薄明光線、光芒、天使の梯子、天使の階段。
カッコ良すぎる。
雲の隙間から、太陽の光が差し込む、あれ。
壮大なBGMが流れそうな、厳粛なナレーションが似合いそうな、あれ。
まさに、神のなせる業って感じ。
普段の太陽の日差しでは、あの放射状の光線は見えない。
雲に隠れてそこに綻びが出来て初めて、あの神々しい現象を拝める。
フランダースの犬とか、天気の子とか、描写の美しい作品にも度々登場する。
都庁のプロジェクションマッピングのように、膨大な費用もかからない。
あの光景を見ることが出来た日は、自分の中でラッキーデイとしよう。
青空や白い雲、赤い夕焼けも好きだけど、灰色の雲に覆われた空から黄金のような光が差し込む様は、神がかっているとしか思えない。
いつまでも眺めていたら、御神託がもらえるんじゃないかと錯覚してしまう。
たかが日差し、されど日差し。
実際には、神のなせる業ではなく、太陽と雲のなせる業。
ひいては、自然のなせる業ってことだ。
自然、カッコ良すぎる。推しにしようかな。
毎朝、仕事に向かう電車。
その窓越しに見えるのは、君が閉じ込められている場所。
もう何ヶ月になるだろう。
前回会いに行った時には、君もあの場所の窓越しに、僕の乗る電車を見送っていると言っていた。
君の言うことだ。すべてを信じている訳じゃない。
でも、あのいくつも並ぶ窓のどこかに、君の沈んだ顔があるんじゃないかと毎朝探してしまうのも事実だ。
ずっと仲良くやってきた。気の合う奴だった。
だからいつも一緒にいた。あの夜を除いては。
君が僕を誘わずに、一人で法を犯したあの夜。
「お前を誘わなくて良かった」と、アクリル板の向こうで君が言った。
その言葉だけは今も信じている。
僕にとって、君はそーゆー人だから。
正しいも正しくないも、誰がどんな状況で見るかで変わる。
飢え死にしそうな貧しい人達のために、裕福な家から食べ物を盗むのは善か悪か。
手を差し伸べずに見殺しにすることが正しいのか。
死にたいと本気で願う人の首に手をかけることは罪悪か。
それは、当事者である死んでいった人間の意見も含まれているのか。
紙に書かれた法律に反しているからといって、その人間を全否定出来る権利など誰も持っていない。
「倫理」という窓越しに見えるのは、いつだって歪んだ現実だ。
そんなものでは管理しきれない心を誰もが持っている。
それは、世界の終わりに姿を現すのだろうか。
それとも君のように、ある夜突然心を埋め尽くすのだろうか。
電車の窓越しに、小さくサムズアップサインを送る。
あのいくつも並ぶ窓のどこかにいる君ヘ。
世界が君を責めても、僕だけは君の味方でいよう。
赤い糸を辿っていったら、あの人の笑顔に会えた。
あんなに好きだったのに、今はもう誰かの彼女。
赤い糸って、恋が終わっても消えてくれないのか。
断ち切りたいのに、繋がってたら忘れられないじゃないか。
触れてみたら、思いのほか太くて強い糸だった。
これはそう簡単に切れるもんじゃない。
なるほど、だから今も毎晩、僕は枕を濡らしているのか。
でもきっと、あの人から伸びている赤い糸は、僕じゃなくて今の彼氏に繋がっているのだろう。
…待てよ?
赤い糸って、将来結ばれる人と繋がってるんじゃなかったっけ?
だとしたらもしかして、この先、あの人とやり直せる日が来るのかも。
だからまだ、消えずに残っているのかもしれない。
…いや待て、そもそも赤い糸なんて、本当にあるのかどうかも分からない、怪しい迷信なんじゃないだろうか。
じゃあ、僕が辿ったり触れたりしてるのは何なのかって?
知らないよ、そんなの。
考えてみりゃ、目には見えない赤い糸、なんて矛盾してる。
見えないなら色なんてないはずだ。
僕はただ、この血管のような太くて強い糸が、まっすぐに君に続いているのが見えるだけ。
きっとそれは、運命の赤い糸なんかじゃなくて、「絆」とか、「血縁」と呼ばれるものなのかもしれない。
だって、僕とあの人は…。
あの映画を見たら、でっかい入道雲の向こうには、人知れず空中都市が隠されているのでは?なんて誰もが思ったりしないだろうか。
…いや、あの映画では、最後に城は崩壊して地上に落ちていったから、もうあの場所には何も無い、なんてリアル志向に考える人もいたりして。
もしくは、白い雲の間を赤い飛行機で飛んでゆく豚さんパイロットや、青き衣を纏いて小動物を肩に空を飛ぶ少女や、黒い猫と一緒に箒で空を飛ぶ魔法少女など。
いやー、ジブリはいいなぁー。
でも、ジブリといえばやっぱりトトロじゃないかと。
トトロといえば、ネコバスじゃないかと。
あの顔で優しいなんて、ある?
絶対に何か企んでる顔だ。
あとでメイとサツキの親から、法外な乗車料金ふんだくってやろうなんて。
…んな訳ないか。
猫といえば、私の実家によく遊びに来ていた野良猫が、子供を四匹産んだと言う。
全部は飼えないから一匹もらってくれないかと、実家の母親から連絡があった。
もうすでに我が家には二匹の猫がいる。
これ以上増やすのはさすがに厳しいかなと思っていたら、「二匹も三匹も変わんないっしょ」という家族の意見。
た…頼もしい。
とゆー訳で、家族がまた増えそうだ。
もう、でっかい心で迎え入れて、温かく見守っていくしかないな。
あの、真夏の入道雲のように。
夏、ありきたりの風景。
汗にまみれて歩く。
人を死に至らしめるほどの熱波が、ゆっくりと街を覆い尽くす。
人類の英知を以ってしても、地球規模の温暖化を止めることなど出来ないし、緩和させたとて、真綿で首を絞められるようなもんだ。
いずれ、誰もが想像し得ない夏が来る。
なんて恐怖を感じるほど、暑い。
最寄り駅に着いて、職場まで歩く。
汗にまみれて歩く。
職場に着いて、空調の効いたビルの中へ。
一気に汗が引いていき、アイスコーヒーでも飲みながら、仕事にとりかかる。
ただただ、ディスプレイとにらめっこして、俺のさっきまでの人間らしい苦しみはどこへやら。
汗にまみれて歩くのは、夏、ありきたりの風景。
それもいいじゃないか。
俺達の住む世界がそうなっているなら、それは仕方ない。
暑かろうが寒かろうが、人類の英知で乗り切るしかない。
今まで人類がそうしてきたように。
まずは、最新型のハンディファンを買って…。