【タイムマシーン】
たとえタイムマシーンがあったとしても、
僕は過去には戻らない。未来にも行かない。
僕は僕の道をしっかりと歩いて、
君と出会い、別れる未来を受け止めるよ。
だから、僕にタイムマシーンはいらない。
【特別な夜】
※保留
【海の底】
あなたを追いかけて飛び込んだ海の底は、
冷たくてそして温かくて、暗くてそして明るい。
怒りも悲しさも、寂しさ、虚しさ、すべて無くなり、
ただひたすらにわたしはあなたを探す旅に出た。
綺麗な珊瑚の森を抜け、華やかな魚群を横切り、
海底から泡立つ泡沫に、あなたの姿はありますか?
かたかたと歪な地を這う貝がらたち、
ゆらゆら揺れる海藻に紛れる擬態魚たち、
そして深海に静かに佇む未知の生き物たち…。
わたしの愛しい人はどこにいるのでしょうか?
いつかきっとわたしはあなたを見つけるでしょう。
何年、何十年と経ってしまおうと、あなたを愛するわたしの想いは決して変わるものではありません。
たとえこの身が海に溶け落ち、小さな藻が息づき、
やがて新たな生き物たちの住処となったとしても、
それでもわたしはあなたをずっと探し続けます。
そしていつか、海の底で再会したのならば、
今度こそなんのしがらみもないわたしを見て、
あなたの答えを、あなたの口から聞かせてください。
【冬晴れ】
ある日のすっきりとした冬晴れに私は思う。
新しく年を迎えるたびに、あなたの去年は幸いだったのだろうか。あなたの今年は幸いになるだろうか。
きっと私の幸せとは誰にも理解はされないだろう。
誰かと好き合う未来もいらない。穏やかな時間もなくていい。みんなが望む幸せなど必要ない。
―――私が願うのはただあなたの幸せのみ。
たとえそれが恋でも愛でもなく、まして執着に変わり果てようとも、私のすべてはそこに注がれる。その想いが重かろうが痛かろうが、それが私の望むこと。
届かなくていい。………どうか届かないで欲しい。
あなたの幸せを願っていることは、私だけが知っていればそれでいい。
それが私の『幸せ』なのは、私の我が儘なのだから。
――2026/01/05――
明けましておめでとうございます。忙しさにカマかけてサボっていましたが、また少し復帰します。
取り急ぎ、いくつかのお題を重ねて書きました。
今年もおそらくテイストは変わりませんが、またよろしくお願い致します。 (月)
【凍える指先】
「さむーい!」
雪遊ぶ寒いある日、君はなぜか手袋を忘れて赤くなった指先を温めるように息を吹きかける。
「こんな寒い日になんで手袋を忘れるかな?」
と、口をついた言葉にきっと睨みつけられる。
「アンタが朝急かすからでしょ!」
8:15、これ以上待つことは2人で遅刻をするということ。毎日迎えに行くこちらの苦労はどこへやら。
「じゃあ、明日から迎えに行かなくていい?」
そう聞くと、君は慌てて首をふり、激しく拒否する。
「じょーだん! 遅刻しちゃうじゃん」
ならもっと早く起きなよ、という言葉を飲み込んでため息をひとつ。言っていることが支離滅裂なのに気がついているのだろうか。
それにしても指先は本当に真っ赤で、見ているこっちの方が痛々しく見えてしまう。ちらりと周囲を見渡すと人もまばらな通りで、ここなら人目も気にしなくていいだろう。
「ち、ちょっと…!」
冷たく凍える指先を大きな手のひらに包んで、コートのポケットの中に入れる。
驚いたような声を無視しながらすたすたと歩いていくと、勢いは次第に萎んでいき、大人しく後ろについてくる。諦めたような顔は少し赤らんでいるようにも見えて、あまり効果はないのかと少し心配になる。
「まだ寒い?」
そう聞くと、
「熱い!」
と、また怒ったように怒鳴られて、じゃあどうすればいいのか悩んでしまう。
けれどその手が引き離されることは、結局学校に着くまでなく、すっかり暖まってしっとりとした手のひらは門扉を通り過ぎるのと同時に離された。
「情緒不安定?」
君にそう問いかければ、頭を軽く叩かれ、颯爽とげた箱の方へと駆けていく。
その意味に気づくのはいったいいつになるのやら。
子供の頃から一緒にいる幼なじみの恋というものは、ここまで鈍くなるものなのか。
もう全身が熱くなっていた。