22時17分

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12/1/2024, 9:48:11 AM

泣かないで、下唇をぐっと噛み締めて、ずっと作り笑いをしている40歳になる人間。

数え年で40歳を「不惑」と呼ぶ。
2500年前の中国の思想家である孔子が、晩年に述べた言葉に由来する。

孔子は、15歳で学問を志し、30でその道で独り立ちし、40歳で進む道に迷いがなくなったとされている。

そんなこと、この複雑怪奇な現代であり得るのかと思うと、そんなわけがないと思えてしまう。
40の倍、80歳になったとしても、迷いっぱなしの人生なのではないか。

悲嘆の壁の前。
脳内に聳える硬く高い壁の前。
その前でウロウロと行ったり来たりをしている毎日。
角度により、この壁の色が変わる。
ある時は清廉を与える白、ある時は影の色。
陽の光で褪せた色。くたびれた色。

その様々な色合いに、これでも良いのだと思ったりする。
壁に向き合い、または逃げ。
自分の生き方の指針として、この壁の周りを蛇行運転することにしている。
人生は結果ではない。
この色が好きだ、という単純なものじゃない。

11/30/2024, 8:54:33 AM

冬のはじまりは、秋が終わる頃、ではないのだ。
実は秋と冬は重なり合っているようで、冬の前半が秋、冬の後半を冬と現代の日本人は呼ぶようにしている。

それは平成時代でもそうだったと思いたい。
今はSNSと気象庁の猛烈な予告によって、急に夏が終わり、急に秋が終わり、そして急に冬が終わり……1年通してみると夏の間延びした暑さしか印象にないようになる。

秋なのか冬なのか分からない。
夜は冬のはじまりとなっている。
寒さは夜から到来するのだろう。

11/29/2024, 9:57:03 AM

終わらせないで
(あとで書く)

11/28/2024, 9:55:26 AM

愛情の数値を、紙に書いて提出する学校があった。

導入された経緯などは、生徒たちにはよく分からないのだが、体温を確認するみたいなものだろう。
ちなみに隣の欄は「今日の体温」だ。
その人は女の子だったので、丸くかわいい字で数字を書いていく。

体温 36.4
愛情 36.4

親から示された愛情を、このように100分率で書いていく。36.4%受けてきた、という意味だ。
子どもの立場を鑑みると、愛情とは与えられる側だから、このような記述となるだろう。
体温と同じ結果になる。
風邪を引いて体温が上がると、いつもよりやさしくなる。大丈夫? 苦しくない? と親は子をわが子のように心配し、甲斐甲斐しく接する。
しかし、風邪が治ると愛情の数値が目減りする。
不機嫌になり、意見の相違があるとケンカをするようになる。

「先生、愛情って何ですか?」
まるで、勉強をする意味を他人に問うように、担任の先生に尋ねた。そうすれば、いつものように教えてくれる。そうだと思い込んだ。
しかし、今日ばかりか今月の担任は、げんなりとした顔つきである。美術の時間で習った言葉。グロッキー。
「入院すれば、分かるようになる」
「入院しないと分からないってことですか?」
子どもの質問を無視して、
「ああ……、今すぐにでも入院したい」と独り言。
「そしたら、金を稼がなくても親がお金をくれるようになる。もう残業したくない」

先生は頬杖をついた姿勢から、自分の顔をサンドイッチの具材のようにした。横方向からぐちゃっとした濡れた唇が縦に開いた。その中から覗いた前歯が汚い。そしてヤニ臭い。

こんな大人にはなりたくないなあ。
目が悪く、教室の最前列……。
くじ運も悪く、教壇の目の前が定位置である生徒はしばし心のなかで毒づく。
そして嘘だらけの紙切れに向き直った。
「もう辞めたい……」
「うるさいです先生」

11/27/2024, 9:46:50 AM

微熱の原因を探るため、身体中に手を当てていった。
お腹、胸、首、おでこ……。やはりおでこに当てると自身の熱の具合が分かる。

どうして分かるというのだろう。
それはおでこが冷たいからか。
あるいは、手の平全体が熱を持っているかのように熱いからか。

季節は秋から冬にかけて。
窓を開け、部屋の中の空気を入れ替える。
換気の風が、服の繊維を通り抜け、身体の表面を撫でた。冷たい風……。風邪を引いてさえいなければ、この風はもっと清々しく感じていたのだろうか。
身体に悪いと思っていても、風に当たる行為を止めようとは思わなかった。

同じ頃、向かい側の窓に、同様にして凍えるように小さな身体を震わせる子供がいた。
あの娘は不登校だろうかと近所の人は推測する。

玄関を扉を叩いてまで、外に出たくないのだ。
家の中にいすぎて、靴の履き方まで忘れかけているのかも知れない。
長い髪は雪崩に遭ったように散らばり、風に吹かれている。そして、引きこもりの娘は背を向け、窓際の暗い影へと消えようとした。

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