次郎

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12/23/2024, 2:52:28 PM

『第三話』


二人で借りていたアパートから

引っ越し準備をしていると

あの人の荷物は、ほぼ無かった事に気付いた。

私が気付かないように少しずつ

減らしていたのだと今頃知った。


私は、いつからか変わって行っている事にも

気付かないふりをして

あの人の方を見ないようにしていた。

私の心を見透かされている

真っ直ぐの視線に

あの人と目線を合わせているふりを

ずっとして居たのだ。


悪いのは私の方だった。


『愛情や友情、恋情』

どれにも当てはまらない

あの人への感情は何と呼べば良いのか分からない。


でも、私の心の中には

情はあった事は確かなのだ。

あの人が居ない部屋は寂しいとも

悲しいとも思っている。

何と呼べば良いかは分からないけれど

決して、『嫌い』ではなかった。

あの人が悲しいと私も一緒に

泣ける位の感情は心にはあったのだ。


私は、あの人に置いて行かれた

あの人専用のマグカップを手に取ると

廃棄のダンボールに入れた。

12/21/2024, 2:03:23 PM

『第二話』


就職を期に結婚を前提ならと

一緒に住む事を許された

相手が昨日、出て行った。


約3年間、一緒暮らしていた相手が

最後の言った言葉は

『他に好きな人が出来た』だった。


私は、その言葉に

何も返す事が出来なかった。


『他に好きな人』が

相手には出来ると言う事

なのに私は相手を『好き』だったのかと

聞かれれば即答で『はい』とは言えない気がした。


それなのに、一緒に住む事には抵抗はなかった。

一緒に暮らして約3年間

付き合いからすれば計4年間という時間を

共にしても苦ではなかったと言うだけで

相手を『好き』と言う感情の

本当の定義を分かっていなかったのだ。


初めから、進む歩幅が違っていた。

合わない歩幅は

いつか、曲がり角でもう追いつけなくなる。

私は、ただただ

曲がって見えなくなって行く相手を

追いかけもせず後ろで見ていただけ。


だから、

『他に好きな人は出来た』のなら

それはもう私には止める事は出来ないし

止める理由も無かった。



私は曲がった道の先には、

もうあなたは居ないと

分かっている道の先を眺めて

ただただ、

誰かを『好き』や『愛する』事を

分からないまま

進んで行くのだろうと思った。

12/20/2024, 2:29:46 PM

『第一話』

あなたは初恋の人を今でも覚えていますか?

初恋はいつで、その初恋は

きちんと終止符を打っていますか?


だいたいの人は、

初恋は初恋のままで

いつの間にかその淡い想いだけが

心の中に残っている状態だと思う。


良い思い出だけの初恋がきっと多いだろう。


でも、私の場合はこの思い出は

きっと初恋とは呼べないかもしれない。

淡くも甘酸っぱくもない

思い出だけが心に未だに残っている。


私は、『初恋の君』に

想い伝えた覚えもないのに

君が私に言った

『嫌い』の言葉が

私の初恋が全て嫌な思い出に変わった。


人に嫌われると言う意味が

良く分からなかった心に

突き刺された言葉は

今でも抜けない棘のように

思い出したくも無い思い出になった。


初恋の君の名前も声も顔も

忘れたのに

残り続ける言葉は時として残酷だ。


君にとっては忘れた言葉なのに

私にはこの言葉がどうしたら抜けるか

未だに分からないでいる。



初恋が良い思い出で終わっているからこそ

誰かを好きと言う気持ちが

分かるのかも知れない。

12/19/2024, 3:09:47 PM

『寂しさ』



あなたに会えない寂しさは

何で埋めればいいのだろう

夜、朝、昼間

そして、夕暮れ


あなたが笑っていた時間を

思い出す度に

胸の奥が痛くて苦しい


あなたと同じテレビを観て

笑い合っていたのに

ひとりで笑うのは

とても寂しい

チャンネルを取り合う人も

寒い冬に

熱すぎる位のコーヒーを淹れてくれる人が

側に居ないだけで

わたしはこんなにも寂しい


一緒に居るのが当たり前過ぎた毎日が

今では憎らしい


たった数日から

数ヶ月、

それからずっと


あなたが居ない寂しさは

何にでも変えられないよ


だから、

早く帰って来て

心だけでも

いつか、帰って来てくれると

わたしは信じてる

12/9/2024, 3:49:07 PM

『手を繋いで』


大好きな貴方に、今度いつ逢えるかは

分からないけれど

夢の中で握った貴方の手は

温かかった


ずっと前から

その暖かさを知って居るような

そんな優しい手だった


今度逢ったら

貴方に言いたい事が合るのに

夢の中以外では

素直に言えなくて

貴方のその手さえも

触れられない私は

ただの臆病者


たった一言を伝えれば良いだけなのに

そのもどかしさは

周囲を通り越して

自分でも嫌になってくる


夢の中でなら

『貴方の事がずっと好きなんだと』言えるのに

夢の中でなら

貴方の手に触れられるのに


目の前に居る貴方が

私に笑ってくれる度に

私はいつか来る終わりを思ってしまう

いずれ来るとは分かっているのに

私の心を引き留めて

貴方の手や心に

触れられなくなるの

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