くっか

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7/5/2024, 5:34:23 PM

コップ代わりの取っ手付きビーカー
自家製のレモンシロップ50ml
炭酸水をたっぷり注ぎ
氷を放り込む

今日は贅沢がしたくって
星空を飲んでみたくって
月に見立てたレモンの輪切り
星に見立てた金平糖
ビーカーに入れた
それらは深く沈んでいった

あんまり星空には見えなくて
少しガッカリしたが
それでも何時もより贅沢で
気分は良かった

その気分のまま
夜更けの自室に戻り
卓上ライトにビーカーをかざす
そこにはキラキラした数え切れないほどの星があった
沢山の星が下から上へと昇り消えていく

図らずもそれは星空だった
私はその星空を飲み
底から掬い取った青い星を
奥歯で噛んだ
幽かに檸檬の味がした
小さな贅沢を噛み締めた

〜星空〜

7/4/2024, 11:21:09 PM

幼い頃に読んだ
水木先生の『妖怪図鑑』

地獄絵図を
食い入るように 惹きつけられるように
何度も何度も見た

『虫を一匹でも殺せば地獄に落ちる』

この言葉が枷になった
虫が殺せなくなった
地獄に行きたくなかった

虫が出れば
父や母を頼る
今思えば残酷な子どもだ

歳を重ねると、
虫を殺さねばならない
状況が訪れた

覚悟を決めて、
ティッシュを使って
潰した
殺した

なんとなく開けて、
虫の状況を確認した

すれば、あんなに飛び回って
しっかり見えなかった虫の構造が
死によって
ありありとみえた

肢 翅 眼

食い入るように 惹きつけられるように
見た
さっきまでは飛んでいた
自分の手で止めてしまった
枷は外れた

虫を殺してもらっていたら
地獄に落ちなかったのだろうか

虫を殺してしまった私は
地獄に落ちるのだろうか

〜神様だけが知っている〜

7/3/2024, 11:05:36 AM

室生犀星先生の
『靴下』を読んで
ふと思い出す
私にはもう一人兄弟がいたことを

兄弟だった子の
名前を私は知らない
兄弟だった子は
外の世界を知らない

なぜかそのことを
ふと思い出す

乗り換えで降りた駅
普段は買わない
抹茶キャラメルを手にする

この気持は何だろう
渇いた口にひとつ放り込む
執拗な甘苦さに喉が渇く

その子の哀しみ 私は知らない
その子の哀しみ 私は考えることしか出来ない

名前の知らない兄弟の分
私は知らなければならない
世界を知らずに死ぬ訳にはいかない

見つめた線路の先には青空
私の生きるべき道に見えた

〜この道の先に〜

7/3/2024, 12:54:27 AM


隣にあるはずのスマホを探し
アラームを止めた

どたり
生まれ落ちた子鹿のように
ベッドに沈み込んだ体は動かない

薄いカーテン越しに
朝日がさしこむ

体に日差しがあたり
少しずつ目を開ける

両手を使って
必死に体を起こし
今日も私は生まれた

〜日差し〜

7/1/2024, 10:33:59 AM

電車が迎えに来た
今日はいつもより
空が明るい

田んぼから住宅街
住宅街からビル
移り変わる景色
紫色の夕焼け
それらをぼんやり眺めていた

電車が地下に潜り
パチッと明かりを消したように
窓越しの景色は暗闇になった
代わりに見えたのは人
セットしたであろう
髪は崩れて、
今日も頑張ったのだろう
顔から疲労が見てとれた

頑張ったね 今日もお疲れ様と
声をかけようとするが、
彼女はいなくなる
代わりに見えたのは
優しく包むような月と
温かみのある街の光

改札を出て 家に帰ろうとする足は
コンビニに向かった
少し高めのプリンを買って
心で呟く
「今日もお疲れ様」

〜窓越しに見えるのは〜

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