次郎

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10/16/2024, 2:02:40 PM

『やわらかな光』

優しい月の光が

あなたの横顔を照らしている。

あなたは無言のまま、

長い間、その月を眺めては、

何かを言いたそうな表情を浮かべている。

私は、

それに気付かないように

月の光で少し明るくなった

足元を眺める。


言いたい事はわかる。

あなたが何を伝えたいのかも。


だけれど、それは余りにも残酷で

私はあなたの言葉を受け止めれる自信が無かった。


あなたのその優しい口元から

どうしようも無い現実が帯びてくるのが恐い。


この世はどうして、

こんなにも無情なのだろう。

どうして、私が大切にしたい人ばかり

居なくなって行くのだろう。


泣きたいのはあなたなはずなのに。

私の足元には、たくさんの涙が

優しい月に照らされ落ちて行く。


私は、どうかその月の光に

あなたが気付かないように、ただただ願った。

10/12/2024, 2:40:46 PM

『放課後』

それは、クラブが終わって

いつものように友達と校舎の裏側で

話している時だった。


3階の踊り場の窓から外を眺めている君を

初めて見つけた。


数秒間、時が止まったかのように

君から目が離せなかった。

暫く、君を見ていると

ふと君はこちらに顔を向けた。

私は、君と目が合ったような気がして

視線を外さずに居ると、

何処か違和感を覚えた。

そして、気付いてしまった。

『君は、私と同じ時間枠にいる人間ではない』と

何故なら、その踊り場の窓は

人が立てるような場所には無い。

梯子を使ったとしても

立ち方が不自然だった。

寧ろ椅子にでも座っているような姿だった。


私は友達に踊り場に誰か居ると言いかけて止めた。

変に思われるから言いたく無かったわけじゃない。

ただ、君の顔がとても悲しそうだったからだ。


君を見ていると

同じように君も見ているような感覚がした。


本当は、目を合わせない方が良いと言うけれど

私には、君が見えるし

君にも私が見えている。

君がどんな存在であったとしても

君の存在を蔑ろにして良い理由が無かった。


私は、友達に忘れ物をしたと言って、校舎に戻った。

きっと、近くに行くと君は姿を消してしまう霞だと

分かっていても、

足は踊り場に向かってしまう。


私は急いで階段を駆け上がった。

3階に着くと、

やはり窓は高く人が立てるような場所では無かった。


窓の向こうには赤く染まる空だけが見えるのに、

君の姿は何処にも無かった。

10/11/2024, 2:45:50 PM

『カーテン』

風に揺れるカーテンの

向こうには、

青々とした山が見える。

昔から知っている山ではないけれど

そんな山を眺めていると

懐かしい気持ちになる。

大人になって

喧騒の毎日に疲れた時、

思い出すものは、小さい頃に見た似た景色。

家族で登った山や

学校の遠足で友達と登った山。

ただそこにあるだけなのに、

朝も夜も景色を見る余裕も無い日々だった私に

色とりどりな世界を思い出させてくれた景色だ。


私は、揺れるカーテンの隙間から

青々とした山を眺めて

コーヒーを啜り考える。

後何年、この景色を見られるだろうかと。

10/10/2024, 3:28:05 PM

『涙の理由』

私は、貴女が深い眠りについて

ずっと後悔している事がある。


後悔は沢山あるけれど、

その中でも、心の中で、

今でもシコリのように残っている事がある。


貴女が、

辛い宣告をされた時、

一人で訊かせてしまった事だ。

貴女は、

まさかとも思っていなかった結果に

どんな気持ちで聞いていたのか

私には分からない。

どんな気持ちで、結果を訊いて

家路についたのか、私には計り知れない。


家に帰ってきた貴女の目は赤かった。

その目を見れば、言われなくても

どういう結果だったのか察しがついた。

私も絶望を叩きつけられた感覚がした。

長い闘病を漸く終えれたばかりだと言うのに。

今生の非情さを恨んだ。


一人で行かせるのでは無かったと後悔した。

一人でなければ、

貴女は押し殺さずに泣けたはずなのに。

何でも我慢してしまう貴女だからこそ

一緒に涙を流せる相手が、側に居るべきだった。

一人より、二人の方が

貴女の流した涙の重さを

少しは変えれたのかも知れない。

側に居られたのなら、

貴女が流した涙の理由も、変えられたかも知れない。


だって、

この世には、何よりも重い涙を

一人で受け止められる人間など居ないから。

10/9/2024, 10:52:09 AM

『ココロオドル』

大人になっても、

クリスマスはココロがオドルもの。

キラキラと街が煌めいて、

サンタクロースと出逢えない大人なっても

特別な1日に感じる。

きっと、

子供の時の気持ちが

思い出されるからだろう。


大人になると

生きて来た分、休みもなく、

何処までも心が枝別れをしていく。

そんな大木のように、

広がっていく心に疲弊する。

だけれど、

クリスマスは特に何かが起こるような気がして

ワクワクしながら眠りについた子供の時のように、

大人になっても

クリスマスは唯一許される気持ちになれる。

クリスマスは、心が枝別れしていなかった

子供の時の心に戻れる気がして

心がワクワクするのだ。

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