"スマイル"
酷く悔しい
酷く苦しい
酷く悲しい
酷く、寒い。じわじわと私の体温を奪い続ける風にそう思う
前までは同じ部活仲間だった同級生が
先輩が、後輩が、高らかに舞い。人々を魅了している
数ヶ月前までは私もそこにいた
今はただ、スマホを横に構えてそれを眺めている
あそこから私を追い出した同級生が憎い。
憎い憎い憎たらしい
私がこんな事を思っているとも知らずに。
「私は何も悪くない」と心から思っている笑顔のあいつは
私が狂いそうになっている目の前で、ずっとそこにいる
目の前がじわと歪み、スマホが震えるのを感じる
曲が止まり、淑やかに整列をする。
私はそれを何度も見たことがある。何度も何度も何度も
少ししてから絶大な拍手が巻き起こる
私も左手に右手を打ちつけた
震える手で、誰にも負けないほどに大きな音で
私もそこにいたかった。
とびきりの笑顔を携え、たっぷりの満足感と敬意を混ぜ込み
私はこんな言葉を放り出した。
「お疲れ様でした、とっても素敵でしたよ。」
"どこにも書けないこと"
「ずっとずっと」
それから先はペンが止まる
それまでは踊っていたペン先が紙に近づいたり離れたり
ペンを机の上に放り投げて歪んだ顔を紙に埋める
本心を言葉にするということが、こんなに難しいだなんて
"時計の針"
冬のある晩、広い廊下で緑と赤に光っているのを眺めてただ独りそこにいた。
座ってジッとしていると立ちたくなり
立って歩き回っていると座りたくなる
意味のわからない自らの願望に混乱して、自分が自分ではなくなる感覚に陥る。
「頭がおかしくなりそうだ…。」
自らを捕まえ、律するためにそんな言葉を口にする
とうとう座って、脚を忙しなく動かす
けれどそれだけでは足るはずもなかった
不安と緊張が出会い、ほどけ、混ざり合い
肺の底にべっとりとこびりつく。浅く、素早い呼吸となっていく
それは右腕の手首から聞こえてくる規則正しい機械音にいざなわれる
時の進みが自らの身体と合致し、胃が収縮して全体を巡る血液が沸騰するのを感じる
同時に脳味噌の奥は冷えわたり
思考を放棄しようとする
みっともなく床に滑り落ち、手を叩きつける
ぐるりと目の前が回る
バチンッ
痛い
自らの頬を両の手で打ち、壁と床の境を見つめる
時計を掠めた右頬が特に痛む
情けない自らを殺すため、右腕の手首に視線を向ける。
大きく震えている右腕を左手で押さえ付ける
「 」
肺を目一杯膨らませ、くっついてしまう程に中身を吐き出す
支配されていた動揺を無くすため、ジッと見つめて全てが終わるその時を待っていた。
"溢れる気持ち"
ずっと我慢をしていた。
我慢というには烏滸がましいのかもしれない。
嫌われることが怖くて、情けないと蔑まれるのが怖くて
ずっと自らをひた隠しにして来た
ある日、浴び慣れたはずの言葉を聴いて
感情を適切に処理する器が音もなく崩れ去る
溢れた感情が私を濡らす
そんなものは私ではないと律し続けた 涙の結界 が
張り続けて緩むことを知ることができなかった 緊張の糸 が
喉の奥に長い間、漂い燻り続けた 惨めな本心 が
壊れて、崩れて、嘆き始める
留まるところなど知らずに、ずっと
今までちゃんと出来たのに
崩れたそれらは中々治らずに、私の中に居座っている
そんな哀れで無様で醜いことをしても、状況のひとつも変えることができない私が
大嫌いで、たまらない。
"Kiss"
どうやら、真実のキスとやらというものがあるという
純粋な強い 愛 の力が、呪いや深い眠りを解くことが出来るという。
_御伽話だ。莫迦莫迦しい
キミはきっとそういうのだろう、自分も完全に同意する
そんな物に酔いしれていては、幸も不幸も見逃してしまう
けれど、もし本当にそんなものがあるとするならば
たくさんのチューブに繋がれたキミを見る。
優しく閉じられたキミの瞼の下にある温かな眼を思い起こす
もし、本当にそんなものがあるならば
目覚めさせてみせろ
優しく、愚かなリップ音
響いた後は、哀れに啜り泣く音だけがこだましている