Ryu

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毎朝、仕事に向かう電車。
その窓越しに見えるのは、君が閉じ込められている場所。
もう何ヶ月になるだろう。
前回会いに行った時には、君もあの場所の窓越しに、僕の乗る電車を見送っていると言っていた。
君の言うことだ。すべてを信じている訳じゃない。
でも、あのいくつも並ぶ窓のどこかに、君の沈んだ顔があるんじゃないかと毎朝探してしまうのも事実だ。

ずっと仲良くやってきた。気の合う奴だった。
だからいつも一緒にいた。あの夜を除いては。
君が僕を誘わずに、一人で法を犯したあの夜。
「お前を誘わなくて良かった」と、アクリル板の向こうで君が言った。
その言葉だけは今も信じている。
僕にとって、君はそーゆー人だから。

正しいも正しくないも、誰がどんな状況で見るかで変わる。
飢え死にしそうな貧しい人達のために、裕福な家から食べ物を盗むのは善か悪か。
手を差し伸べずに見殺しにすることが正しいのか。
死にたいと本気で願う人の首に手をかけることは罪悪か。
それは、当事者である死んでいった人間の意見も含まれているのか。
紙に書かれた法律に反しているからといって、その人間を全否定出来る権利など誰も持っていない。

「倫理」という窓越しに見えるのは、いつだって歪んだ現実だ。
そんなものでは管理しきれない心を誰もが持っている。
それは、世界の終わりに姿を現すのだろうか。
それとも君のように、ある夜突然心を埋め尽くすのだろうか。

電車の窓越しに、小さくサムズアップサインを送る。
あのいくつも並ぶ窓のどこかにいる君ヘ。
世界が君を責めても、僕だけは君の味方でいよう。

7/1/2024, 2:16:37 PM