"時計の針"
冬のある晩、広い廊下で緑と赤に光っているのを眺めてただ独りそこにいた。
座ってジッとしていると立ちたくなり
立って歩き回っていると座りたくなる
意味のわからない自らの願望に混乱して、自分が自分ではなくなる感覚に陥る。
「頭がおかしくなりそうだ…。」
自らを捕まえ、律するためにそんな言葉を口にする
とうとう座って、脚を忙しなく動かす
けれどそれだけでは足るはずもなかった
不安と緊張が出会い、ほどけ、混ざり合い
肺の底にべっとりとこびりつく。浅く、素早い呼吸となっていく
それは右腕の手首から聞こえてくる規則正しい機械音にいざなわれる
時の進みが自らの身体と合致し、胃が収縮して全体を巡る血液が沸騰するのを感じる
同時に脳味噌の奥は冷えわたり
思考を放棄しようとする
みっともなく床に滑り落ち、手を叩きつける
ぐるりと目の前が回る
バチンッ
痛い
自らの頬を両の手で打ち、壁と床の境を見つめる
時計を掠めた右頬が特に痛む
情けない自らを殺すため、右腕の手首に視線を向ける。
大きく震えている右腕を左手で押さえ付ける
「 」
肺を目一杯膨らませ、くっついてしまう程に中身を吐き出す
支配されていた動揺を無くすため、ジッと見つめて全てが終わるその時を待っていた。
2/6/2026, 11:35:04 AM