"街へ"
冬の真っ只中、全財産と少しの荷物を小さな鞄に詰め込む。
ピッと機械音が右側で響いて、さっさと歩みを進める。
ぶわっと空気が吹き込んで、コートが翻る
何度この風を感じても慣れる気がしない。
扉の左側に立って、降りる人を待つ
田舎の始発列車
車内は人気がなく座る場所も、選び放題。
入ってすぐの席に腰掛けて、横の壁にもたれかかる
外はまだ暗い
アナウンスがあった後に空気が漏れ出すような音を立てながら壁の向こうの扉が閉まるのを感じる。
ほんの少しして、揺れ出す。
携帯を取り出して触る気にもなれず、ただ誰もいない向かい側の窓を眺めるしかなかった
ほんの少しの赤を携えた空はあんまり綺麗で、つい惚れてしまいそうになるから
ひとつ咳をして、意味もなく膝の上に置かれた鞄のチャックに手を伸ばす。
触って、握って、滑らせて
開けることもせずにただ子供のように手遊びをしている
まだまだ、到着にはかかりそうだ。
1/28/2026, 11:05:34 AM