ここではないどこかで、
少年は、敵兵を撃ち殺すべく銃を取る。
もはや、命を奪うことに躊躇はない。
ここではないどこかで、
母親は、我が子を守るべく瓦礫に埋まる。
大きな自然の力に為す術もなく。
ここではないどこかで、
少女は、心ない言葉や暴力に心を壊す。
遠く我が家を見下ろせる場所で、その一歩を踏み出そうとする。
ここではないどこかで、
男達は、肩が触れ合ったことに腹を立て、刃物を向ける。
どちらかが沈黙するまで終わらない争いを、周りの観客はスマホで録画し続ける。
ここではないどこかで、
老婆は、誰にも知られずにひっそりと生涯を閉じる。
家族に囲まれていた時代を思い出に、どこで間違えたのかを悔やみながら。
ここではないどこかで、
見知らぬ男が、捨てられて雨に濡れた子猫を拾う。
家族に疎まれているこの男は、心の拠りどころをずっと探している。
ここではないどこかに、
幸せなどあるとは思えない。
だから私はここにいる。
ここには幸せがあるから。きっとここにしかないから。
君と最後に会った日は、雨がザーザーと降っていて、「ああ、こんなに激しい涙雨は初めてだな」なんて、冷静に考えてた。
病室の窓の外、いつもの風景が霞むほどの雨、君はもう目を覚まさない。
最後に会えて良かったよ。
さよならは言えなかったけど、君の旅立ちの日にそばにいられたことが嬉しかった。
あっちの世界は痛みも悲しみもないって聞くから、きっともう、この雨のような涙は流さなくていい。
…いや、この涙雨は僕のものか。
落ち着いているつもりだけど、手の震えが止まらなくて。
痛みも悲しみもある世界で、生き続けていかなくてはならない僕の心模様なのかな。
そうだとしたら、僕は自分が思うより、人間らしい感情を持ち合わせていたんだな。
痛みや悲しみで押し潰されそうだから、窓を開けて雨の音を聞いた。
君との思い出を少しずつ洗い流してゆく。
忘れないけど、忘れたいんだ、今だけは。
僕はまだ、この世界に未練があるから。
君がいたこの世界に。僕がいるこの世界に。
病院を後にして、コンビニで缶コーヒーを買った。
いつものブラックだったけど、いつもより苦かった。
でも、これが生きてるってことなんだろうな。
…なんて、らしくない感慨を心に描く。
びしょ濡れの心と体に今さらビニール傘を買って、土砂降りの雨の中を駅へと向かう。
君と最後に会った日に、僕は少しだけ大人になれた気がした。
そっか、1年後にはお題がループするのか。
それはちょっとモチベが下がるかも。
もう半年書き続けてきたけど、少し義務的になってしまっている気がする。
付き合い方を見直そう。無理はやめとこう。
書くことは好きだけど、書かされるのは好きじゃないから。
…とゆー独り言。
子供の頃は、地味な存在だった。
のんびり動いて、野菜ばっか食べて。
キャベツが大好物だった。
大人になる手前で、殻に閉じ籠もった。
まったく動かず、息を潜めるような日々。
それでも、いつか羽ばたく日を夢見てた。
その日が来た。
私は殻を破り、外の世界へと羽ばたいた。
外の世界は色とりどりで、素敵な香りに包まれていた。
子供の頃は、虫取りが好きだった。
狙うはカブトムシやクワガタだったけど、たまにヒラヒラ宙を舞うモンシロチョウを追いかけて、虫取り網で捕まえたりもした。
今思えば、カブトムシみたいに飼うつもりもなく、追いかけ回される恐怖を与えただけで、申し訳ないことをしたな。
彼らにだって、この世界に生まれて、子供の頃からの成長の過程があったはずだ。
羽化して外に羽ばたいた時、生きる喜びを感じたりしたのだろうか。
色とりどりの世界で、優雅に宙を舞い、香る花から花へと蜜を求め。
幸せを謳歌しているような、その穏やかな仕草。
まあ、あの頃の自分にそんなこと話しても、右から左への馬耳東風だったろうけど。
変わらない日常なんてない。
誰の日常も、時が流れるにつれて変わっていく。
当たり前だったものが、貴重なものに姿を変える。
例えば、平和とか。
住む場所や、人種、性別や年齢によっても、その日常はまったく異なるものとなり、同列で語ることは出来ない。
「昨夜は、家族で食卓を囲んで、夕飯を食べた後に皆でボードゲームをしたんだ」
そんな日常とは掛け離れた生活を送っている人がたくさんいる。
これは私の日常。
いずれ、私のこんな日々も終わるだろう。
変わらない日常なんてない。
どう変わってしまうのかは分からないが、変わってしまった後の日常が、誰かと繋がりの持てるものであって欲しい。
願わくば、それが家族の誰かであり、一緒に食事が出来るような日常であって欲しい。
当たり前ではない平和が、当たり前だと錯覚出来るような世の中。
当たり前ではない幸せが、当たり前だと錯覚出来るような日常。
本当に今の自分は、恵まれているんだと改めて気付いた。