22時17分

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8/5/2024, 5:37:33 AM

つまらないことでも「本当につまらない」と断言することは、異常に簡単で難しい。
なんというか、未知の味のガムみたいなもの。
ひと目見ただけでは取るに足らない一粒。

一向に味がしない、つまんない状態にさせるには、数十分口の中で取り組まないといけない。
かといって、
「あー、噛んでてつまらなかった」
と、ぺっと吐き出して感想を述べるのは常設展示レベルにダサい。率直に言えないのは、天邪鬼めいている。

年齢によっても見方は異なると思う。
六面ダイスのサイコロを振る、一度。
低年齢なら、嫌というほど確率の問題で出くわすから、アタマの中は散らばったサイコロで数多である。
ようやく確率の問題から逃れられた年齢に依れば、サイコロの目によらず、それは一種の比喩へと転じ、多面的な見方をするように仕向けられる。

展開図という単元があった。
特にサイコロのみの展開図を複数種覚えさせられたのは、なんとなく伏線的な香りがする。
教科書に載せられたものの多くは、子どものときには効果を発しない。明らかに遅延的で視覚的な効果だ。

見方を変えるために、とりあえず目の前のものをこねこねするのがいいらしい。
立体を崩して、物体を崩して……、物質にする。

立体的から平面的に、物事を考える必要がある。
ああいう形を作るには、まず図面を描かねばならない。
立体とは、平面的図形の寄せ集めである。
それを見えるように、次元を一つ戻して二次元にし、考え直してから、三次元へ組み立てるように。

たかがサイコロ一つ、所詮運だ。
誰が振ったかなんて関係ない。
反省なんてさらに意味ない。
と落胆せず、そういった考え方のクセを見出して、新たに再構築することが肝要である。

そんな車輪の再開発めいたことをせず、単に「つまらない」と一蹴してもいいのか。

結局「つまらない」と言いたい人は、即断即決に憧れているのだと思う。つまり、あまり考えたくない人。
あるモノを即断即決して「つまらない」と即断即決するから、急速にそれをつまらなくさせている。

まあ、即断即決が一概に悪いとはいえないけど、大概即断即決する人は、即断即決に憧れている人。
即断即決でも、理由は要ると思う。

「どうしてそれにしたの?」
「なんとなく」

僕も靴選びを即断即決しては、よく後悔している。
足は冒険したくないって、駄々をこねている。
毎回同じメーカーの、同じサイズのものしか買わなくなってしまった。
変わらないって正直、とてもつまらない。

8/4/2024, 9:40:39 AM

目が覚めるまで、僕は何をしていたのだろう。
「夢遊病」というものがある。
睡眠中起き出して、意識もなく歩き回り、そして目が覚める。

最初は大層な寝相アートを創り出したなあ、という自覚だった。着ていた服が投げっぱなしになって散乱していたし、紫色の毛布はずるすると部屋の外の廊下に飛び出していた。
家出を検討する真面目な中学生みたいな、精神は家出済みだが、身体は家にいるような、ためらい。

しかし、連続ドラマの最高視聴率を叩き出したものをやってしまったときは、ちょっとおかしいな、自分。
と改めて認識した。
同一人物でないと思った。
どういえばいいのだろう。
ひとつに統合されてないというか、身体と心が分離したかのようだった。

所詮身体は心を乗せる有機物の籠でしかなく、主体性のある何者かによって操縦されている。
順当に飛行していた旅客機が墜落した跡の、その残骸を見た。

ベッドの中で気を失うように眠ったはずが、家の外の道ばたで寝ていた。
あれ? どうして僕は……
起き上がって足を見ると靴を履いていない。
靴下も履いていない、裸足だ。
どのような歩きかたをしたのだろう、土踏まずにも灰色の小さな石が付いていた。
それらを払い除けて、アスファルトの路地を走り、戻る。
裸足で道を歩くと新鮮な感じだ。とても痛いのは、不健康だからか。
違う、道を作る材質の硬度のせいだ。

玄関扉まで戻ると、なんと鍵がかかっている。
ポケットをまさぐる。
チャリンと鍵の在処を示した。
ちゃんと僕は鍵をかけて出たっていうのか?
まさか!
大慌てで手を入れ、鍵を取り出し、本物であるという証明音が聞こえる。確信のもと、中に入った。

特に何事もなく夜を過ごした靴があって、部屋があって廊下があって、リビングは……と、リビングまで歩くと異変がある。
リビングの窓が全開になっていて、白いレースのカーテンが内側に迫っていた。
ふわりと、外の風で膨らませていた。

こんなふうに、見えない何かで僕は膨らんでいる。
膨らんで、そして縮まって、また大きく膨らむ。
このカーテンの柔軟さに、僕は助けられている。

8/3/2024, 9:53:25 AM

病室に六人の被験者たちが集められた。
B製薬会社の投薬実験という、いわゆる治験の類で、三日で終了するという触れ込みだった。
正規の募集ではなく、どうやって応募したのかは……、そこから先は守秘義務で言えない。

被験者に与えられたルールはとても単純で、三日間病室からでないこと。毎日四回と、毎食と就寝時に新薬を服薬すること、だけである。
報酬は振り込みで、三日で十万円。

一日目、二日目、そして最終日も何事もなく終わって解散となった。
これだけで十万円とか、と被験者たちはみな嬉しい思いをしたはずだ。

しかし、うっすらと違和感めいたものがあった。
まず、自分を含む被験者のどれを見渡しても子供たちだったこと。三歳、六歳、九歳、十二歳、十五歳と続く。自分は十二歳だった。
きっちり三の倍数の年齢で構成されているというのが、データをとってやるぞというものがうかがい知れた。
一番下の年齢は赤ん坊だった。
〇歳を含めて三の倍数で揃えた、ということだろう。

……と、その時はその場で納得してしまったが、なんだか気味が悪い。
六人のうち一人が赤ん坊である、そのことがおかしいと思うのが自然だ。
それに、治験の三日間、看護師などが来なかったのである。
だから、おしめを変えるとかは、自分たちで代わりにやった。

もちろん新薬も飲ませた。
赤ん坊だからか、自分たちのような白い錠剤ではなく、白いトローチだから、意外と処置が容易かった。

赤ん坊もそうだが、治験中に不気味なことを経験したのだ。
あれは一日目か二日目か、どちらかわからないが、深夜に息苦しさを覚えた。
なにやら、心臓を撫でられた感じだった。
ぞっとするような冷たい手の感触で、直接心臓を握り触られた。

服ごとかきむしるように、その手をどけようとするが、残念ながらそんなことはできない。
服や皮膚を貫通して、直接触られている。
やがて地獄の夢のなかを自覚するように明晰になってきて、夜中に目覚めてしまった。
昔話のように、枕元に誰かが立っている!ということはなかった。なにもない。
赤ん坊も眠る、静かな深夜だった。
自分以外だれもが寝静まっている。

あれはいったい何だったのだろう?
幽霊……、と一言で片づけてもよかったのだが、気味が悪い治験だった。

8/2/2024, 7:12:20 AM

明日、もし晴れたら、
などと、天気を理由にしないで、何かしらのことをやる。

雲のような、ふわっとしたものだけど、それでも僕はとても満足している。
ネットを見ると不安にさせてくるようなものばかり。

話は変わるけど、サイバー攻撃でダウンした某ニコニコ動画なんだけど、再構築された契機にUIがYouTubeみたいに刷新されるらしいんだよね。
これ、僕もさっき知ったばかりなんだけど。

こうしてみると、サイバー攻撃されてよかったかもしれないね。ネットニュースだから信憑性は著しく悪いけど。

これも話は変わるけど、株価が暴落したってSNSは騒いでる。
僕も見てみたんだけどね。
どーん、なんだよ。
僕もグラフ見たけど、どーん、ってなってたよ。
新NISA民は全滅だろうって、書いてあったのだよ。

僕、積立NISA始めたばっかりで、とりあえず様子見で月5000円積立に設定したんだけど。
マイナス600円程度のかすり傷で済んだよ。

月5000とか、意味ねーじゃんとか。
ネットでそんな事が書いてあったり、身内に言われたりしたけど、うるさいのだ。
僕はミーハーなの。
いちいちうるさいのだ。
僕は、このどーんを、近年稀に見る何とかって、ボジョレーのキャッチコピーを考えるときぐらいの気分で命名したいの。

そうだ。
明日、もし晴れだったら、冷房の効いたカフェスペースの窓際席で、青い空でも見てみようじゃないか。
例えばあそこにどーん、と浮かんでいる雲。
動いてないようで動いているな。
僕には見えているぞ。
ふふふ。
そんな気分で。
目の前の景色を、どーん、のひとことで済ましたい毎日なのだ。

8/1/2024, 9:51:51 AM

だから、一人でいたい。

これを文章に書かず、誰にも聞こえないように心のなかで呟けば、一人でいられると思うんだけど。
この文章のように誰かに見られる形にしてしまって、当然のようにハートが送られ、反応が返ってきてしまえば、たちまち一人の世界観は壊れてしまう。

思えば僕たちは音のない世界に生きていない。
真の文章とやらを書いた覚えもない。
人生に失敗したニートよろしく自室に引きこもっても、誰かが作った人工物と誰かが汲んだ水と食べ物、誰かの記憶を詰めたものを見て聴き続けている。
それを一人でいたい、と世の中は定義している。
あまりにも甘い。

一人でいたい、と思えるのは感情の発露的に浮かび上がったあの時だけであり、もう気づいても遅い実現不可能な将来の夢であり。
過去のどれを振り返ろうと、どこにも孤独は見つからない。
人でいる限り、誰かが作った製品と人の努力の賜物が染み付いた空気が漂っていて、いくら換気をしたってやってこない。
赤子のように、たった今生まれた新鮮な空気なんて、この世界のどこを探したってないんだ。
あっても宇宙くらいだろうか。
地球の表面の宇宙は、誰かが到達している。
ということは月にいかないと? 月も誰かがいるだろうし、そして宇宙ゴミが数多ある隕石の欠片のごとく浮遊しているのだから、本質的には難しいかもしれない。

だから一人でいたいって思うんだ。
そんな難しいことを思いながら、過ぎ去りつつある将来の夢の夢を吸って。
誰かが吸って、誰かが吐いた空気を。
自分が吸って、それを吐いて。
また吸って、吐いて。

そんな事を何度も繰り返す度に、一人になりたいなどと言って、周りに逃避の欠片を落とし、結局誰かが作ったものを手にとって、それを生き甲斐にしている。

だから、一人でいたい。
そう思って、思い続けていけば、やがて気付くと思う。
目を閉じた心のなか、命を投げ捨てたあとの余寒。
どちらも埋没毛のようなもので、いつ芽が出るかはよくわからない。
それでも生き続けるしかない。

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