次郎

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10/29/2024, 3:26:17 PM

『もう一つの物語』

もし、この世の何処かに

自分の人生の中で

選択しなかった世界があるなら、

その世界の私は

どんな人生を送っているのだろうか。


私は、もし、そんな世界が何処かにあるなら

きっと、

私が産まれていない世界だってあると思っている。


私の母は、

本当に絵に描いたような気苦労が多い人だった。

母を思うと、

生きて来た人生にどれだけの幸福が

あったのだろうかと

きっと、幸福を感じるよりも

胸を痛めた方が多いように思う。


生前、幸福だったかとは聞けなかったし

聞く事も躊躇ってしまう位だった。

多分、聞いたとしても

大きなお世話だと言われ、

自分の人生を考えなさいと怒られるだろう。

それに、きっと、

母はどれだけ心を痛めたとしても

幸せだったと言える強い人だ。


だからこそ、私は思うのだ。

もし、父親と結婚せずに

愛した人と結婚していたのなら、

あなたは今も元気で生きているのだろうかと。

あなたが、心を痛めずに

素直に幸福を感じられているのだろうかと。


あなたが涙を流すよりも

多く笑っていられる人生なら

私が産まれない世界があれば良いと。


あなたが私の幸福を祈るように

私もあなたの子供なんだから

あなたの幸福を祈りたい。


だから、考える。

はっきりと無いとは言えない世界があるのなら

あなたが

今日も明日も笑っていらますようにと。

10/28/2024, 5:25:46 PM

『暗がりの中で』


部屋を暗くして、

鉄塔が赤く点滅をしている景色を眺めていると

懐かしい気持ちが込み上げて来る。

点滅するその光は

私の鼓動と同じように一定のリズムを刻み

心地が良い。

その光は、忘れていた子供の時の

感情を思い起こさせて

自然と自分の心の中が解放されて行くようだ。


大人になると

泣く場所も笑う場所も

子供の時のように自由に得られない。

虚勢や見栄を張って

自分の心を偽っている。

泣きたい時だって、大きな声で笑い時だって

無理矢理

気付かないふりをして、

自分の心を隠したままでいてしまう。

行きたい場所があると分かっていても、

見つけにいかないまま、

大人を過ぎて行く。

行き着く場所が無く、落ち着かない心は、

限界の範囲さえも分からなくなって、

いつしか心を少しずつ壊して行く。

自分でも気付かないままに壊れて、

残るのは苦しさだけ。


だけど、もし、

その苦しさに気付けたのなら

立ち止まって欲しい。

そのまま暗がりの中で、彷徨う位なら

どんなに小さくても良い

明るくなくても良い。

せめて、指先が少しでも見える位の

あなただけの光を見つけて。

10/27/2024, 3:34:46 PM

『紅茶の香り』

朝食には、

コーヒーよりも紅茶が好きなあなたのために

ホットケーキを焼く。

蒸らした紅茶の香りに誘われて

あなたが起きて来る。


そんな毎日をずっと一緒に過ごせると

思っていた。


だけれど、

朝は毎日やってくるのに

紅茶の香りに誘われて

起きて来るあなたが居ない。


少し寝ぼけながら

おはようと笑うあなたの顔や

紅茶を飲みながら

たわいも無い話をしたり

些細なくだらない喧嘩をしたり

あなたの表情を見ているのが

私の日常だった。


居なくなってから、知った。

あなたと居る事が

私の日常だったと。

当たり前のように

二人、歳を取っても

そんな朝を過ごす日常を

信じていた。



私は、朝日に照らされて

眩しい位のあなたの席に

いつものように

紅茶とホットケーキを置いた。


私の心の中だけでも良いから、

寝ぼけながら

おはようと笑って起きてくる

あなたに会えるように。

10/26/2024, 3:33:44 PM

『愛言葉』

二人にある愛言葉を探してみても、

もう、あれ以上の言葉は見つからない。


あなたが私を置いていった日から

何度も何度も後悔した。

あなたへの感情を知っていたのに

私は伝えられなかった。

いつかは、伝えられると思って

心の中に置いていた言葉を

渡せずにあなたは居なくなってしまった。


あなたは、私に言葉を置いていってくれたのに。


あなたを忘れられたら

あなたの名前を忘れられたら良いのに

と思ってしまう程、

あなたからの残された合言葉は、

今では、私の感情を何度も揺さぶって

苦しい。


どうして、居なくなってしまったの。

私は、

あなたに何も言葉を渡せて居なかったのに。


あなたは、言葉を置いて行くなんて狡いよ。


だったら、せめて

あなたにまた会える時まで

私はあなたへ渡せなかった愛言葉を

心の中に置いておくから。

取りに来てよ。

10/25/2024, 10:19:00 AM

『友達』

友達を作るのは、簡単なのに

本当の友達を作る事は、難しい。

本当の友達って何だろう。


友達同士が友達だと思ってくれている事だろうか。

友達という基準もなければ、

概念もない、曖昧な関係。


簡単に、傷つけてしまう相手

簡単に、傷つけられる相手なんて

友達とは言えないのに、

表面上は友達同士に見える。


何でも言える相手が友達なら

どうして、

簡単に傷つく言葉を吐けると言うのか。

相手を思うからこそ言えない言葉もあるはずだ。

私にとって、友達は、

全てを受け入れてくれる、

全てを分かってくれる相手じゃない。

お互いの距離感を知ってくれている相手だ。



連絡を取らなくなって行く大人になっても、

日常の中で、ふと、思い出す相手なんだと思う。

特に、会いたいわけじゃない。

今日も元気に過ごしてくれているだけでいい。

それだけで、充分だ。

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