Ryu

Open App

「あ、あのさ、君の未来図について、教えてくれないかな?」
「…は?」
「明日のことなんかじゃなくてさ、もっと先の、今の状況を笑い飛ばせるくらい未来の話をしようよ」
「そんなもん…ないよ」
「ないはずないだろ。未来は皆に平等にやって来るんだよ。たとえ、どんな人生だとしても」
「そんな未来、ろくなもんじゃないでしょ」
「どうしてそんなことが言えるの?未来に決定事項なんて無いんだよ。だから、未来図を思い描くんだ。自分の望む通りに」
「そんなことしたって、現実はどうにもならないじゃん」
「どうにもならない現実はあるよ。だけど、その現実が悪いことばかりだとは限らない」
「…悪いことばかりだったよ」
「それは過去でしょ。現在もそうかもしれない。でも、未来は分からないじゃないか」
「…」
「僕と、幸せな家庭を築く未来だってあるかもしれない」
「…何それ、バカじゃないの?」
「そんなバカな未来だって、未来図に描くのは自由だと思うよ」
「私の未来図は…白紙だよ」
「うん、じゃあ、これから描けばいい。白紙だからこそ、自由に描けるってもんだ」
「そーゆー意味じゃなくて…」
「とにかくさ、ここは見晴らしが良すぎるよ。そのうち、下にも人が集まってくる。その中には、君が飛び降りるのを今か今かと待つような奴だっているかもしれない。そんな奴らを喜ばせる義理はないだろ。フェンスのこっちで話そうよ」

「…ところで、あなたは誰なの?」
「僕?僕はただの、通りすがりのおせっかい」
「ただの通りすがりの人と、未来について話せって?」
「今は他人でも、未来は分からないじゃないか。こうして通りすがったんだし」
「なんかさ、うまく口車に乗せられてるような気がするんだけど。詐欺師の才能あるよね」
「そっか。またひとつ、僕の未来図に可能性が追加されたよ。ありがとう」

「…なるほどね。そうやって生きていってみようかな」

4/14/2025, 9:46:23 PM