『また、会いましょう』
落ちた枯葉を踏み締めると
冬の始まりを感じる。
冬が始まると、
すぐそこに、
次の年が待っているようで
わたしは、立ち止まる。
時間は、水が流れていくように
止まる事はないと分かっているけれど
ふと、考える。
今年も、あなたに会えなかったと。
あなたを探している訳じゃないけれど
何処かにあるはずの偶然を
わたしは待っている。
あなたが残していった名前を
あなたが取りに来てくれるまで。
最後は、あなたが何と言ったのか
今はもう朧げなのに
あなたの名前だけは、消えてくれない。
同級生の名前も
今まで出会った人の名前を
覚えるのも苦手で
心の中からすぐに消えて行ってしまうのに。
一度だけ聞いたあなたの名前は
わたしの心の中で、大きく陣取っているみたいだ。
忘れようと何度も試みたけれど
その度に、耳元で呟かれているみたいで
耳の奥にも刻まれている。
あなたは、いつか、
また、会いにやってくるのでしょう?
だったら、わたしはあなたを探さなくて良いよね。
探さなくたって、
あなたの存在は忘れそうにないもの。
だから、わたしは、わたしのままで
あなたとまた会える、その日まで待ってる。
『飛べない翼』
鳥は、しっかりした足場がないと
飛び立つ事が出来ない。
どれだけ、自由に飛べる翼を
持っていたとしても、
飛ぶことは出来ない。
それは、人も同じ事で
何処へでも、飛べる翼を持っていたとしても
足元がしっかりしていないと
自由に飛び立つ事は出来ない。
どれだけ、
あなたは自由で、自分の人生なんだからと
自分の為に生きなさいと
言われる度に、わたしは、
その言葉に不自由さを覚えてしまう。
この世界の何処かに
自由で生きていける場所があるのだろうか。
誰しもが、自由のようで
制限のある人生を送っている。
好きな事を一生続けていくのにも、
一生好きな事を探さなければならない。
それは、幸福のようで
本当は苦しいもののように思える。
自由に生きるとはなんだろう。
それは、たぶん
生きて居る意味を探すのと同じで
途方も無いものだ。
鳥が、飛ぶ意味
魚が、泳ぐ意味
地上の生命が、歩く意味を探す位
自由に生きる事を探すのは
意味が無いもののように思う。
わたしは、自由に生きていられなくたって
決して不幸では無い。
だって、
今日も明日も、大切な人が
笑ってくれているのなら、
わたしも、笑って居られるだから。
『ススキ』
ススキを見ると
秋が近づいてきたのだと感じる。
秋は、一番好きな季節で
子供の時を良く思い出す。
徐々に、寒くなって来て
学校からの帰り道も
急ぎ足になる。
その帰り道が、いつもワクワクしていた。
今朝には無かった炬燵を
今日は出してくれているのかなと
期待した帰り道が好きだった。
大人になっても
ススキを見ると同じ気持ちになる。
家に帰って、今朝には無かった
炬燵を母が出して、うたた寝をしている。
日常であった景色は
いつの間にか、深い思い出となった。
秋は、帰る家の温かさを
思い出させてくれる。
辛かったけれど、今はそんな季節が好きだ。
『あなたとわたし』
あなたとわたしは
違っていて当然。
だけれど、
どうしてこの世界は
あなたとわたしを比べたがるのだろう。
違っていて良いのに
常識から逸脱するのは別として
違う事を否定される時がある。
何でも出来るあなたを羨んだり
疎ましく思ってしまったり
わたしの存在価値を
周りが比べる事で
わたしがわたしを見失って
それでいて、自分自身で
何も出来ないレッテルを貼っている事も
気付かないまま
「どうせわたしなんて」
を繰り返して捻くれて行く性格が嫌で仕方なかった。
思春期は、
自分が嫌いで他人も嫌いで
笑う自分も泣く自分も
全てが気持ち悪くて仕方なかった。
あなたとわたしは違っていて当然と
分かっていても
捻くれてしまった性格は中々元には戻らない。
だけれど、その言葉を吐く度に
母親に
あなたは自分の幸せだけを考えれば良いと
あなたはあなたの人生なんだからと
人の目を気にしたり
人の事を考えるよりも
自分を大切にしなさいと
何度も咎められた。
思春期を乗り越え、
大人になって、漸く
わたしとあなたは違っているのは
良い事だと思えるようになった。
それが良い事だと思えると
わたしはわたしを受け入れらるようなれた。
今では、母親のその強さに感謝しかない。
母親が呆れず何度でも、
咎めてくれたおかげで
わたしはわたしになれたのだから。
『一筋の光』
暗闇の中を照らす光
それは、君の笑った顔だった。
辛くて、苦しくて
後悔ばかりしていた毎日で
顔を上げるのも
誰かの感情を見ているのも
億劫になっていた時
君が私を見ていた目は
同情でも哀れみでもなく
いつもと変わらない目だった。
君は、いつもと変わらない日常で
私の目線を上げようとしてくれていた。
変わらず、優しく笑っている君を見ていると
この世の中が少し明るくなったように思えた。
周りの人達の心配する目線から逃げて、
私が勝手に
暗くて足元も見えない世界に
取り残された気持ちになっていただけ。
後悔を私の都合の良い感情にして
涙を言い訳にしていたかったから。
でも、
君が私の目線を上げてくれたから
周りの人達や君の優しさを
感じる事が出来た。
辛いこと、悲しいことを知らない人は
この世には、居ない。
幸福も不幸は、皆んな
同じようにやってくる。
それは、君にも。
いつかは、分からないけど
君の目線が下がってしまった時
今度は私が
君の一筋の光で居られたらと願ってる。