Ryu

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4/17/2025, 9:40:26 PM

静かな情熱…か。
思うに、物語を書くのって、静かな情熱の為せる業じゃないだろうか。
文字だけを使って、あらゆる情景を表現する。
人が争う場面や、号泣する場面、街が破壊されるシーンだって、ひらがなやカタカナ、漢字を並べるだけで誰かに伝えることが出来る。
映画や漫画では、情熱あふれる場面はやはりそれなりにその絵面も情熱的になるから、静かなそれとはならない気がする。
派手に描きたくもなるだろう。

まあ、書き手にとっては、頭の中でその状況が展開されている訳だから、きっと多少なりともテンションは上がっているのだろうが、それを単なる文字の羅列に置き換える時点で、なんというか、気持ちが理路整然と冷静な状態に戻されているような。
そしてまた、誰かがそれを読んだ時、圧縮パックされたような文字面がその人の頭の中で展開されて情景となり、興奮や感動を伴って染み渡ってくれればいいなと…書き手は思う訳で。

それが本当に上手く出来る人達が、ものを書くことを生業にするんじゃないだろうか。
感情に振り回されて書いた文章は散文でしかない。
原稿に手書きで書いていた時代なら、その紙面に上手く感情を表現する術も多少あったかもしれないが、今や定型化された文字が画面タッチのみで現れる。
その文字自体には、個性なんて欠片も表現されない。
それを使って自分の思いや想像を伝える訳だから、これはなかなか高等な技術ではないだろうか。
例えば絵画だったら、絵そのものが個性となるだろう。

…と、こんな思うがままの文章に静かな情熱を注いだところで、いったい誰が読んでくれるというのか。
これまた書き手の苦悩だったりする。
読んでくれる人のいない文章は、ただの落書きに過ぎない。
いや、トイレの落書きだって、それなりにたくさんの人達の目に留まる。
ならば、この文章は何だ。落書き以下か?
…そんな思いも、このアプリのおかげで多少なりとも緩和されましたとさ。
めでたし、めでたし。

4/16/2025, 9:57:17 PM

その声は、遠い宇宙から届いた。
「地球の皆さん、ごきげんよう。これから、あなた達の星を侵略しに参ります。私達の星の文明は進んでおり、あなた達の星を凌駕いたします。攻撃によって、その星のすべてを手中に収めるなど容易いことです。現にこうして、地球から100億光年離れた我々の星より、あなた達には到底習得できない技術を用いて、このメッセージを発信しています。あなた達は、すべてを受け入れることしか出来ません。観念してお待ちください。」

地球の民は震え上がった。
その声は、すべての人類の脳に、直接届いたのだ。
しかも、一日のうちに何度も、繰り返し聞こえてきた。
至るところでパニックが起きる。
マスコミが騒ぎ、各国首脳により軍隊が配備される。
そして、遠い宇宙からの侵略者の到着に備えた。
だが、戦って勝てる相手だとは誰も考えていない。
文明の差が大きすぎる。

さて、それから100年後。
地球は相変わらず平和だった。
侵略者は、刻一刻と地球に迫ってきている。
だが、その歩みは、地球のロケットによるものとそう変わらない。
兵器による攻撃力やメッセージの伝達技術は卓越していても、宇宙航行についてはそれほどの進歩を遂げていなかったようだ。

100億光年の旅路。
気が遠くなるほどの歳月。
そして、地球人類の脳に、時折聞こえてくる侵略者達の声。
「これ、いつ地球に着くの?」
「さあな。そんな計算が俺達に出来るわけないだろ」
「宇宙に葬られた大人達は意気揚々だったけどさ。それを引き継いだ俺達には、そんなモチベはないよな。ここで生まれてここで死んでいくなんて、勘弁して欲しいよ」
「あーもう帰りてー」

まあ…地球は限りなく永劫に安泰のようだ。

4/15/2025, 10:06:31 PM

うららかな春の日。
出会ったあの人と春恋の予感。
空は青く、風は心地良く、すべてのことが幸せに向かっているような、祝福ムードに溢れる。
夏に遊び、秋に黄昏れ、冬に寄り添って、二人で過ごす時間を思い描いた。
あなたと出会えた今日一日に、そのすべてが詰まっているような気がして。

それは幻想。
そこに恋など芽生えなかった。
春の陽気に幻惑されて、私が生み出した幻想の恋。
あの人は、さわやかな挨拶と笑顔を残して、この場所を離れていった。
そりゃそーだよね。
少し、焦りすぎたかな。

春は始まりの季節。
始まりは出会いから。
たくさんの人に出会って、たくさんの喜びや失望を感じて。
春恋だけが恋じゃない。
そう自分に言い聞かせながら、過ぎてゆく季節を愛しく想う。
夏に遊び、秋に黄昏れ、冬は飼い猫と寄り添って。

そしてまた、春は訪れる。

4/14/2025, 9:46:23 PM

「あ、あのさ、君の未来図について、教えてくれないかな?」
「…は?」
「明日のことなんかじゃなくてさ、もっと先の、今の状況を笑い飛ばせるくらい未来の話をしようよ」
「そんなもん…ないよ」
「ないはずないだろ。未来は皆に平等にやって来るんだよ。たとえ、どんな人生だとしても」
「そんな未来、ろくなもんじゃないでしょ」
「どうしてそんなことが言えるの?未来に決定事項なんて無いんだよ。だから、未来図を思い描くんだ。自分の望む通りに」
「そんなことしたって、現実はどうにもならないじゃん」
「どうにもならない現実はあるよ。だけど、その現実が悪いことばかりだとは限らない」
「…悪いことばかりだったよ」
「それは過去でしょ。現在もそうかもしれない。でも、未来は分からないじゃないか」
「…」
「僕と、幸せな家庭を築く未来だってあるかもしれない」
「…何それ、バカじゃないの?」
「そんなバカな未来だって、未来図に描くのは自由だと思うよ」
「私の未来図は…白紙だよ」
「うん、じゃあ、これから描けばいい。白紙だからこそ、自由に描けるってもんだ」
「そーゆー意味じゃなくて…」
「とにかくさ、ここは見晴らしが良すぎるよ。そのうち、下にも人が集まってくる。その中には、君が飛び降りるのを今か今かと待つような奴だっているかもしれない。そんな奴らを喜ばせる義理はないだろ。フェンスのこっちで話そうよ」

「…ところで、あなたは誰なの?」
「僕?僕はただの、通りすがりのおせっかい」
「ただの通りすがりの人と、未来について話せって?」
「今は他人でも、未来は分からないじゃないか。こうして通りすがったんだし」
「なんかさ、うまく口車に乗せられてるような気がするんだけど。詐欺師の才能あるよね」
「そっか。またひとつ、僕の未来図に可能性が追加されたよ。ありがとう」

「…なるほどね。そうやって生きていってみようかな」

4/13/2025, 8:18:57 PM

桜ひとひら、宴が終わる。
この春もここに集えたことを喜び、麗しき満開の桜を尊び、明日への活力を携えて、この場所より散ってゆく。
兵どもが夢の跡。
昨日の酔客は明日の顧客だ。
万札ひとひら、戦が始まる。

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