツライけど、もう少し頑張ってみるよ。だって、雨は上がって、空は青くて、私はまだココにいるんだから」
その意味はイマイチよく分からなかったけど、君が笑ってくれるんなら別にいいや。

涙はさっきまでの雨が、綺麗に洗い流してくれたんだと思いたい。
君の悩みがそんな簡単なものじゃないことは分かってるけど、雨が上がって、傘を閉じて、君と二人歩く歩道の水たまりに映る空は青く、それを見たら何となく、無理に元気を出して上を向いて歩く必要もないんだな、と思えた。

足元にだって喜びは転がってる。
靴を濡らすだけの水たまりも、時にこうして、俯くことしか出来ない誰かを勇気づける。
「…さて、じゃあ、お腹も空いたし、ご飯でも食べに行こうか」
食欲、あるの?
そうツッコミたかったけど、君の笑顔を曇らせそうで、やめた。

だってほら、足元の水たまりには、今の君の笑顔がキラキラと輝いている。
澄んだ本物の青空を背景にして。

6/6/2025, 2:56:25 AM