次郎

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『暗がりの中で』


部屋を暗くして、

鉄塔が赤く点滅をしている景色を眺めていると

懐かしい気持ちが込み上げて来る。

点滅するその光は

私の鼓動と同じように一定のリズムを刻み

心地が良い。

その光は、忘れていた子供の時の

感情を思い起こさせて

自然と自分の心の中が解放されて行くようだ。


大人になると

泣く場所も笑う場所も

子供の時のように自由に得られない。

虚勢や見栄を張って

自分の心を偽っている。

泣きたい時だって、大きな声で笑い時だって

無理矢理

気付かないふりをして、

自分の心を隠したままでいてしまう。

行きたい場所があると分かっていても、

見つけにいかないまま、

大人を過ぎて行く。

行き着く場所が無く、落ち着かない心は、

限界の範囲さえも分からなくなって、

いつしか心を少しずつ壊して行く。

自分でも気付かないままに壊れて、

残るのは苦しさだけ。


だけど、もし、

その苦しさに気付けたのなら

立ち止まって欲しい。

そのまま暗がりの中で、彷徨う位なら

どんなに小さくても良い

明るくなくても良い。

せめて、指先が少しでも見える位の

あなただけの光を見つけて。

10/28/2024, 5:25:46 PM