次郎

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『放課後』

それは、クラブが終わって

いつものように友達と校舎の裏側で

話している時だった。


3階の踊り場の窓から外を眺めている君を

初めて見つけた。


数秒間、時が止まったかのように

君から目が離せなかった。

暫く、君を見ていると

ふと君はこちらに顔を向けた。

私は、君と目が合ったような気がして

視線を外さずに居ると、

何処か違和感を覚えた。

そして、気付いてしまった。

『君は、私と同じ時間枠にいる人間ではない』と

何故なら、その踊り場の窓は

人が立てるような場所には無い。

梯子を使ったとしても

立ち方が不自然だった。

寧ろ椅子にでも座っているような姿だった。


私は友達に踊り場に誰か居ると言いかけて止めた。

変に思われるから言いたく無かったわけじゃない。

ただ、君の顔がとても悲しそうだったからだ。


君を見ていると

同じように君も見ているような感覚がした。


本当は、目を合わせない方が良いと言うけれど

私には、君が見えるし

君にも私が見えている。

君がどんな存在であったとしても

君の存在を蔑ろにして良い理由が無かった。


私は、友達に忘れ物をしたと言って、校舎に戻った。

きっと、近くに行くと君は姿を消してしまう霞だと

分かっていても、

足は踊り場に向かってしまう。


私は急いで階段を駆け上がった。

3階に着くと、

やはり窓は高く人が立てるような場所では無かった。


窓の向こうには赤く染まる空だけが見えるのに、

君の姿は何処にも無かった。

10/12/2024, 2:40:46 PM