"ブランコ"
すっかり遅くなってしまった。
とっぷりと闇に沈んだ夜空は、眩い星と月を携えている。
矢継ぎ早に足を動かし、近所である住宅街を奔走する
ふと、ぽっかりと空いた覚えのない空き地が目に止まる。
滑り台に鉄棒、最近は撤去が進んでいると噂のくるくると回る、まあるい遊具まで揃っている。
随分と古いのだろう。
色褪せ、錆び付いている
その中で、一際目立つ遊具が公園の中央に置かれている
その様はまるで新品のようで、他の遊具と違い使い込まれた形跡がない。
こんな古びた公園に新しく遊具を設置するなどあるだろうか
気になって入口を探し、踏み入る。
さくさくと草を踏み締めて進む、街灯に照らされて怪しく光る植物たちは、私を歓迎はしていないらしい。
目的に辿り着くが、特に何をするわけでもない。
深く観察してみるが、特に変わった様子もない。
不可解なことといえば、微かに揺れていること。
2つあるうちの1つが、まるで今この瞬間に乗り捨てられた様子で小さく前後に振れている。
もちろん私は触れていない。こんな暗い時間にブランコに乗るおかしな人などいないだろう。私以外には
揺れていない方のブランコの鎖に手をかけて腰を下ろす。
公園は子供が遊ぶ場所、流石に小さくて脚を相当折り込まなければ座れなかった。
けれども、遊べない訳ではない。
昔の記憶を頼りに漕ぎ出してみる。懐かしい感覚で頭がくらくらするが案外楽しめている。
満足したら前に揺れているタイミングでジャンプして、そのまま振り返らずに帰宅した。
次の日、少し早い時間に同じ道を通ったがブランコだけが姿を消していた。
他の遊具は前日と同じく色褪せて、寂しげな様子でそこにいる
ブランコがあったはずの場所には何も無く、地面を見ても他と変わらず一晩のうちに無理矢理に撤去された様子もない。
ただ忽然と姿を消している。
全くもって不可解だ。寝ぼけていたのだろうか
まさか夜にしか出てこない怪異のような遊具だったのではなかろうか
確認するよりも、帰って休むことを優先している私はそれ以来あの遊具で遊べてはいない。
事実を知る事になるのは、また帰りが遅くなった時だろう。
2/1/2026, 10:45:33 AM