その声は、遠い宇宙から届いた。
「地球の皆さん、ごきげんよう。これから、あなた達の星を侵略しに参ります。私達の星の文明は進んでおり、あなた達の星を凌駕いたします。攻撃によって、その星のすべてを手中に収めるなど容易いことです。現にこうして、地球から100億光年離れた我々の星より、あなた達には到底習得できない技術を用いて、このメッセージを発信しています。あなた達は、すべてを受け入れることしか出来ません。観念してお待ちください。」
地球の民は震え上がった。
その声は、すべての人類の脳に、直接届いたのだ。
しかも、一日のうちに何度も、繰り返し聞こえてきた。
至るところでパニックが起きる。
マスコミが騒ぎ、各国首脳により軍隊が配備される。
そして、遠い宇宙からの侵略者の到着に備えた。
だが、戦って勝てる相手だとは誰も考えていない。
文明の差が大きすぎる。
さて、それから100年後。
地球は相変わらず平和だった。
侵略者は、刻一刻と地球に迫ってきている。
だが、その歩みは、地球のロケットによるものとそう変わらない。
兵器による攻撃力やメッセージの伝達技術は卓越していても、宇宙航行についてはそれほどの進歩を遂げていなかったようだ。
100億光年の旅路。
気が遠くなるほどの歳月。
そして、地球人類の脳に、時折聞こえてくる侵略者達の声。
「これ、いつ地球に着くの?」
「さあな。そんな計算が俺達に出来るわけないだろ」
「宇宙に葬られた大人達は意気揚々だったけどさ。それを引き継いだ俺達には、そんなモチベはないよな。ここで生まれてここで死んでいくなんて、勘弁して欲しいよ」
「あーもう帰りてー」
まあ…地球は限りなく永劫に安泰のようだ。
4/16/2025, 9:57:17 PM