『第三話』
二人で借りていたアパートから
引っ越し準備をしていると
あの人の荷物は、ほぼ無かった事に気付いた。
私が気付かないように少しずつ
減らしていたのだと今頃知った。
私は、いつからか変わって行っている事にも
気付かないふりをして
あの人の方を見ないようにしていた。
私の心を見透かされている
真っ直ぐの視線に
あの人と目線を合わせているふりを
ずっとして居たのだ。
悪いのは私の方だった。
『愛情や友情、恋情』
どれにも当てはまらない
あの人への感情は何と呼べば良いのか分からない。
でも、私の心の中には
情はあった事は確かなのだ。
あの人が居ない部屋は寂しいとも
悲しいとも思っている。
何と呼べば良いかは分からないけれど
決して、『嫌い』ではなかった。
あの人が悲しいと私も一緒に
泣ける位の感情は心にはあったのだ。
私は、あの人に置いて行かれた
あの人専用のマグカップを手に取ると
廃棄のダンボールに入れた。
12/23/2024, 2:52:28 PM