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2/1/2026, 10:45:33 AM

"ブランコ"

すっかり遅くなってしまった。
とっぷりと闇に沈んだ夜空は、眩い星と月を携えている。

矢継ぎ早に足を動かし、近所である住宅街を奔走する
ふと、ぽっかりと空いた覚えのない空き地が目に止まる。

滑り台に鉄棒、最近は撤去が進んでいると噂のくるくると回る、まあるい遊具まで揃っている。

随分と古いのだろう。
色褪せ、錆び付いている


その中で、一際目立つ遊具が公園の中央に置かれている

その様はまるで新品のようで、他の遊具と違い使い込まれた形跡がない。


こんな古びた公園に新しく遊具を設置するなどあるだろうか
気になって入口を探し、踏み入る。

さくさくと草を踏み締めて進む、街灯に照らされて怪しく光る植物たちは、私を歓迎はしていないらしい。

目的に辿り着くが、特に何をするわけでもない。
深く観察してみるが、特に変わった様子もない。


不可解なことといえば、微かに揺れていること。


2つあるうちの1つが、まるで今この瞬間に乗り捨てられた様子で小さく前後に振れている。

もちろん私は触れていない。こんな暗い時間にブランコに乗るおかしな人などいないだろう。私以外には


揺れていない方のブランコの鎖に手をかけて腰を下ろす。


公園は子供が遊ぶ場所、流石に小さくて脚を相当折り込まなければ座れなかった。

けれども、遊べない訳ではない。
昔の記憶を頼りに漕ぎ出してみる。懐かしい感覚で頭がくらくらするが案外楽しめている。


満足したら前に揺れているタイミングでジャンプして、そのまま振り返らずに帰宅した。



次の日、少し早い時間に同じ道を通ったがブランコだけが姿を消していた。

他の遊具は前日と同じく色褪せて、寂しげな様子でそこにいる

ブランコがあったはずの場所には何も無く、地面を見ても他と変わらず一晩のうちに無理矢理に撤去された様子もない。

ただ忽然と姿を消している。


全くもって不可解だ。寝ぼけていたのだろうか
まさか夜にしか出てこない怪異のような遊具だったのではなかろうか

確認するよりも、帰って休むことを優先している私はそれ以来あの遊具で遊べてはいない。

事実を知る事になるのは、また帰りが遅くなった時だろう。

1/31/2026, 10:54:07 AM

"旅路の果てに"

至る所を練り歩いている。


桜色を見上げて、舞い落ちてくる花弁を捕まえてみたり🌸

青緑色の水平線を眺めて足を濡らしたり🐚

色とりどりに姿を変えた木々に触れてみたり🍁

白く輝く綺麗な夜景に惚れてみたり❄️


沢山のことをして
沢山の美味しいものを食べて
沢山のことを知り

文字通り、沢山の思い出を作った。


旅路の途中で買ったインスタントカメラ
大切に使おうと思ったのにすぐにフィルムが切れてしまうので悶々とした。結局沢山のフィルムを消費してしまった


旅の途中で拾った綺麗な葉っぱを使った栞なども、初めて作ったにしては良い出来だと思う。

旅に出た時よりも随分と増えた荷物を眺めては笑って
いつかは行くことになるであろうと確信していた場所へ向かう。


旅の間、ずっと懸想していた。
ひとりになるための旅だったはずなのに

結局のところ頭は忘れることなんてできず、意に反して想い焦がれることとなった。


重い、重すぎる

旅の途中で増え続けた荷物と自らの心が手に負えないことになっている事に気付いて笑いが止まらない。

周りの人が作業的に足を動かしているのに対し、たったひとり感情を表して喉の奥でくつくつと笑っている

ああなんて面白い。
緩み切った頬をなんとか抑えて歩を進めた。

1/30/2026, 3:33:49 PM

"あなたに届けたい"


ずうっと、自覚していた。

あなたを見るたび、沸々と湧き出すこの感情に。

けれど、押さえ込んで蓋をしていた。

叶うはずのないものだったから。

けれども、感情を抑えているとどうにも恍惚として

あなたを見ていると、どうにも我慢が効かなくなるのに

あなたから目を逸らせない。

狂った愛情と狂おしい殺意、受け取ってくれるはずでしょ



こんな感情を教えた、あなたが悪いのよ。

1/29/2026, 2:29:42 PM

"最愛の…"


急啓

涙の冷たさを知りました。

あなたの呼吸と、鼓動が止まった時
私はあなたを抱き締めていました。

私の腕の中で、あなたは動かなくなりました。


何より早く震え、動いている私の呼吸と、鼓動につられて
止まったあなたが動き出せばと願いました。

止まったあなたに引きずられて、私の呼吸も鼓動も
止まってしまえばと願いました。



何より大変だったのは、あなたのいない朝に慣れること。



随分あなたが甘やかすものだから。

寒い布団を畳むのが億劫になってしまった
ぼんやりとした頭の中であなたを見る朝が、こんなに尊いものなのだと知ってしまいました。


あれから作るご飯はいつも多くなってしまう。

広くなった家で、ふとした時にあなたの姿を探してしまう。

あなたがまだいらっしゃる気がしてたまらないのです。


朝起きてから覚めてもいない目を必死に開いて、
何もない隣を探っている。
憐れな私はおもしろいでしょう


あんなに温かくて、心地よかったはずの家の中が
冷たく、私を放り出そうとしてくるのです。


どうか、早く迎えに来てください。

そんなことを言っては、あなたは怒りますでしょう。
それでもいい。本当にそれでもよいのですから
どうか、また私に会ってください

私はずっと、お待ちしてます。

草々



ぽつぽつと手紙を濡らす雫を、袖で乱暴に拭い取る。
こんなものを書いて、どうするという?

けれど、どうしても諦めきれないのです。

私はもう一枚の紙を掬い取り、はじめに拝複、終わりに拝答と筆が乾かぬうちに書き上げる。

4文字だけ書かれた情緒の無い紙と、先程の哀れで無様な手紙
2枚の手紙を包み、それだけを持って雨に打たれ出た。

1/28/2026, 11:05:34 AM

"街へ"

冬の真っ只中、全財産と少しの荷物を小さな鞄に詰め込む。

ピッと機械音が右側で響いて、さっさと歩みを進める。

ぶわっと空気が吹き込んで、コートが翻る
何度この風を感じても慣れる気がしない。

扉の左側に立って、降りる人を待つ

田舎の始発列車
車内は人気がなく座る場所も、選び放題。

入ってすぐの席に腰掛けて、横の壁にもたれかかる
外はまだ暗い

アナウンスがあった後に空気が漏れ出すような音を立てながら壁の向こうの扉が閉まるのを感じる。

ほんの少しして、揺れ出す。

携帯を取り出して触る気にもなれず、ただ誰もいない向かい側の窓を眺めるしかなかった

ほんの少しの赤を携えた空はあんまり綺麗で、つい惚れてしまいそうになるから

ひとつ咳をして、意味もなく膝の上に置かれた鞄のチャックに手を伸ばす。

触って、握って、滑らせて
開けることもせずにただ子供のように手遊びをしている

まだまだ、到着にはかかりそうだ。

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