決して変わらないものはある。
それは、この世の中に、変わらないものはないという事実。
これは変わらない。
屁理屈王決定戦なら、きっと準優勝くらいまでいける。
前回、とゆーか、昨日のことだが、行きつけの喫茶店のマスターの娘さんを誘ってみた。
クリスマスを一緒に過ごしませんか、と。
まさか、うまくいくとは思わなかった。
あの世の母親からの後押しがなかったら、今日もあのアパートの一室で、一人寂しく過ごしていたことだろう。
昨夜帰宅したら、隣の学生達はすでに酔い潰れたのか、辺りはしんと静まり返っていた。
ぐっすり眠って、クリスマスの朝。
目覚めてまず、昨夜のことはすべて夢だったんじゃないかと疑う。
死んだ母親からのLINEとか、昨夜の彼女との会話とか。
だって、聖なる夜だから、何だってありな気がするし、サンタさんからのプレゼントで、素敵な夢を見させてもらっただけなのかも。
事実、今朝スマホを確認したら、LINEには昨夜のトーク履歴は何も無かった。
ほら、やっぱり。
半信半疑のまま、着替えてあの喫茶店へと向かう。
果たして、彼女は待っていてくれた。
まだ、夢から覚めなくていいのかな。
聖なる夜は終わっても、今日の日没まで、クリスマスの奇跡は続いているのか。
彼女の希望で、何軒かの喫茶店を巡った。
コーヒーの味を研究したいらしい。
なんて勉強熱心なんだ。
またこれからも、彼女のお店に行く楽しみが増えていく。
いろんな話をした。
彼女の母親もすでに他界して、父親と二人であの店をやっていること。
今日飲んだコーヒーの中に、父親が作るコーヒーを超えるものは無かったこと。
昨夜の父親との晩酌で、私の話題が上がって、マスターの私に対する印象を聞けたこと。
最後の話は続きが気になって仕方がなかったが、まあ、酔いが回った頃に話したことだから、と彼女に機先を制されて、詳しくは知ることが出来なかった。
夕暮れ。
クリスマスが終わる。
さあ、私の夢も覚めてしまうのだろうか。
気付いたら、歩道橋の上から一人寂しく、走る車の列を見下ろしてたりして。
そんな妄想とは裏腹に、今はユニクロで、お互いにプレゼントする服を選んでいる。
バイト代がたまってなくて…と言う彼女の希望で選んだ店だが、私にとっては彼女がプレゼントしてくれた服というだけで、もう「ユニクロ最高!」だ。
帰り道、どうやらこの夢は、まだしばらく私に至福の時間をもたらしてくれるようだ。
こんなクリスマスの過ごし方を、天国の母親はどんな顔で眺めているのだろう。
少しは安心させられたかな。
生きているうちに紹介したかったな。
「大丈夫、ちゃんと見てるよ」
そう言ってくれているような気もして、彼女が買ってくれたあったかいセーターごと、自分を抱きしめた。
寒さも寂しさも、ゆっくりと溶かしてゆくように。
静かな夜。聖なる夜。
アパートの隣の部屋では、今まさにクリスマスパーティーが始まろうとしていた。
学生達が集まって、凄い盛り上がりが伝わってくる。
今夜はここにはいられないな。
着膨れて、スマホと財布だけ持って、部屋を出た。
街は浮かれていた。幸せそうなイルミネーション。
独り身のおっさんの居場所はないのか。
クリスマスってのは、ぼっちを炙り出して晒し上げて皆で騒ごうってイベントなのか?
サンタのおやじはずいぶんS気質なんだな。
知らんけど。
ウロウロするのに疲れて、何度か来たことのある喫茶店で暖を取る。
スマホを取り出し画面を見ると、昨年亡くなったはずの母からLINEが来ていた。
「まったくお前は、甲斐性なしだねえ」
なんでだよ。ちゃんとやるべきことをやってるわ。
あっちに逝ったんだからもう、子供扱いはやめてくれ。
苦いコーヒーを飲んで、顔をしかめた。
まったく、聖なる夜ってのは、何でもありだな。
「コーヒーのおかわり、いかがですか?」
隣に立った女性店員に突然声をかけられ、我に返る。
「あ…おかわり?」
「ええ、クリスマスだけのサービスです。店長の気まぐれで」
「ああ、じゃあ、もらおうかな」
「まだ、イブなんですけどね。なんだか、明日のクリスマスより、今夜の方が賑やかな気がしませんか?」
「そーだね。でも実際には、聖夜ってのは24日の夜のことで、25日の夜にはクリスマスは終わってるらしいよ」
「そーなんですか?イブは前夜祭みたいなもんだと思ってました」
「まあそーなんだけど、昔の暦では、日没が日付の変わり目だったから、イブの夜はすでにクリスマス、っていうか」
「へぇー知らなかったです。じゃあ、キリストの誕生を祝うなら今夜なんですね」
「本当にそんなものを祝ってるのか、怪しいけどね」
二杯目のコーヒーは苦すぎず、美味しかった。
やっぱり、淹れてくれる人によって味は変わるんだな。
一杯目はマスターだったし…いや、淹れてくれたのはどちらもマスターか。
注いでくれたのが彼女だった訳で…まあどーでもいいや。
この店も朝まではやってないから、どこかの居酒屋かファミレスにでも移動しなきゃならない。
聖なる夜に俺は何やってんだか。
再び、母からLINE。
「そこにいるお姉さんでも誘ってみたらどーだい?」
まったく、簡単に言うなっての。
「こんな時間までバイトしてんだから、今夜の予定は無いんじゃないの?」
…ん、一理ある。
「かーさんもね、そうやってとーさんに突然誘われてねえ…」
もう聞きたくない。
LINEを閉じて、帰り支度をする。
レジで、彼女が対応してくれた。
「美味しかったですか、コーヒー」
「はい。二杯目が特に」
「それは良かったです。クリスマスに来店された甲斐がありましたね」
「母親曰く、私は甲斐性なしなんですけどね」
「え?」
「あ、いや…ところで、この後のご予定は?」
すんなりと聞けた。
「この後…バイトが終わったらですか?」
「そう。美味しかったコーヒーのお礼がしたくて」
「じゃあそれは店長に…なんて無粋なこと言っちゃダメですよね。ごめんなさい、でも、今夜はこの後、店を閉めて、父と晩酌して、ゆっくり休むつもりなんです。今日も一日仕事でしたから」
「ん?あれ?もしかして、マスターの、娘さん?」
「そーですよ。知らないで通ってくださってたんですか?」
「そーなんだ。全然気付かなかった。じゃあ、そのうち、あなたが淹れてくれたコーヒーも飲めるのかな?」
「さっきの二杯目、私が淹れました」
ほら、やっぱり。
クリスマスの奇跡ってやつか。
彼女の方から、明日の日中に会えないかと誘われた。
「明日はお店が休みなんですよ。稼ぎ時だってのに、父が忙しいのは嫌だって。急に言われて、予定がガラ空きになっちゃって。せっかくのクリスマス、何か想い出残したいですよね。明日、日が沈むまではクリスマスですもんね。」
帰り道、LINEを確認したら、母から大量の「(*>ω<)bグッ」が届いていた。
どこでこんなの覚えたんだ?あの世で?
不本意だが、「ありがとな」と返信しとく。
ホント、聖なる夜は、何でもありなんだな。
明日からは、こんなLINEは来ないだろう。
さて、これが私からのプレゼントだがね、君はこれを受け取るつもりはあるのかい?
中身は何か?って、プレゼントの中身をプレゼンターに聞くのはルール違反だろう。
でもまあ、ずっと君が欲しがっていたものだよ。
それくらいは言っておく。
さて、どうする?
駅のホーム。
おかしな男に声をかけられ、足止めを食らっている。
今はそれどころじゃないってのに。
すべてを奪われた。
信じていた恋人が、信じていた友達と浮気していた。
いや、もはや浮気ではないらしい。
二人で私から逃げる計画を練っているらしい。
許せない。
プレゼントはふたつあるんだ。
君が好きな方を選ぶといい。
…そうか、確かに、中身を知らなくちゃ選ぶことも出来ないな。
じゃあ、教えよう。
ひとつは、「誰かを殺す勇気」だ。
もうひとつは、「自分を殺す勇気」。
さあ、どっちにする?
彼は何を言っているのだろう?
どちらの勇気も、私はすでに持っている。
目の前で、私に気付かず幸せそうに話す二人。
もうすぐホームには電車がやって来る。
誰にも邪魔されたくない。
そんなプレゼントはいらないから、私の前から消え去って欲しい。
そうか。実は、有料なんだが、「二人を許す勇気」なんてのもあるんだが…まあ、買わんだろうね。
あ、いや、何でもない。邪魔したね。
私はもう帰るけど、電車が止まると困るから、他のルートで帰ることにするよ。
どうでもいいことだがね、世界には80億の人間がいるということを忘れないでくれ。
その中で、君という人間はたった一人だということも。
…ん?この手は何?
何故私の手を掴んでいるんだい?
もうすぐ電車が来てしまうよ。
え?最後の勇気が気になる?
そうか。まだそんな心が残っているんだね。
じゃあ、これは私からのクリスマスプレゼントということで。
いやいや、私はサンタではないよ。
どっちかっていうと、サタンかな。
悪魔だって、誰かに贈り物をしたい時も、あるんだよ。
二周目の「ゆずの香り」は何も浮かばんな。
ゆずなんて、一周目で書いた「ゆず湯」ぐらいでしかお目にかからない。
あとは、ゆずぽんとかゆず茶とか栄光の架橋とか。
すべて、原型を留めないものばかり。
まあでも、香りと言うならゆずぽんやゆず茶だって…これで何かを書けるとは思わないが。
とゆー訳で、栄光の架橋。
素晴らしい歌だ。
ただ、改めて歌詞を見てみると、非常にベタな応援ソング。
こんなにどストレートで、背中を押してくれる歌も、最近は少ないんじゃないだろうか。
とゆーか、最近の歌には、じっくり読んでも意味が理解できない歌詞が多々あるような気がする。
背中を押してくれる歌といえば、ケツメイシ。
こちらはラップが入るので、歌詞の内容も盛り沢山だ。
心に響いたり、心から笑ったり。
時にまっすぐ過ぎて、素直に受け入れられないこともあるが、心が弱っていたり何かに悩んでいる時、優しく勇気づけてくれる。
おっさんがおっさん達に励まされ、明日を生きる勇気をもらえてるなんて、なんて素晴らしい世界なんだろう。
うん、ゆずから遠ざかったな。
やっぱり二周目は無理だった。
まあいいや、二周目だからこそ、気負わずにいこう。
体裁なんか気にせず、好きなように書こう。
書きたいことは、まだまだたくさんあるはずだ。
こんなことに言っていいのか分からないけど、もう、次のお題も分かってる。
これは、二年目の強みってやつだな。
併せて、文才も向上してくれればいいんだけど。