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"最愛の…"


急啓

涙の冷たさを知りました。

あなたの呼吸と、鼓動が止まった時
私はあなたを抱き締めていました。

私の腕の中で、あなたは動かなくなりました。


何より早く震え、動いている私の呼吸と、鼓動につられて
止まったあなたが動き出せばと願いました。

止まったあなたに引きずられて、私の呼吸も鼓動も
止まってしまえばと願いました。



何より大変だったのは、あなたのいない朝に慣れること。



随分あなたが甘やかすものだから。

寒い布団を畳むのが億劫になってしまった
ぼんやりとした頭の中であなたを見る朝が、こんなに尊いものなのだと知ってしまいました。


あれから作るご飯はいつも多くなってしまう。

広くなった家で、ふとした時にあなたの姿を探してしまう。

あなたがまだいらっしゃる気がしてたまらないのです。


朝起きてから覚めてもいない目を必死に開いて、
何もない隣を探っている。
憐れな私はおもしろいでしょう


あんなに温かくて、心地よかったはずの家の中が
冷たく、私を放り出そうとしてくるのです。


どうか、早く迎えに来てください。

そんなことを言っては、あなたは怒りますでしょう。
それでもいい。本当にそれでもよいのですから
どうか、また私に会ってください

私はずっと、お待ちしてます。

草々



ぽつぽつと手紙を濡らす雫を、袖で乱暴に拭い取る。
こんなものを書いて、どうするという?

けれど、どうしても諦めきれないのです。

私はもう一枚の紙を掬い取り、はじめに拝複、終わりに拝答と筆が乾かぬうちに書き上げる。

4文字だけ書かれた情緒の無い紙と、先程の哀れで無様な手紙
2枚の手紙を包み、それだけを持って雨に打たれ出た。

1/29/2026, 2:29:42 PM