次郎

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『紅茶の香り』

朝食には、

コーヒーよりも紅茶が好きなあなたのために

ホットケーキを焼く。

蒸らした紅茶の香りに誘われて

あなたが起きて来る。


そんな毎日をずっと一緒に過ごせると

思っていた。


だけれど、

朝は毎日やってくるのに

紅茶の香りに誘われて

起きて来るあなたが居ない。


少し寝ぼけながら

おはようと笑うあなたの顔や

紅茶を飲みながら

たわいも無い話をしたり

些細なくだらない喧嘩をしたり

あなたの表情を見ているのが

私の日常だった。


居なくなってから、知った。

あなたと居る事が

私の日常だったと。

当たり前のように

二人、歳を取っても

そんな朝を過ごす日常を

信じていた。



私は、朝日に照らされて

眩しい位のあなたの席に

いつものように

紅茶とホットケーキを置いた。


私の心の中だけでも良いから、

寝ぼけながら

おはようと笑って起きてくる

あなたに会えるように。

10/27/2024, 3:34:46 PM