彼女と過ごす毎日は、暴力的なほどに鮮やかだ
雨上がりの空に顔を出す虹、並んで食べる林檎の赤、そして、私の頬を愛おしそうに撫でる彼女の温かな指先
世界はこんなにも眩しく、涙が出そうになるくらいカラフルに色づいている
「今日も綺麗だね」
隣で笑う彼女の声が灰色の過去を塗り替え、新しい色彩を私の心に注ぎ込んでいく
世界は美しく作り替えられた
かつての崩壊も絶望も、彼女が費やした数十億年の歳月のなかで、すべては遠い昔話となった
孤独に世界を甦らせてきた彼女は、守りたかったはずの相手の名前も、共に過ごした日々も、もう覚えていない
けれど、ただ目の前の「誰か」が目覚める瞬間のために、この楽園を創り上げるということだけは忘れなかった
ゆっくりと開かれた瞳に、再生した世界の柔らかな光が宿る
その姿を見た瞬間、彼女の唇は自然と弧を描いた
初めて出会ったあの日と同じ、混じりけのない笑顔で
忘却の果て、彼女は嬉しそうに告げる
「おはよう。いい朝だよ」
錆びついた自転車のペダルを漕ぐ足が、ふと軽くなる瞬間がある
下り坂、夏の終わりを告げる湿った風が吹き抜けると、自分の隣にいたはずの気配が今もそこに混ざっているような錯覚に陥る
田舎の単調な風景は、あの日から何ひとつ変わっていない
ただ、入道雲の下で笑い合った片割れの輪郭だけが、陽炎のように透き通り、風に乗って空へと溶けていってしまった
僕らが抱えていたのは永遠だと信じて疑わなかった、あまりに不確かな夏
命とは、この瞬間にのみ宿る熱だ
永遠を願うよりも、共に過ごした数秒の記憶にすべてを賭けた
「忘れないで」と言うのは傲慢だろうか
それとも「忘れて」と微笑むのが愛だろうか
徐々に失われていく体温と意識
自分という存在が世界の輪郭から失われていくその刹那
瞳の裏に浮かぶのは色とりどりの花と、私の名前を呼ぶ笑顔のあの子
冷えきっていた私の心を照らしてくれた一筋の光、彼女のおかけで、この短い季節を生きた意味は完成したのだ